「子供の声が騒音」とみなす社会に未来は…急がれる子育て支援 もたつく国 自治体や企業が先行
1年間に生まれた子供の数が初めて80万人を切りました。なぜ、子どもの数は減り続けるのか。福岡で取材して見えてきたキーワードは 「お金」と「キャリア」です。
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「子育て」世代が集まる粕屋町
福岡県粕屋町にある「かすやこども館」。遊具を備えた遊び場やベビーマッサージなどのイベントもあり、平均で毎日120人の親子が訪れます。福岡市内まで電車で10分ほどと都市圏へのアクセスがいい粕屋町は、子育て世代にも人気です。
利用者「遊び場が多いというか、ファミリー層向けのところに住みたいなと」
1人の女性が生涯に産む見込みの子供の数「合計特殊出生率」は1.97と、県内トップクラスでした。それでも人口維持に必要とされる2・06には及びません。国が6月に発表した人口動態統計によると、日本で2022年の1年間に生まれた子供の数は約78万人で、国の推計より約10年前倒しする形で初めて80人万人を切りました。
「負担大きい」「キャリアアップは…」子育て世代の不安
国は、新型コロナによる「産み控え」などが要因とみていますが、子育て世代に聞いてみると……。
「負担が大きいのがあるのかな。金銭面や、母親であれば仕事のキャリアアップが難しいな、と実際に子育てして感じたところはあります」「物価も公共料金もだし、保育料も。子供はかわいいですけど、『次はどうかな…』」
国は先週、「異次元の少子化対策」の今後の方針案として、児童手当の所得制限撤廃や支給期間の延長などを示しました。しかし、具体的な財源は示されていません。多くの自治体にとって、人口減少は存続に関わる死活問題。遅い国の対応を尻目に、それぞれが独自の支援策を打ち出している現状があります。
古賀市の「うまれてきてくれてありがとうボックス」
RKB原口佳歩「子供を産み、育てやすい環境を作ろうと、福岡県古賀市では独自の取り組みが始まっています」
生後2か月の赤ちゃんがいる家庭を訪れたのは、助産師や保育士の資格を持つ古賀市の職員。市は、出産前から産後約1年まで訪問サービスを行っています。健康状態を確認したり、子育ての悩みを聞いたり。何度利用しても料金はかかりません。
「これが“うまれてきてくれてありがとうボックス~こがたからばこ~”。古賀市からのプレゼントになります。これがお品書きです」
「うれしい! お姉ちゃんの時はなかったから」
赤ちゃんが生まれた家庭に、オムツやお尻拭き、市内の施設で使える3000円分の買物券をプレゼントする取り組みも。
母親「普段使うものをいただけるので、ママとしてはすごくありがたい。どんどん発信して知っていただければ、『じゃあちょっと2人目とか3人目とか頑張ろうかな』という気持ちになる方もいらっしゃるかもしれないですね」
「切れ目ない子育て支援」を目指す古賀市ですが、田辺市長は「金銭的な負担の軽減も大切だ」とした上で、国に苦言を呈します。
田辺一城・古賀市長「案として出てきているものだけでは不十分だと、率直に自治体の長としては思っています。18歳までの子供の医療費の無償化については、政府にはしっかりと決断をして、導入を実現してほしい。市町村が競争のようにやっていく話じゃないと思っています」
企業「子育て支援は中長期的に人材確保につながる」
国に先んじた取り組みは企業でも。福岡市にある「LINE Fukuoka」では、4月から社員がベビーシッターを利用した場合にかかる費用の半額を補助しています。1年2か月の産休育休を経て復帰した江國淳子さんは、さっそく制度を利用しました。
LINE Fukuoka 江國淳子さん「私も夫も、実家が遠方なんです。夫の仕事も休みづらいので。助けてくれる人の選択肢が増えたので本当にありがたい。最近結婚した社員が、まだ子供の予定はなかったんだけれども『こんな制度が導入されたら育児と仕事の導入がしやすくなるから希望が持てた』と言われました」
社内には子育てサークルが立ち上がり、子育ての悩みや情報を共有するランチミーティングやイベントも行われるようになりました。福利厚生や心理的なサポートは、企業にとっても子育てを理由に優秀な人材が辞めないために重要だといいます。
LINE Fukuoka 人事労務担当 光田友利佳さん「中長期的には人材の活躍、優秀な人材確保にもつながると思っています。制度を導入するというハード面の構築はもちろん、ソフト面で育児と仕事を両立していく支援も必要だと思うので、“子育て部”を利用してバランスを取ってご自身のサポートができれば」
「子供を大切にする社会の雰囲気づくり」を
急速に進む少子化。専門家は、国と企業、どちらの対策も必要だと話します。
九州工業大学 安河内恵子教授(社会学)「子供を産み育てるって時間もお金がかかることなので、お金の一部を政府がみるのは大事なこと。一つは、男性の育児休業や時短勤務の取得をもっと広げていくべき。後々のキャリアに響かないような評価・査定システムを作っていかないと」
また、長野市で子供の声がうるさいという苦情から公園が廃止となった例をあげ、「子供を大切にする社会の雰囲気づくり」も重要だと訴えました。
九州工業大学 安河内恵子教授「ドイツでは、『子供の声は騒音ではない』という法律ができているんです。次の世代の重要な人達を大事にする、産んでくれる両親、若い世代を大事にしていくという社会の雰囲気が必要」
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