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親も子も住みやすい二世帯同居の家づくり~間取り編~

価値観やライフスタイルが違う世帯が同居する―それが二世帯同居の家です。2つの世帯がどちらも住みやすい家にするためには、一般的な家づくりとは違うポイントを押さえておく必要があります。

二世帯同居の家づくりにおいて大切なポイントとして、今回は間取りの考え方や検討したい項目をご紹介します。

二世帯同居の家の間取りを考える時のポイント

二世帯同居の家の間取りは、1世帯が暮らす家の間取りとは異なるポイントを検討することが必要です。親世帯も子世帯も住みやすい間取りを決めるために重要なポイントをご紹介します。

お互いのプライバシーが守れるか

二世帯同居の家では、ひとつの家の中で異なる世代の世帯が過ごすことになるため、お互いのプライバシーを確保できるかどうかは大切なポイントです。親世帯と子世帯とで起床時間や就寝時間、日中の過ごし方などが大きくずれることは珍しくないだけに、どちらの世帯もマイペースに過ごせる間取りが必要と言えます。

たとえばリビングダイニングを共有する間取りにした場合、生活パターンが異なるとテレビを見るのにも何となくお互い気を使いがちです。玄関を共有する間取りなら、外出や帰宅のタイミングを常に知られていて気が休まらないといったケースも少なくありません。

生活パターンや主な活動時間帯に合わせて、どちらもストレスなくプライバシーをしっかりと守りながら自然に過ごせる間取りを考えることが大切です。

家事分担がスムーズにできるか

家事の分担に関する問題は、二世帯同居の家の住みやすさを大きく左右します。どのエリアをどれくらい共有するかによって毎日の家事分担の考え方が変わるためです。

たとえば水まわりをほぼすべて共有した間取りだと、一緒に過ごす時間が必然的に長くなり、家事を一緒にすることも増えます。水まわりについては料理や洗濯、掃除などの家事を親世帯と子世帯とでどう分担するかを事前によく話し合ってから共有範囲を決めるとよいでしょう。

掃除やアプローチの手入れなど意外に手間がかかる玄関まわりも要注意です。玄関を別にしていればそれぞれの世帯で管理すればいいのですが、共有していると雨が降った時や子どもが汚れた靴で歩き回った時などの掃除の分担という問題が出てきます。

親世帯と子世帯それぞれの生活パターンを踏まえて、どのように家事分担をするのか、決めた分担割合でお互いストレスを感じずに暮らせるのかを建築計画中によく検討しましょう。

負担するコストの割合が適切か

二世帯が同居するとなると、間取りによって負担するコストをどう分けるのかが難しいケースがあります。建築費もそうですが、トラブルになりやすいのは入居後の生活コストです。

電気やガス、水道の光熱費やインターネットの通信費、食費など毎月かかる生活コストは、間取りの共有範囲が多いほど「親世帯はいくらで子世帯はいくら」と分けにくくなります。お互いにモヤモヤを感じないためには、電気やガス、水道の配線配管を基本的に分けてメーターも別々に設置するのがもっとも明確で揉めにくいです。

ただし建築費は高くなるため、間取りを決める段階で生活コストの負担割合についてもあわせて話し合っておきましょう。

二世帯同居の家の間取りパターン

二世帯同居の家の間取りには基本パターンがあります。基本パターンを知っておけば、それぞれの世帯のライフスタイルや両世帯の関わり方などに合わせてアレンジしていけるので、間取りを決めやすいです。

基本パターンの間取りは大きく次の3種類に分けられます。

完全同居型

玄関や水まわり、リビングダイニングなど毎日の生活に必要なエリアを親世帯と子世帯で共有するパターンです。寝室や子ども部屋などの個室はそれぞれの世帯で確保します。

設備をほぼ共有するため建築コストが抑えやすく、顔を合わせる機会も多いため親世帯と子世帯が日常的に交流できて家族としての一体感を感じやすいです。

部分共有型

玄関や水まわり、リビングダイニングなどの一部を共有し、一部を分けるパターンです。どのエリアを共有するかによってプライバシー確保の度合いが変わります。

両世帯それぞれのライフスタイルや価値観に柔軟に合わせた間取りを選びやすく、お互いにほどよい距離を保ちながら交流できるためプライバシー確保とのバランスを取りやすいです。

完全分離型

親世帯と子世帯それぞれの生活エリアを完全に分けるパターンです。ひとつの家の中で、2つの世帯が互いに干渉することなく単独の生活を送ることができます。

プライバシーを確保しやすく気を使わずに済む上に、何か困ったことがあればすぐに声を掛けられるので安心です。

二世帯同居の家の間取りを決める時に検討したい項目

別居よりも親世帯と子世帯の距離が近い二世帯同居だからこそ、生活の場となる家の間取りを決める時に慎重に検討したい項目があります。家が完成した後では対応が難しい項目もあるので、間取りを決める段階で早めに話し合っておくのがおすすめです。

子育てへの関与

子世帯が共働きかどうかにもよりますが、二世帯同居だと親世帯が子育てを手伝うシーンは一般的に増えやすくなります。
小さい孫を預かるなど積極的に関わるのか、それともお願いされるまでは見守るのかなど、子育てへの関与の仕方によって適した間取りも変わるため、間取りを決める段階で家族全員でしっかりと話し合っておくとよいでしょう。

介護の可能性

親世帯が高齢、もしくは体力的に不安を抱えているといった場合は近いうちに介護が始まる可能性を頭に入れて間取りを決めていく必要があります。玄関や廊下の広さ、寝室とトイレの距離などを考慮してみてください。

まとめ

普段から交流があり気心が知れている関係だとしても、親世帯と子世帯はライフスタイルや価値観、体力など異なる側面が意外に多いものです。家の住み心地に影響を与える間取りは完成した後では容易に変えられません。

両世帯で異なる側面をお互いに把握した上で、その違いを認め合いながらじっくり間取りを検討していきましょう。

WRITER
河野 由美子 二級建築士・インテリアコーディネーター・防災備蓄収納1級プランナー

住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手ハウスメーカーでの勤務を経て独立。 日常の中に非日常を感じられる空間づくりをコンセプトとし、住宅やオフィス・医療施設・店舗などの設計およびインテリアコーディネートに携わっています。 建築インテリア関連記事の企画執筆や監修業務、研修講師、建築関連資格対策テキスト監修、工務店施工事例集ディレクションなどの実績も多数。

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この記事を書いたひと

rkb_ouchi