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【福岡 手みやげ】老舗の名品。博多の夏の風物詩“おきゅうと”を和菓子に?

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四季折々の特別な日や大切な人へ、心を込めて選び、贈りたい――。それが「ハレの日の手みやげ」。こだわりの美味しさや作り手の思いが詰まった福岡の逸品を紹介していきます。

第6回目の手みやげは博多の和菓子。春吉にある和菓子店「花月堂寿永」の名品をご紹介します。

春吉 花月堂寿永 外観

博多の歓楽街・中洲にも近い、春吉の細い路地へやって来ました。清楚な暖簾をはためかせ、凛とした佇まいをみせるのが、創業135年の老舗「花月堂寿永」。長崎で菓子職人として修業を積んだ初代が、当時日本の統治下にあった釜山に渡り、1889(明治22)年に和菓子店「松栄堂」を開業したのがその始まりです。

春吉 花月堂寿永 旧外観 店舗より提供。大正10年頃の店舗の様子

明治末期には更なる新天地を求めて北朝鮮の咸興(ハムフン)に渡り、店名を「花月堂寿永」と改め発展。1921(大正10)年頃には、咸興の特産品である梨を使った「梨羊羹」を生み出し、それが観光名物になるほどの人気を博したといいます。そうして時は経ち、日本は終戦を迎え、福岡に引き上げた2代目が1948(昭和23)年に店を構えた場所、それが現在の地・春吉でした。

春吉 花月堂寿永 内観

カラカラと格子戸を引けば、4代目の五島郁太朗さんと息子で5代目の慎太郎さんが柔和な笑顔で迎えてくれました。
「『味を変えたらいかん』という代々受け継がれてきた教えを守り、丁寧な菓子作りを続けています」と話すのは郁太朗さん。「当店らしさを大切にしながら、時代ごとに愛される菓子を作る。そんな探求も続けていますが、先代が生み出した菓子のレシピは一切変えないようにしています。質の良い素材選びから分量、製法に至るまで計算し、作り込まれているので、私たちが手を加える必要がないんです」と慎太郎さんも続けます。

春吉 花月堂寿永 和菓子

現在ショーケースに並ぶ菓子のほとんどは、「福博の街で愛される菓子を作りたい」との思いを込めて2代目が生み出したものだそう。まずこの季節に注目したいのは、博多の伝統食「おきゅうと」をテーマにした和菓子「おきうと」(1個248円)です。「おきうとワイとワイ、きうとワイ」という“おきゅうと売り”の掛け声は、かつての博多の夏の風物詩でもありましたので、夏の贈り物にぴったりの逸品ですね。
本物のおきゅうとを使っているわけではなく、あくまでモチーフにした寒天菓子ですが、一口食べるとあっと驚き! 昆布の旨味と程よい塩気、そこにピリッとしたわさびの風味が広がるんです。昭和の時代に考案されたとは信じられないほど、なんてモダンで粋な味わいでしょうか。

春吉 花月堂寿永 福うめ最中

続いては、2代目が考案して以来「花月堂寿永」の名物となった銘菓もご紹介します。金沢には加賀藩前田家の家紋である「剣鉢梅」を型取った「福梅」という最中があり、そこに発想を得て、太宰府天満宮の梅を表現したのがこの「福うめ最中」(1個194円)です。金沢にある種屋さんから取り寄せている専用の最中種(最中の皮)には、金時豆を混ぜ込んだ白餡がぎっしりと! 通常は金沢のお菓子でないと「福梅」を名乗れないそうなのですが、石川県菓子工業組合とは70年来の付き合いで、特別に名前を使うことを許されているのだそう。上質な餅米だけで作られた香ばしい皮は口溶けが良く、上品な甘味の白餡は実に滑らか。ふっくらと炊き上げられた金時豆の食感や風味も相まって、1つ、また1つと手が止まらないおいしさです。

春吉 花月堂寿永 和菓子

さらには、こちらの3つの菓子(各1個248円)も昭和期から続く名品。左端の「くるみ」はホロリと崩れる繊細な打物菓子で、さっくり優しい甘さの寒梅粉生地と、餡に包まれたくるみの食感が絶妙です。「漢倭奴国王」という焼印が映える「金印」は、その名の通り福岡の志賀島で発見された「金印」がモチーフ。風味豊かな黄金色の桃山生地に、柔らかな甘味の餡と刻み込んだ栗がいいアクセントになっています。右端の「唐舟」は、筥崎宮ゆかりの謡曲(能の詞章)である「唐船」を題材にした雅趣溢れる菓子。中国漢方の生薬としても知られる桂皮末(シナモン)と、特製の合わせ味噌を生地に混ぜ込んでいるそうで、しっとりとした口溶けとコクのある風味が何ともクセになります。

春吉 花月堂寿永 いちじく羊羹

そしてもう1つ、令和を迎えた店の新たな名物として4代目の郁太朗さんが考案した「いちじく羊羹」(1本1,620円、写真はカットした一部)も忘れてはいけません。こちらは「優良ふるさと食品中央コンクール」にて、農林水産省食品産業局長賞を受賞した逸品です。美しい琥珀色の白羊羹に、花のように浮かぶのは福岡の特産品である「とよみつ姫」のドライフルーツ。ねっちり柔らかな羊羹の舌触りといちじくの華やかな香りが口いっぱいに広がり、食べているうちにスーッと引いていく上品な甘味にも感激。「良い羊羹は、甘味が後に残らないんですよ」と郁太朗さんが話せば、「生ハムを添えて、洋酒と一緒に味わうのもおいしいですよ」と息子の慎太郎さんも笑顔で応えます。

春吉 花月堂寿永 ミニ羊羹

また、ちょっとした手みやげには、5代目の慎太郎さんが現代のニーズに合わせて考案した「ミニ羊羹」(1個324円~)もおすすめ。福岡県産の八女抹茶やあまおう苺、シチリア島ブロンテ産の最高級ピスタチオを贅沢に使ったものまで12種類が揃い、味比べも楽しいですよ。9~12月には、冒頭でもご紹介した2代目の「梨羊羹」も登場するそうです。

春吉 花月堂寿永 博多座

贈答用の箱や熨斗も用意されているので、ハレの日や特別な方への贈り物としても申し分ないですね。「福うめ最中」と羊羹は、福岡三越の地下2階「菓遊庵」、博多阪急の地下1階「銘菓銘品 日本の味」、博多駅構内にある「博多銘品蔵」の博多口店と新幹線口店でも購入できるので、時間がない時にも重宝しますよ。
ちなみに「博多座」の中にもテナントを構えており、そこでは博多座の提灯を模した特注の箱入り菓子なども販売しています。菓子の内容は季節によって変わり、歌舞伎公演の際には写真の“隈取”デザインの箱も登場するそうなので、「博多座」に行かれる方はお見逃しなく!

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

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