親世帯と子世帯がひとつ屋根の下で暮らす二世帯同居の家づくりにおいては、それぞれの世帯のライフスタイルや住みやすさのポイントが違うことを考慮することが大切です。
親も子も住みやすい二世帯同居の家づくり第二弾として、今回は住宅設備や建材を選定する際の注意点と採用を検討したいおすすめ設備・建材をご紹介します。
二世帯同居の家の住宅設備・建材を選定する際の注意点
住宅設備や建材の選定は、機能性やデザイン性、サイズなど複数の視点から進める必要がありますが、二世帯同居の家の場合は「価値観やライフスタイル、体力などさまざまな点で違いがある2つの世帯が同居する」ということを念頭に置いておくことが重要です。
二世帯同居の家づくりで住宅設備や建材を選定する場合のポイントは複数ありますが、特に次の2つのポイントに注意しながら進めてみてください。
メインで使用する人にとって使いやすいか
完全分離型の二世帯同居の家づくりをする場合、注意したいのは親世帯の体力です。子世帯と比べて、同じ家事をするにしてもかかる時間や体への負担が違うので、同じ仕様の住宅設備を採用すると使い勝手の悪さを感じる可能性があります。今は特に問題なく生活できていても、今後筋力は落ちていくことを考慮しておくとよいでしょう。
たとえばキッチンのプランを考える時、筋力の衰えや関節のこわばりが原因で、腕を高く上げる・腰を曲げる・立ち座りをするといった動作がしにくくなることを考えると、メインで使う収納は自然と高すぎない・低すぎない位置に集約させることになります。
また握力が落ちてくるため、扉の取っ手は握って開けるつまみタイプより、手の平や指を引っ掛けて開けるバータイプが使いやすいです。
特に毎日使う水まわりや、玄関まわりの住宅設備や建材は、親世帯においては加齢による動作の低下を見据えて選定するとよいでしょう。
双方のプライバシーが確保できるか
ライフスタイルが違う二つの世帯が同居する二世帯同居の家では、プライバシーの確保は避けて通れないポイントです。完全同居型や部分共有型の場合で開放感を重視した間取りにすると、視線や音などの問題で揉めやすいです。
親世帯と子世帯の生活動線が重なりにくい間取りにするのが一番ですが、玄関や水まわりを共有するのであれば住宅設備や建材でカバーする必要があります。
たとえば子世帯の帰宅が遅めのことが多いなら、玄関から遠い位置に親世帯の専用スペースを設けた上で、帰宅後の音が伝わりにくいように防音性の高い床材を採用するといった工夫がおすすめです。
間取りの関係で親世帯と子世帯それぞれのプライベートスペースが近いなら、視線カットのための間仕切りや鍵付きの室内ドアを採用するのもおすすめです。
二世帯同居の世帯別おすすめ住宅設備・建材
家全体の住みやすさを左右するのが間取りなら、日常の細かな動作の快適性を左右するのが住宅設備や建材です。スムーズに家事ができる、ストレスを感じずに使える、体力の低下をサポートする、そんなおすすめの住宅設備や建材を世帯別にご紹介します。
親世帯へのおすすめ住宅設備・建材
体への負担を抑えながら日常生活を送れる住宅設備を採用すると、親世帯の生活の快適性を高められます。
椅子に座ったまま調理ができるシステムキッチン、洗い場と浴槽の移動が楽なベンチカウンタータイプのシステムバス、オンオフを操作しやすい大きめサイズの照明スイッチなど、加齢による影響を最小限にする住宅設備がおすすめです。
建材についても、軽い力で開閉できる引き戸や、便器の立ち座りがしやすくなる手すりなどはとても便利ですね。
意外と見落としがちなのが照明です。年齢を重ね視力が落ちてくると、老眼によって小さな文字が見えにくくなるだけでなく色の識別もしにくくなってきます。また光にも敏感になるので、光源が直接見えない照明や物の色がより自然に見える温白色の明かりが選べる照明を選ぶとよいでしょう。
子世帯へのおすすめ住宅設備・建材
仕事や育児などで毎日忙しく過ごす子世帯にとって、家事の時短化につながる住宅設備の選定は今や必須と言えます。
食器洗い乾燥機やタッチレス水栓・IHヒーターなど、家事や掃除の手間が短縮できる仕様のシステムキッチン、洗濯物を干す時間をコンパクトにできる浴室乾燥機、スマートフォンで外出先から操作や設定ができるエアコンなどが便利です。
建材では、両手で荷物がふさがっていても開閉が楽な電子錠つき玄関ドアや、日中不在で室内の換気がままならなくても湿気がたまりにくい調湿壁材、汚れがつきにくい防汚性壁紙などがおすすめ。二世帯同居の家の2階が生活圏で子どもが小さい場合は、防音性能が高い床材を選定しておくと、階下の親世帯とのトラブルも回避しやすいですよ。
まとめ
多くのメーカーからさまざまな商品が発売されている住宅設備や建材は、検討し決定するまで意外と時間がかかります。親世帯と子世帯それぞれで使いやすいと感じる商品を絞り込み、さらに同居する世帯にとってもメリットがあるかどうかを吟味しながら選定していきましょう。
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住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手ハウスメーカーでの勤務を経て独立。 日常の中に非日常を感じられる空間づくりをコンセプトとし、住宅やオフィス・医療施設・店舗などの設計およびインテリアコーディネートに携わっています。 建築インテリア関連記事の企画執筆や監修業務、研修講師、建築関連資格対策テキスト監修、工務店施工事例集ディレクションなどの実績も多数。
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この記事を書いたひと
rkb_ouchi