ツクツクボウシの鳴き方の変化には意味がある 「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」虫採り少年だった26歳の大学院生が発見
ツクツクボウシが放つ独特の鳴き声。前半と後半で鳴き方には違いがあります。この違いには意味があることを九州大学の大学院生が発見しました。虫採り少年だった男性の世界初の研究成果です。
目次
小さい頃からセミが好き 大学でも虫の研究を
「いるな。あそこにいます」
「とれました。ニイニイゼミのオスですね」
まるで小学生のような真剣な表情でセミを追う児玉建さん(26)遊んでいるわけではありません。
児玉さんは九州大学大学院システム生命科学府の生態科学研究室に所属、博士課程でセミを専門に研究しています。
「小さいころからセミを捕るのが好きで、とにかく虫捕り少年みたいな感じだったので、将来昆虫の研究がしたいなとずっと思っていて。大学に入ってやっぱり研究室も虫の研究をしたいと思って選びました」
虫捕り少年がそのまま大きくなったような児玉さんですが、2023年5月、世界初となる研究成果を発表しました。
「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」へ
児玉建さん
「ツクツクボウシは鳴き方が複雑で、最初はオーシンツクツクオーシンツクツクと鳴くものの、途中からツクリヨーシ、ツクリヨーシって鳴き声の形が変わるんですよね。その鳴き声を録音した音声データを捕まえてきたツクツクボウシのオスに聞かせたところ、前半の『オーシンツクツク』を聞かせた時と、後半の『ツクリヨーシ』を聞かせた時で、オスからの反応が違うということを今回発見したんです。鳴き声の変化には何らかの意味があるということを世界で初めて明らかにしました」
鳴き声を聞いた別のオス 反応する頻度に違い
児玉さんによりますと、オスのツクツクボウシは、ほかのオスが鳴くと合いの手をいれるように「ギーッ」と鳴くそうです。今回鳴き声を聞かせたオスのツクツクボウシは、後半の『ツクリヨーシ』よりも前半の『オーシンツクツク』に対してのほうが、より高い頻度で「ギーッ」と反応することが世界で初めて分かったのです。
児玉建さん
「最初は違う鳴き声を聞かせてもあまり変化がないのではないか、やっぱり意味なんてないんじゃないかと思っていたんですが、調べていく中で反応が変わったぞって気づいたんです」
論文は国際学術誌に掲載
児玉さんの研究論文は国際学術誌「Entomological Science」のオンライン版にも掲載されました。
児玉建さん「今までの研究が実った瞬間。その瞬間はやっぱり興奮したというか、ものすごくテンション上がりましたね」
指導教授「楽しんで研究することが重要」
児玉さんと共同で論文を執筆した指導役の教授も研究熱心な児玉さんに期待を寄せています。
九州大学生態科学研究室 立田晴記教授
「研究って趣味の延長みたいなものなんです。私自身もそうなんですけど、楽しんでやるという要素が非常に重要だと思うので、そういう意味ではすごく楽しんで研究しているのが何より素晴らしいことかなと思います。児玉さんが生物学の分野に影響を与えてくれることを期待しています」
児玉建さん「おおー、プレッシャーが…(笑)」
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