昨今、福岡のラーメン業界の動きはとても活発です。ニューオープン情報も短いスパンで頻繁に舞い込み、2024年はいつも以上の新店豊作年となる予感。王道の豚骨ラーメンだけでなく醤油ラーメンやつけ麺、スープOFF系など、食べ手の選べる幅が広がっていることは周知の事実ですが、新規出店のジャンルの中で圧倒的に“少ない”のが、実は“味噌ラーメン”。
「博多文福」「博多味噌 流れ者」など“”NEO味噌”の活躍、また「麺場 田所商店」(彰膳系列)が九州各地での出店に力を入れていますが、それでも味噌ラーメン専門店は稀有な存在です。そのような中、味噌ラーメン好きとして嬉しくなる超新星「麺屋 金次郎」が3月3日、福岡市東区にオープンしました。
場所は国道3号バイパスのロードサイド。白い暖簾と看板が目印です。住所が若宮なので僕自身一瞬、同名のインターチェンジ周辺を連想しましたが、“千早エリア”とお伝えした方が分かりやすいかもしれません。
最初に、この「麺屋 金次郎」は新店の中でもトップクラスの実力店であると僕は確信しています。店主の修業先である「川端どさんこ」から継承した技と味に、独自の進化を添えた完璧な味噌ラーメン、そして鉄板コンビのチャーハン。さらには接客もすばらしいです。
「川端どさんこ」といえば、味噌ラーメンを福岡市民のソウルフードへ昇華させた昭和45年創業のレジェンド。「麺屋 金次郎」店主の金谷陽介さんは、そこで18年間腕を磨き、満を持して独立しました。師匠の岩永太郎さんは弟子の独立に太鼓判を押し「川端どさんこ」の名を小さく入れた暖簾を贈呈。そのことからも深い師弟愛を感じます。
金谷さんは「川端どさんこ」で学んだレシピを踏襲しながらも、味噌の種類やブレンド率を変えて自分流の味噌ラーメンを目指しています。行き着いたのは北海道、信州、九州の味噌を黄金比で合わせ、熟成させた味噌ダネ。中華鍋であおりながら鍋肌で味噌に焼きを入れ、そこに鶏ガラ、豚骨の肉系清湯スープを投入。程よい香ばしさ、甘さが立ち、ラードが蓋をする熱々の芳醇スープに仕上げています。
そして麺は北海道「西山製麺」謹製。小麦「春よ恋」を使った中太の卵入縮れ麺で、パンチの効いたスープの中でもしっかり主張するツルシコ感がいいですね。
さらには、“どさんこ”イズムの宿る店につき、やはりチャーハンも外せません。具材はラーメンにも入る豚肩ロースのチャーシューを細かく刻んだものにタマネギ、ニンジンなど。中華鍋であおり米を舞わせながら、塩、コショウ、九州の醤油で味付けします。パラパラエアリーな感じと、しっとりさが絶妙に合わさったこのチャーハンは“油は豚ラード”“高火力のバーナー”“鍋肌の使い方”などうまさのポイントがいくつかあるのですが、僕が一番膝を打ったのは「大粒と小粒の米をブレンドしていること」です。これにより、パラパラとしっとりの2つの食感が生まれ、スープと共に口に含んだ時も、米がじわりと舌にのるようなうまさとフワリと口いっぱいに広がる米の旨味を楽しむことができます。チャーハン自慢の店では米の炊き方を変えたりするところは多いですが、さらに手間をかけて小粒と大粒の米を混ぜて使うのはかなり珍しいと思います。
ちなみにもう一つマニアックな情報ですが、金谷さんは厨房で鍋をあおる時に、膝を使ってリズムを取り、鍋を握る手は祈るように顔に近づける独特な動きをします。これは、「どさんこ」伝統のスタイル。金谷さんの師匠の岩永太郎さんはもちろん、かつて「どさんこ」で働いていた「ひるとよる」の松屋綱善さんも、この一連の“舞い”を見せてくれます。
「岩永太郎さんにはラーメン作りだけでなく、接客についてもとことん鍛えていただきました。お客様に最高の一杯をお出しすることはもちろん、お帰りになる時には1人1人の目を見ながら『ありがとうございました』と伝えるようにしています」と、師匠への感謝を込めて話す金谷さん(写真右)。スタッフの上山智也さん(左)と共に最高の笑顔で迎えてくれます。
僕自身、味噌ラーメンは北九州「麺屋 玄」が大好きですが、そこと並ぶ感動を覚えた「麺屋 金次郎」。うますぎて、もう3回訪麺しました。順番待ちの行列はさらにグングン伸びていくことが確実ですので、早めに食べに行くことをおすすめします。
ジャンル:ラーメン
住所:福岡市東区若宮5-16-28
電話番号:なし
営業時間:11:00~15:00
定休日:火曜
席数:カウンター9席
個室:なし
メニュー:味噌らぁ麺850円、辛味噌らぁ麺900円、醤油らぁ麺850円、塩らぁ麺850円、ちゃーしゅー麺1150円、焼きめし700円、半ちゃんセット1100円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400201/40066832/
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