穏やかな空気が包む住宅街、中央区白金。一目置かれる飲食店も意外と多いその一画に、今年5月「九州の味 博多廊 本店」が加わりました。「博多廊」と言えば2002年に中洲で生まれ、昨年12月まで大名で営業していた和食店。当時は約120席の大バコで、連日大人数のゲストで賑わったものです。
が、なんと今回の移転先では真逆のミニマム路線を選択。“新たなる挑戦”を掲げ、実践したその進化をさっそく確かめてきました。
店舗より提供
新生「博多廊」は、深まる闇の中に凛と佇んでいました。店舗は築60年余の一軒家を改装したもので、ライトアップされた日本庭園に植わるのは四季折々に花を咲かす樹々。心やわらぐ瀟洒な隠れ家、といった趣です。
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扉の先にまず現れるのは6席のカウンター。瑞々しい野菜や鮮魚を陳列したり、料理人の仕事が間近に見られたり……と温かな臨場感が味わえるエリアです。建物全体も昭和のモダニズムが薫る装いで、その上品さが好印象でした。
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個室はデザインの異なる3部屋を備え、それぞれ6名・6名・8名まで収容可。うち2部屋からは庭園が見え、かなり良い雰囲気です。つまり客席は合計26席と、大名時代より大幅に減ったわけですが、これはなぜなのでしょう。
「一番の理由は、料理とサービスの精度をこれまで以上に上げるためです」。料理歴35年の総料理長・佐々木達也さんがそう教えてくれました。
「実際、大名時代よりも濃密なおもてなしができていると思います。席数を絞ったことでお客様との距離が縮まり、様々なご要望に対応しやすいのも一因でしょう」と佐々木さん。「試行錯誤する中でも確かな手応えがあるので、スタッフの士気も高まっていますよ」
店のテーマである“九州料理”もかなりアップデートされた模様。「とくに力を入れているのが新しい食材の発掘。ここへ来れば、必ず美味しくて未体験の九州の幸に逢える──そんな場所に育てたいのです」と、熱を込めて佐々木さんが語ります。
その成果たるメニューには、いかにも“間違いなし”な料理名がズラリ。コースもありますが、今夜はアラカルトで攻めてみました。
まずは汁なし冷麺風の「元祖博多ラーメンサラダ」(1,400円)。軽快な食感の細麺と野菜、そして肉質が柔らかく脂質の旨味が強い糸島豚のチャーシューを盛り、醤油ベースのドレッシングで和えてあります。ほどよいオイリーさと香ばしい風味も秀逸で、一瞬で味の虜になる中毒性が魅力的! 10年以上不動の人気料理なのも納得のうまさです。
次に頼んだ「おでん盛り合わせ5種」(1,500円。単品注文可)は移転後に登場した新メニュー。この日の内容は、ごぼう天、玉子、大根、糸島揚げ、そして肉料理かと見紛う牛スジでした。練り物は吉塚の老舗「豊島蒲鉾」の製品を使用。素材を生かすため、タネにより2種の出汁を使い分ける配慮もさすがです。おでんが年中食べられる店って、なんか良いですよね。
和食店で、なぜか恋しくなるのが「魚の煮付け」(3,000~3,500円)です。なので「良いアラカブ入ってますよ」と勧められ、断る僕ではありません(笑)。ホクホクした白身は期待通りの仕上がり。醤油が濃すぎず、柔らかな余韻を残す味付けも僕好みでした。
漁獲エリアは九州近海ですが、その時期最高の魚介を仕入れるため、大分(佐伯・津久見)、長崎(橘湾・平戸)など仕入れ先も常に吟味するそうです。
艶やかで透明な「九州近海泳ぎいか」(200g/3,960円~)もリピーターの多い定番。響灘、玄界灘、平戸までの海域で捕れた良質なイカを用い、身の両面に入れる細かな隠し包丁で“活き造り”の醍醐味を膨らませた一品です。切り身を噛むたび、口一杯に広がる甘みやとろみがとにかく絶品。刺身の後は、残ったゲソを天ぷらにするか塩焼きにするか、実に悩ましい……。
この他、牛・豚・鶏料理やもつ鍋、水炊きなども揃い、美味な九州探訪に興味は尽きません。そんな口福を生む仕事の先に、佐々木さんたちが目指すのは「この店を九州和食文化の継承と集大成の場に」──すなわち“新たなる挑戦”です。
情趣ある気品と親密さをまとい、新たな旅を始めた「博多廊」。1日を粋に締めるなら、2次会で使うのもありですよ。
九州の味 博多廊 本店
福岡市中央区白金1-12-12
092-406-7277
11:30~OS14:00/17:30~0S23:00
ジャンル:郷土料理、日本料理
住所:福岡市中央区白金1-12-12
電話番号:092-406-7277
営業時間:11:30~OS14:00/17:30~0S23:00
定休日:不定
席数:カウンター6席、テーブル20席
個室:3~8名
メニュー:ランチコース4,000円~、ディナーコース8,000円~、元祖博多ラーメンサラダ1,400円、おでん盛り合わせ3種1,000円・5種1,500円、あらかぶ煮付け3,000~3,500円、九州近海泳ぎいか(200g)3,960円~、鶏なんこつ天700円、地鶏炭火焼き1,800円、唐津活きあじフライ1,700円、水炊き3,500円
URL:https://hakatarou.jp/honten/
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