地下鉄大濠公園駅の真上、荒戸の交差点から50mほど天神の方に行くと大手門1丁目の交差点があります。そこを左に曲がると大手門商店街で、右に曲がると有名な「鳥次」があるのですが、この南北に通る一本の筋が実におもしろく、実力派の店が並んでいます。
明治通りと昭和通りに挟まれたごく短い道に2007年にオープンしたのは焼鳥の「鳥次」です。鶏に限らず豚バラなどいろいろな串焼きが楽しめる博多の焼鳥文化のなか、豚バラも牛サガリも野菜巻きもなく、鶏のいろいろな部位をコースで食べる焼鳥店はまだそんなにはない頃でした。しかしみるみる人気が出て、今もいつもお客さんでいっぱいです。そしてその「鳥次」が同じ鶏でも焼鳥ではなく水炊きという業態で勝負したのが隣の「橙」。鍋とはいえ当然年中営業し、昼から通しで営業しているありがたいお店です。
そのお隣にあるのがワインバーの「魔灯路場amber(まほろばアンバー)」。元々、天神の「Yumekichi Wine」の店長だった長谷川弥来(みらい)さんが開業したお店で、自然派ワインに特化したワインバーです。ここは深夜3時までやっていることもあり、近所の人だけでなく中心部からもわざわざワインラバーたちがやってきます。ちなみに、「Yumekichi Wine」は長谷川さんが事業承継して、ここの系列店になっています。また、昼は間借りで「タコスコ」というタコス店になっているのですが、これがまた絶品なんですよね。具の種類も肉、魚、野菜といろいろ選べて、おつまみ感覚で食べられる小さめのタコスです。
そして元々ここの正面には「クロマニヨン」と、その系列の立ち飲み店「サークル」があったのですが、建物の建て替えにより立ち退かねばならなくなり「サークル」は同じ筋の昭和通りの反対側に、そしてその2階で「して」というボトルワインとアラカルトのレストランをやっています。
「サークル」からさらに海の方にいくと、右手に公園、左手に「HAZAMA」という老舗のスーパーがあります。ここは周辺の飲食関係者にもとても人気があるのですが、ぼくは詳しくないので近所に事務所がある友人に軽く「HAZAMAのいいところを2、3教えてください」とメールしたところ、なんと「まだまだありそうですが」というコメントとともに、「デパ地下並のクオリティの魚と寿司。しかも安い!」「レジ横にギーとか、キヌアとか、「あれ?」っていう感じのスーパーフードが置いてあります」「週に2回、外で新鮮で安い糸島野菜を売る日があります」など、8つものポイントを熱烈返信してくださいました。そして最後に「はざまさんがすごくいい方。まずは挨拶がいいし、ご近所に新しいお店ができたらすぐに挨拶がてら飲みにいくし、地域密着店として素晴らしい」とも。これは根強いファンが多いのも納得ですね。
この「HAZAMA」のあたりから何本かある路地に入ると、蕎麦の「照月庵」、バーの「Erin」、イノベーティブレストランの「TTOAHISU(トアヒス)」、カウンターでいただくフレンチの「Galinette(ガリネット)」など、これまたいい店が目白押しです。
また公園の角あたりにはタイ料理の「mêek(メーク)」、広島お好み焼きの「おかちゃん」があり、大濠公園側に曲がると、超繁盛店の炭焼き「とりこ」、店頭で売ってる焼鳥もおいしい精肉店「肉のアンデス」、そしてその上には日本酒バーの「ぷちたぷち」があります。
さらに、ほんの10mほど足を伸ばせば、行列店「讃岐うどん志成」や魚の定食がうまい「飯すけ」もあります。「飯すけ」は隣の物件が空いたのでそちらも借りて、以前の倍くらいの広さになってるんですよね。夜メニューが以前にもまして充実しているので、居酒屋としても重宝しますよ。
さて、商店街の筋で個人的にときどきお邪魔してるのは蕎麦の「出谷右衛門」です。といっても、年に1,2回ですけどね。蕎麦前も気が利いてるし、もちろん蕎麦もおいしくてかなり人気。最近は飛び込みではなかなか入れないみたいです。
同じ並びには「太衛門」という魚のおいしい居酒屋もあるし、カレーとクラフトビールの立ち飲み「Lille Curry Bar(リル・カリー・バー)」もあります。ここは古門戸町にある北欧ビンテージ家具の店「Lille Nordic(リル・ノルディック)」の系列で、店の奥には3人以上で使える個室があるのですが、まるで「Lille Nordic」のモデルルームのような素敵空間ですよ。センスのいい友人の部屋に遊びにいったようにくつろげて、当分動きたくなくなりそうです。
道を挟んだ正面には「Filles et Garcons(フィーユ・エ・ギャルソン)」というカフェもあります。コーヒーはもちろんお酒も飲めるし、焼き菓子の販売もやってて、誰でも気軽に寄れる町の集会所的なスポットです。
「Lille Curry Bar(リル・カリー・バー)」の並びにはイタリアン「Stefano e Tomoko」もあります。ここはイタリア人オーナーシェフの店で昼も夜もおまかせコースのみですので、予約はしていきましょうね。
昭和通りの商店街入口の角には「HAKKO食堂」があります。80年以上守ってきたぬか床によるぬか漬け・ぬか炊きの専門店で、お昼は定食、夜は酒場としてやっています。昼も夜も大賑わいですよ。
また角から少し天神寄りにはネタが大きいことで有名な(もちろん味もおいしいんですよ)焼鳥店「にくしん」もあって、近所の人たちの食堂的な存在として長年君臨しています。
そして「にくしん」の隣の角には長年鮮魚店があったのですが今は工事中で、この秋「鳥次」が新しいお店を出すそうです。昼は唐揚げ弁当、夜は生搾りサワーの立ち飲み屋にするんだとか。この筋がますます活気づきそうですね。
弓削聞平(ゆげ ぶんぺい)
福岡の食を探求するWEBマガジン UMAGA編集長
福岡在住フリーエディター。当時「シティ情報ふくおか」を発行していたプランニング秀巧社を経て、2001 年より福岡とグルメをテーマにフリーエディターとして活動。福岡のグルメ雑誌「epi」「ソワニエ」の元編集長。 個人事務所「聞平堂」では「ぐる~り糸島」「福岡 気軽で楽しい町の寿司屋」「私、この店、大好きなんです。」等を出版。インスタID:bunpei_yuge
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