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なぜ車いすで走るのか「未熟な私が成長するため」51歳の女性が九州一周を達成

車いすで日本一周を目指している女性がいます。すでに沖縄県や四国を周り、今回は九州一周の旅に挑みました。突然の事故から14年、塞ぎ込んでいた時期を脱した彼女の旅には、試練と多くの出会い、そして応援があります。

約1300キロを車椅子で

9月20日、早朝に車いすで旅支度をしていたのは、札幌市在住の中環さん(51歳)
環さんは、これから車いすで九州一周に挑戦します。その距離は約1300キロです。

中環さん(51歳)
「暑くて暑くて全然寝られなくて。日中はすごい暑さでしょ。札幌と比べものにならないから。すごく緊張しています。今までで一番緊張しています。沖縄より四国より、九州一番緊張しています。だって今でこの汗よ。やばいですよね」

日が昇り始めた午前6時半すぎ、息子の港さんなどもサポートに加わり福岡県豊前市の道の駅を出発しました。

環さんの息子 中港さん
「行く時はぱっといっちゃいます」

環さんは、車いすを勢いよくこぎ出しました。

中環さん(51歳)
「下りの方が危ないですよ。ちょっとしたこういう段差に引っかかったら前に転倒しちゃう」

14年前の事故 自宅に引きこもる日が続いた

明るく前向きな性格の環さんですが、かつては塞ぎ込んでいた時期もありました。今から14年前、クリスマスのプレゼントを子どもたちに買って、車で自宅に帰っていた時のことです。赤信号で停車していたところ、車が追突、治療を受けましたが左半身に麻痺が残りました。

中環さん(51歳)
「すっごいイライラして、もうギャーってなってたし、会社も解雇になっちゃったから、収入源がなくなるし、、ずっとカーテン閉めて、もうね、引きこもっていた」

最愛の父の死をきっかけに

自宅に引きこもる日々が1年ほど続きました。しかし、最愛の父の死をきっかけに、「日本一周」に挑戦することを決めたといいます。

「障害者になる前も、子供が小さいからとか、女だもんとか、あと経済的とか、言い訳ばっかりで、やりたいことを全然やらないで来てたの。もう言い訳しないで、やりたいと思ったことを、まず準備しなきゃと思ったんです」

支えは地元の人

段差の多い公道を車いすで移動するのは、簡単ではありません。支えになっているのは、車いすの後ろに書かれた「九州一周中」の文字を見て声をかけてくれる人たちです。「冷たいもん持ってくるから」と、缶コーヒーを手渡してくれる人。

環さん「嬉しいありがとうございます。旅していて助けてくれるのは現地の人だから」

地元の人「その心意気というかね、感心します。あとは気をつけてくださいというだけですね」

子供が差し入れてくれたみかん

地元の子供はみかんを差し入れてくれました。

環さん「みかんくれるの!ありがとう」
子供「すごい速かったから、車いすなのにすごいなって思ったから」
環さん「思った?あと何かあげるものないかなあ」
子供「大丈夫・・・」

旅先でかけられる温かい言葉を励みに、黙々と車いすをこぎ続ける環さん。宮崎から鹿児島、そして熊本、長崎、佐賀と九州を時計回りに進んでいきます。

中環さん(51歳)
「言い訳して何もやらないのは絶対後悔するでしょ。お金はないけど準備してみようかな。行きたいと言ったら、なんか応援してくれる人が出てくる。こっちが本気だと。人間本気になって伝えると応援してくれる、ありがたい。だから頑張りたい」

暑さ残る九州でついに達成

約1か月におよんだ車いすでの九州一周の旅。10月18日、福岡県北九州市に入りました。長い旅で、肌はすっかり焼けていました。そして19日、ついに出発地点である豊前市の道の駅に戻ってきました。

中環さん(51歳)
「ついたーあーよかった。みんなのおかげです。ありがとうございました。みんなつながっている。応援してくれた人たち」

心が折れそうになった時も

日中は厳しい暑さが残る中九州一周を見事達成した環さん。何度も心が折れそうになったといいます。

中環さん(51歳)
「だんだん走る意味が分からなくなってきちゃって、みんなに頑張れとか言われても、私が頑張って何になるんだろうとか思ったときもありました」

それでも走り続けられたのはサポーターや、応援してくれる人たちの支えがあったから。ただひたすらに車いすをこぎ続け、自分自身と向き合い続けました。

「明日プラスになることを思って」

中環さん(51歳)
「他の方に元気になってほしいとかそんなことは、申し訳ない、ないです。何で走るかと言ったら未熟な私が成長するため、なんだなって思いました。自分のために走っているかもしれない。私を見てどう思うかは自由だけど、少しでもプラスにはなってほしい。マイナスなことは思わないでほしい。明日プラスになることを思ってくれたらそれだけで嬉しいです」

応援を力に変え車いすで走り続けた環さん。次は、中国地方一周の旅に向かいます。

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