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パリに照準「エアピストル」20歳の若きシューター アルバイトに夜行バス移動 個人で五輪目指す

パリ五輪の開幕まで、あと365日。射撃の「エアピストル」は10メートル先にある的の真ん中、1円玉よりひと回り小さな部分を狙います。アルバイトをしながら「エアピストル」競技に打ち込む福岡の選手を紹介します。

10メートル先の「1円玉より小さい的」

福岡県大野城市の小柳勇生選手(20歳)。ライフル射撃のエアピストルでパリオリンピックを狙う新鋭です。的は10メートル先、1円玉より小さな中心部分を狙うこの競技。75分間で60発を撃ちます。満点は600点で、精度の高さを競います。

 

Q.的は見えている?
小柳勇生選手「はっきりとは全く見えないです」


Q.それなのになぜ真ん中に当たる?
小柳勇生選手「照準器のへこみと、銃身の先にある出っ張り、この2つをしっかり合わせて、黒点(的の中心)の下を狙うようにしています。ぼやけていても、しっかり合わせておけば当たるので」
 

大学生以下の大会でジュニア日本新記録

小柳選手が「射撃」と出会ったのは、太宰府高校に入学した時。

「部活動のパンフレットを見たら、『福岡唯一の射撃部』と書いてあって、『あ、なんかいいな!』と思った」

元々、銃にはあまり興味がなかったそうですが、狙ったところに当たった時の気持ちよさにはまり、メキメキと実力をつけました。わずか1年で、九州チャンピオンに。高校卒業後も競技を続け、2022年9月、大学生までが出場するジュニアオリンピックカップをジュニア日本新記録で制しました。

小柳勇生選手「自分でビックリでした」

トップ選手が並ぶ「全日本選抜」で優勝果たす

さらに、その2か月後の全日本選抜大会でも並み居る強豪を退けて、日本一に輝きます。

日本ライフル射撃協会 佐橋朋木選手強化委員長「若手の選手で、これだけ期待のある選手はなかなか出てこない種目。全日本選抜はオリンピック選手も含めて、トップのメンバーが戦っている試合なので、非常に価値のある優勝だと思います」

個人でオリンピックを目指す20歳

夢の実現へ向け突き進む小柳選手ですが、現在競技だけに集中できない状況にあります。

エアピストルの競技、お金はかかる?
「だいぶかかりますね。射撃場の練習料金、自分の弾、銃のメンテナンス、大会(遠征費)にエントリー代」

高校卒業後、自衛隊や警察、大学に進んで競技を続けることも考えましたが、「独りで打ち込める環境の方が自分には合っている」と感じ、個人でオリンピックを目指す道を選びました。

移動は深夜バス 飲食店で週5日のアルバイト

週に5日間飲食店でアルバイトをして、競技に必要な費用を稼ぎます。

小柳勇生選手「茶わん洗いが一番好き。1個にしか集中できないのは、メリットでもあるしデメリットでもあるんですけど」

韓美膳ららぽーと福岡店 佐々木伸也店長「店舗でいろいろなバイトの子を見るんですけれども、仕事も本当に頑張っていますし、自分の夢があって、両方一緒に頑張っているのがすごい子だなと」

遠征費を浮かせるための努力も…。大阪の大会へ向かうという小柳選手、移動手段は「夜行バス」です。

小柳勇生選手「一番安くて済むという理由。出発時間と到着時間を見たら、(大阪まで)12時間はかかる」

長時間の移動をものともせず、この西日本ライフル射撃大会では準優勝という好成績を収めました。

競技を始めて5年 パリに照準

そして、夢を現実のものとするための第一関門となるのが、国内主要大会の一つ「国体」への出場です。

小柳勇生選手「ベストが練習で577点なので、それを超えるような射撃をしたい」

月に一度開かれる福岡県の記録会。高得点を出せば、県代表の座が近づきます。序盤は4回連続10点をマークするなど、順調に得点を重ねていきます。後半はスコアが伸びず、惜しくも自己ベスト更新とはなりませんでしたが、568点とまずまずの結果を残しました。

福岡県ライフル射撃協会 江藤隆康・強化担当コーチ「このままいけば県の代表には『ほぼ確定』くらいの点数を撃っている。国体はまず間違いなくかなり上位に行けると思う。若さでもって失敗を恐れずにやってくれれば、かなり期待できる」

小柳勇生選手「点数的には納得してない。あと10点以上は伸ばせるなと実感しました。目標は(満点の)600点。600点撃てるような、質のある練習をしていきたい」

競技を始めて5年、まだまだ伸びしろは十分。20歳の若きシューターは福岡からパリへ、しっかり照準を定めています。

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