※今回ご紹介のお店
麹の専門店レッドクローバー(長尾)
和栗果実さしいろ(久留米)
福岡の食を支える「中村学園」の卒業生
中村学園女子高等学校
2024年に創立70周年を迎えた、“食の中村”こと「学校法人中村学園」。1954(昭和29)年に「福岡高等栄養学校」を開校したのがそのはじまりで、多くの料理人や食産業に携わる人材を輩出していることで有名です。UMAGAでは70周年を記念し、卒業生が営む店、活躍する店をご紹介しています。連載の第6回目は「中村学園女子高等学校」の卒業生が営む、麹食品と和栗スイーツの専門店を訪ねました。
麹と発酵食品のソムリエが手がける
「麹の専門店レッドクローバー」
最初に訪れたのは、城南区長尾の油山観光道路と大池通りの交差点にある「麹の専門店レッドクローバー」。「中村学園女子高等学校」の卒業生で、麹ソムリエ・発酵食品ソムリエとして活躍する荒巻良美さんが営む麹の専門店です。2019年7月に「麹cafe」として開業し、5年目を迎えた今年7月にイートインを終了して、商品の製造・販売と教室をメインにしたお店に生まれ変わりました。
「羽釜でご飯を炊き、出汁の取り方から包丁の研ぎ方まで、全て調理実習で教わることができた高校時代の経験が私の食の原点です」。そう話す荒巻さんに、オープンのきっかけや思いを伺いました。
「卒業後は、高校で所属していたソフトテニス部の先生の推薦もあり福岡銀行に就職し、その後転職して、大好きな着物などの衣装貸し付けや着付けを行うブライダルの仕事に長らく携わっていました。転機となったのは、夫が49歳という若さで他界したことです。娘や友人達に支えられながら何とか日々を過ごしていたなかで、『定年退職後は一緒にカフェを開きたいね』と、かつて夫と話していたことを思い出したんです。1人で寂しさを感じている人をはじめ、誰もがここに来たら元気になれる、おいしいものが食べられる、そんな場所を作りたいと開業を決意しました」。
「福岡で戦っていくには何か強みがないといけない。そう悩みながらオープンを4ヶ月後に控えた頃、ふっと頭に降りてきたのが“麹”でした。お肉を軟らかくするのに使ってはいたけど、もっと詳しく知って自分でも作ってみたいと考えました。そして、鹿児島で100年以上続く麹屋『河内源一郎商店』の4代目にして、菌や麹研究の最高峰として知られる『源麹研究所』の山元文晴社長の元へ学びに行ったことでどんどんその魅力に引き込まれていったんです。麹は日本の『国菌』にも指定され、古くより私たちの食生活を豊かにしてきた心強い存在なんですよ」と荒巻さん。遂には、麹や発酵食品の製造とその知識や作り方を教える資格を取得するまでになり、今に至ります。
店内では、基本の「塩麹」(170g 880円)から「醤油麹」「玉葱麹」「大蒜麹」などのアレンジ麹、ドリンクとしても楽しめる「甘麹」や、「夏麹」「秋麹」といった季節限定の麹まで販売しています。パウチ式なので使いやすく、非加熱なので麹菌は生きたまま。無添加なので体に優しく、塩や調味料を塩麴に換えることで、料理の塩分量は通常の3分の1に抑えられるのだとか。肉・魚・野菜が格段においしくなり、ドレッシングやスープにも大活躍! まさに“健康的でおいしい料理が簡単に作れる万能調味料”ですね。
また、麹と季節の果物を使って作られる「生酵素ドリンク」も看板商品の一つ。酵素が死なないように加工を行い冷凍状態で販売しているため、生きた酵素を取り入れられるそうです。月替わりで12種類のフレーバーがあり、写真は旬の時期に仕入れた唐津産のイチゴ「いちごさん」の果肉がたっぷりと入った「いちごの果肉入り生酵素ドリンク」(160g 840円)。炭酸で割っていただいたところ、甘酸っぱいイチゴの香りとジューシー感、柔らかな甘味が実に心地よく広がりました。さらには、家で簡単に手作りできる「味噌キット」(米・合わせ・麦 各3,200円)も人気です。商品はオンラインショップでも購入できますよ。
そして、月に15コマのペースで開催している麹や発酵食品をテーマにした教室も毎回大好評。塩麹や甘麹の使い方を教える料理教室から、味噌、ぬか床、野菜を絡めると一晩でおいしいキムチができる素「キムチのり」を作る教室など、内容も多彩です。子供達へ向けた「子ども味噌教室」や「子ども麹道体験」といった食育にも力を入れ、今後は生産者の方を招いての勉強会や複数回に渡って段階的に学んでいけるコースも実施していく予定だそう。開催告知や予約受付は、お店の公式LINEにて行っています。
教室には「中村学園女子高等学校」の先生もプライベートで学びに来られているそうで、母校で米味噌づくりの特別授業をしたことも。ちなみに、お店を共に切り盛りしているスタッフは荒巻さんの高校時代の部活の後輩で、娘さんは中村学園大学短期大学部を卒業後、さらに深く学びたいと中村学園大学へ入学し、管理栄養士の資格を取得されたそうです。
「学園祖の中村ハル先生は、戦後の混乱期に『少ない食糧をうまく使いこなして、おいしく栄養のある料理を作る、食を守る婦人の教育が必要だ』と考え、昭和24年に割烹女学院を開校されましたが、その思いや教えが今の私に息づいています。麹や発酵の力を借りて簡単においしい料理が作れるようになれば、それが大切な人を守ることに繋がります。これからも、そんな“作れる人”を育てていきたいです」と、荒巻さんは力を込めました。
繊細な錦糸モンブランが絶品!
