福岡へ移住してきて、驚いたことの一つが「もつ鍋」のバリエーション。正直、もつ鍋というと決まったビジュアル、決まった味のイメージだったので、具材やスープの種類などお店ごとの味があって新鮮でした。
今回訪れた「もつ鍋 なかむら」は、1983年創業の老舗店。昨年一度閉店したものの、同年12月に前店主から味を受け継いだ福井勇亮さんが店を切り盛りしています。ガラッと引き戸を開けると、目の前にカウンター席。周辺には宿泊施設が点在することもあって、観光客や出張中のビジネスマンがふらりと1人で訪れることも多いのだとか。奥には小上がりの座敷があり、ノスタルジックな雰囲気が漂います。
以前は、もつ鍋と酢もつのみのシンプルなメニューでしたが、居酒屋で働いていた福井さんが受け継いでから、単品メニューも豊富に。内容は日により異なるとのことですが、「観光のお客さまに九州らしい食材を楽しんでもらいたい」と、糸島野菜や熊本あか牛、雲仙ハムなどの食材を使ったメニューが並びます。
もつ鍋ができるまでは、単品メニューをつまんで待ちます。この日選んだのは、「朝引き鶏のむね刺し」(750円)と「鶏肝とししとう炒め」(750円)。しっとり艶やかなむね刺しは、独特の歯応えが楽しめます。一晩寝かせて作る醤油ベースのタレで味付けした「鶏肝とししとう炒め」は、甘辛さと香ばしさでビールが進む味。むね刺しと同じ、朝引き鶏の新鮮な鶏肝を使っています。
そしていよいよ、主役の「もつ鍋」(1人前1,200円、写真は2人前)が登場! 「なかむら」のもつ鍋は、7種類以上のもつを使用しています。マルチョウ、シマチョウに加え、舌触りが特徴的なセンマイ、やわらかで独特の弾力があるハチノス、その名の通り食感が楽しめるコリコリ(ハツモト)、脂の旨味が広がる赤センマイ(ギアラ)が中心。このほか、数種類を加えて仕上げていきます。臭みがないのは、丁寧な下処理のおかげです。
スープは、カツオと昆布の出汁が効いたしょうゆベース。「先代から味を教えてもらう際に、一番苦労した」と福井さんが話す出汁は、その日のもつの種類によってカツオ出汁を効かせて、スープの味を調整することもあるそうです。
目の前の鍋がグツグツと音が立ち始めると同時に、食欲をそそるいい香りが漂います。ほんのり山になっていたキャベツが崩れ、福井さんの「出来ましたよ」の声で、待ちに待った「いただきま~す」。旨味が染み出たスープは、コクがあって滋味深くじんわりと体を温めてくれます。複数のもつを使うことで、複雑な旨味だけでなく食感も楽しく、脂っこくなり過ぎないのもうれしいポイントです。もつ鍋は1人前からオーダーできますが、1人で3人前を平らげる人も少なくないのだそう。
ついついスープまで飲み干したくなりますが、グッと我慢してシメのちゃんぽん麺(300円)を投入! 創業時に発注していた製麺所は廃業してしまったとのことですが、今も別の製麺所で当時のレシピをそのままに作ってもらっているそうです。ひと煮立ちしたあと少し待ち、麺がスープを含んでふっくらとしてきたら食べごろ。素材の美味しさがぎゅっと詰まったちゃんぽん麺は、言わずもがな絶品。あっという間に食べ終えてしまいました。
お客さんを気さくに迎えてくれる福井さんの人柄もまた「なかむら」の魅力です。「歴史ある味を受け継いだときは、昔からの常連さんの口に合うかドキドキしていました。でも『おいしい』と続けて通ってもらえている姿に安心します。これからも県外のお客さんだけでなく、地元のお客さんにも楽しんでもらえる店でありたいです」と話してくれました。
あっさり醤油スープに、じわじわ食材の旨味が溶け込む滋味深いもつ鍋。大人数でワイワイ楽しむも良し、1人でじっくり楽しむも良しの昔ながらのもつ鍋店です。
もつ鍋 なかむら
福岡市中央区春吉3-12-16安藤ビル1F
092-714-6712
ジャンル:もつ鍋
住所:福岡市中央区春吉3-12-16安藤ビル1F
電話番号:092-714-6712
営業時間:17:30~24:00
定休日:日曜
席数:カウンター7席、小上がり16席
個室:なし
メニュー:もつ鍋1,200円、ちゃんぽん麺300円、朝引き鶏のむね刺し750円、鶏肝とししとう炒め750円、酢もつ500円、雲仙ハムソテー650円、熊本牛ステーキ1600円、糸島豚ソーセージ700円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40000708/
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