博多、久留米と並ぶ、豚骨ラーメン激戦区の北九州。歴史ある老舗から気鋭の新店までがそれぞれに自慢の味を競い合い、地元民にとってのソウルフードにもなっています。そんな中で、昭和の時代から40年以上にわたって愛され続けている醤油ラーメンを提供しているのが、小倉・魚町にある「中華そば 藤王」です。
以前から地元の麺好きの間では味に定評のある店でしたが、「ミシュランガイド福岡・佐賀 2014」で紹介されるなど、その名は北九州以外にも轟いていました。今回はその味を確かめるべく、博多から新幹線で小倉に向かいました。
まずは小倉駅南側の小倉城口から、魚町銀天街を通って旦過市場方面に向かいます。ここは日本初のアーケード商店街といわれ、今も多くの買い物客が行き交う小倉のメインストリート。途中の店に目移りしそうになりながらも、ローソンの角を曲がってすぐにある店の入口に到着しました。
階段を上って2階の店内に入ると、カウンターの前に食券機が。メインの「中華そば」(830円)の他にも、「塩ラーメン」(850円)、「味噌ラーメン」(850円)、「つけ麺」(1,100円)といった魅力的なメニューが並んでいますが、今回は王道の味を確かめるべく「中華そば」の一択です。
創業は昭和57年(1982年)で、一部の中華料理店以外ではほとんど醤油ラーメンが食べられなかった時代。創業者の初代店主が学生の頃東京で食べた志那そばの味が忘れられず、修業の末に鍛治町で開店したのが始まりといいます。その後、現在の魚町に移転して二代目店主に代替わりし、2021年の12月に三代目店主の高尾純平さんが店を受け継ぎました。「スープのとり方やチャーシューの仕込みなど、基本は創業当時から変わっていません」と、初代から伝わる味を忠実に守っています。
味の決め手となるスープは、毎朝その日に使う分だけを仕込んでいます。大きな寸胴鍋で鶏ガラ、豚足、牛骨・牛スジと一緒にキャベツ、白ネギ、玉ネギ、ショウガなどの野菜を加え、スープが濁らないように細心の注意を払いながらじっくり煮込んでいます。上澄みの鶏油は別の鍋にとって提供する直前に合わせるのが、滋味深く透明感のあるスープの秘訣です。
チャーシューはバラ肉とモモ肉の2種類を使用。塊肉に焼き目をつけた後、関東の醤油をベースにニンニク、ショウガ、ゴマ油などを加えたタレで煮込み、じっくりと味を染み込ませます。こちらも創業当時から変わらぬ味で、関東風の醤油ラーメンを引き立てる名脇役として欠かせない存在です。
看板メニューの「中華そば」は、特製の醤油ダレと鶏油を合わせたスープに中太ちぢれ麺を加え、2種類のチャーシュー、メンマ、青ネギをトッピングして完成。スープをレンゲですくって一口啜れば、あっさりしながらもしっかりとしたコクがあり、鶏、豚、牛、野菜それぞれから染み出た旨味、甘味が重なり合うように広がります。
もっちりとした麺は歯切れが良く、麺の太さもスープとベストマッチ。噛みごたえのある厚さにスライスされたチャーシューも肉々しい食感で、味のアクセントになるメンマまで含めて全体的にバランスのとれた絶妙の仕上がりに。初代から数えて、昭和・平成・令和と三代受け継がれてきた味は、いつまでも記憶に残りそうな一杯です。
程よく照明を抑えた店内は、カウンター、テーブル席ともにゆったりと間隔がとられており、ラーメン屋特有の気ぜわしさ感じさせない居心地のいい空間。噂に違わず絶品といえる「中華そば」以外のメニューも食べてみたくなり、再訪を誓って店を後にしました。
こちらの記事は藤王の提供でお届けしました。
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