“再生医療”3Dプリンターで細胞から血管や神経を作製…移植患者の知覚神経が回復
3次元のデータをもとに立体的な物を作る「3Dプリンター」は、医療の分野でも活用が進んでいます。「3Dプリンター」を使ってヒトの細胞から作った神経が、すでに3人の患者に移植され知覚神経が回復するなど注目を集めています。
福岡市中心部に「研究所」
RKB岩本大志「天神ビジネスセンターの9階です。オフィスが入居するこの一角にあるのが研究所です」
福岡市の再開発事業「天神ビッグバン」の規制緩和第1号として完成したオフィスビル「天神ビジネスセンター」。その一角にあるのが九州大学発のベンチャー企業「サイフューズ」の研究所です。
“細胞の団子”積み上げる
サイフューズ研究員 松林久美香さん「こちらがバイオ3Dプリンターになります。細胞をインクとしてプリントする形になります」
「バイオ3Dプリンター」でインクの役割を果たしているのが、人の細胞を培養して作られたスフェロイドと呼ばれる団子状の組織です。
サイフューズ 松林久美香さん「細胞の団子を積み上げてチューブ状の構造体を作っています」
細胞の塊を針が並ぶ「剣山」に積み上げていきます。
サイフューズ 松林久美香さん「細胞の団子を積み上げて、剣山の針の位置をカメラで認識して、そこに団子を設置していく」
細胞同士が自然にくっつきあう性質を生かして、血管や神経などのチューブを作っていくといいます。
“治療の選択肢”増える
サイフューズ 松林久美香さん「細胞を立体的にするという技術は、治療の選択肢を増やすことに貢献できる」
完成したものを見せてもらいました。
サイフューズ 松林久美香さん「これが細胞でできたチューブです」
RKB岩本大志「実際に持ち上げてみます。思ったより硬くて弾力があります」
移植患者の知覚神経が回復
3Dプリンターで作られた血管や神経は患者自身の細胞を使っているため、拒絶反応が起きにくいというメリットがあります。京都大学医学部附属病院では、サイフューズが3Dプリンターで作ったチューブ状の「神経導管」を、指の神経を損傷した患者3人に移植する臨床試験を実施。1年間経過を観察した結果、3人とも手の知覚神経が回復し仕事に復帰することができました。
京都大学医学部附属病院リハビリテーション科 池口良輔准教授「今回は神経ですけど、障害を受けたり欠損したり、ゆくゆくは自分の細胞からなくなったものを作れるとなれば、患者にとっては生きがいが出ることですし、すごく夢のある治療法。太い神経の欠損など諦めざるを得なかった部分もあったが、ゆくゆくは応用が効くのではないか」
天神から世界へ“再生医療”
天神ビジネスセンターを手がけた企業も期待を寄せています。
福岡地所 井上聡企画部長「オフィスの可能性を広げることができた。意外性のあるテナントが多くなることで、福岡の価値がもっとあがっていくと思う」
天神のオフィス街から世界に向けて再生医療の研究を進めていきます。
サイフューズ 秋枝静香代表「臓器という生もの、生き物を運びますので、アクセス至便なところにラボ(研究所)を構えたかった。手作業で臓器を作るというのはなかなか難しいですが、私たちのように細胞版の3Dプリンターを使って臓器を作るということを少しずつ知って頂いて、実際の治療につながっていけばと思っています。福岡の中心地からアジア、アメリカ、ヨーロッパ、世界に展開していきたいと考えています」
サイフューズは、2025年ごろの実用化を目指しているということです。
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この記事を書いたひと
岩本大志
1991年生まれ 長崎県出身