PageTopButton

「語り部の1%でも、戦争を語り継げたら」体験を聞き取り自費制作の漫画に ネットで公開

「若い世代にわかりやすく戦争を伝えたい」と、戦争経験者から話を聞き取り、漫画で発信する男性がいます。戦争を直接知る人が年々少なくなる中、漫画が語り部の役割を果たすことを男性は願い活動しています。

戦争経験者から体験談を聞き取って漫画に


北九州市にある金属加工の会社で働く樺島由彬さん(36)。会社勤めのかたわら、休みを使って制作しているのは、戦争についての漫画です。知人を介して知り合った戦争経験者から直接体験談を聞き取り、その人の人生を漫画で再現しています。

樺島由彬さん「知覧の特攻平和会館に行った時、自分が知らなかった歴史を目の当たりにして、そういう人たちがいたのに何となく漠然と生きていた自分が情けなくなって泣いた、というのがきっかけです。歴史を子供たちに伝えていかなければいけないんじゃないかな、漫画だったら『絵がかわいい』とか『絵が自分に合っている』とかで手に取ってもらえる、と思った」

3年前から活動を始め、これまでに5作を描き上げました。「北九州 戦争を次世代に伝えていく会」のホームページ上で、すべて無料で公開しています。そして現在、6作目が完成間近です。

「人間機雷」で自爆するはずだった15歳


今回のモデルとなったのは、特攻隊員だった北九州市に住む篠原守さん(94)。終戦間際の1944年、15歳の時に旧海軍「伏龍特攻隊」の隊員となりました。伏龍は、先端に爆弾を付けた棒を手に持って水中に潜み、敵の船をその棒で突いて自爆する部隊で「人間機雷」と呼ばれていました。海底に潜る隊員の手助け役だった篠原さんは、訓練を受ける前に終戦を迎えました。

漫画化はプロに依頼


漫画を描くのは樺島さんではなく、依頼したプロの漫画家です。漫画は無料で公開しているため収入はなく、制作費用は自費やクラウドファンディングで賄っています。樺島さんだけでなく漫画家も、直接戦争を知らない世代です。聞き取った体験談や戦争資料をもとに、当時の様子を想像しながら描いていきます。

樺島由彬さん「実際に小学校の子供が読んでいるのをみて、ハードルが高い分野だからこそ読みやすい本にしたいと思っていたので、そやまさんとできてよかったと思っています」
そやままいさん「漫画を通して、私自身も戦争について考えることができて、本当に感謝しています」

「何らかの形で残したかった」と94歳のモデル


完成した漫画を、モデルの篠原さんのもとへ届けに行きます。

樺島由彬さん「篠原さん、本ができあがりました」
篠原守さん「こういう冊子ができて、本当ありがたい。よくできているなと思いますよ。私自身が『何らかの形で残したい』と思っていたんです。こういう戦争、するもんじゃないよね。戦争はよいことは一つもないからね」

樺島由彬さん「伏龍の話は資料に残っていなかったので、貴重な話が聞けてよかったと思います。実際に体験した人が語り部としていなくなる瞬間が絶対来ると思うので、その時にいま自分が作った本が語り部の役割を1%でも果たしてくれたらうれしいな、と思っています」

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

深掘り!特集

もっと見る