久留米の「和栗果実さしいろ」
続いてやって来たのは、久留米市の中心部・日吉町にある「和栗果実さしいろ」。ここは、未だ衰えぬ人気を誇る京都の和栗専門店「紗織ーさをりー」のプロデュースで2022年6月にオープンした和栗スイーツ専門店です。「紗織ーさをりー」といえば、搾りたて“錦糸モンブラン”を生み出し、全国にブームを巻き起こした有名店。 しかし、そのプロデュース店は全国に4店舗しかなく、九州はここ「和栗果実さしいろ」だけです。
元々倉庫だった場所をリノベーションした建物の2階にあり、シックなインテリアも素敵。広々とした店内には、パティシエがデザートを仕上げる様子を目の前で楽しめるカウンター席やゆったりとしたテーブル席が配されています。
笑顔で迎えてくれたのは「和栗果実さしいろ」と久留米の人気店「やきとり雄源」「くるめ串雄源」の代表を務める、「中村学園女子高等学校」卒業生の鈴木惠子さん。鈴木さんは、お店を経営することになったきっかけをこう話します。
「中村学園女子高等学校は、私が通学していた当時から“お料理の専門学校?”と言われるほどに、食育に力を入れた学校でした。調理実習は高校の授業とは思えないほど本格的で、真剣に学んだことを今でもよく覚えています。しかし、あの当時はこうして食の仕事に携わるとは思ってもいませんでしたね。25歳で結婚してからは専業主婦でしたが、焼鳥の修業を終えた息子が独立して店を出すことになり、それが1つ目の転機となりました。息子は“現場”に集中し、私が事務的なことを担当するということで会社を立ち上げ、代表職に就いたんです」。
やがて焼鳥店は軌道に乗り、2店舗目を開業するまでに繁盛。しかし、お店の経営を始めて6年目に2つ目の転機が訪れたと言います。
「コロナによって世の中がガラリと変わった時期に、新規事業を立ち上げようということになったんです。ずっとカフェをやりたいと考えていたのですが、そんな時に出合ったのが『紗織ーさをりー』でした。京都のお店は連日大行列で、整理券をゲットできないほどの人気ぶり。何より、特注の機械を使って1mmの細さで搾り出される“錦糸モンブラン”に衝撃を受けました。砂糖などの甘味は控えめで、和栗の風味がものすごく豊かなんです。これまで私が知っていたモンブランとは全然違う!と感激し、これを福岡で広めたいと思いました。早速先方にご連絡したところFC展開はしておらず、“ここなら”と認めたところだけプロデュースを手掛けているとのことでした。その後、私たちの熱意が伝わり、京都でもみっちりと研修を受け、久留米でお店を開くことができました」。
さぁ、1皿に付きおよそ11個分もの和栗を使っているという看板メニューの「錦糸モンブラン」(ドリンク付き1,980円)をいただきましょう。和栗の仕入れ先、専用の搾り機、器、レシピや製法、宇治の煎茶や無農薬の和紅茶などから選べるドリンクメニュー、途中の梅昆布茶サービスまで、本家の「紗織ーさをりー」と同じものにこだわる徹底ぶり。1つだけ違うのは「和栗果実さしいろ」では、九州らしさも出したいという思いから熊本県上益城産の和栗にこだわっている点です。注文ごとに搾られた「錦糸モンブラン」を一口食べると、蒸し栗を味わった時のような芳醇な香りとまろやかな旨味がふわり。中心には和栗のクリーム、和三盆糖とサトウキビを使い90℃の低温で24時間じっくり焼成した厚みのあるメレンゲが隠れています。錦糸モンブランペーストはふわっとエアリーで繊細、メレンゲは軽やかでサクサク、和栗クリームは滑らか……と食感のコントラストも素晴らしいです。
また、季節の果物を使ったメニューにも注目です。こちらは「和栗と季節の果物パフェ」(ドリンク付き2,530円)で、伺った日はマスクメロンの時期でした。9~10月ごろにはシャインマスカットに変わるそう。中心に重ねたグラニテや白ワインジュレといったの自家製のパフェ素材、ジューシーな果肉も相まって、こちらもたまらないおいしさです。
ちなみに、店名は和栗メニューの一部に使っている季節の果物が“差し色”になっていることに由来するそうですよ。
さらには、「和栗果実さしいろ」限定のイートインメニュー「1mm和栗のモンブランソフト」(ドリンク付き1,200円)と、錦糸モンブランの「お重」(1,900円・写真右)やタルト「鈴~すず~」(1,600円・写真左)といったテイクアウトメニューも見逃せません。「大丸 福岡天神店」や「博多阪急」をはじめとした百貨店の催事に出展することも多いそうです。
季節の変わり目で体調を崩しやすくなるこれからの季節に「麹の専門店レッドクローバー」の麹や発酵食品が大活躍。疲れた時には「和栗果実さしいろ」の錦糸モンブランでパワーチャージを! ぜひチェックしてみてくださいね。
この記事は「学校法人中村学園」の提供でお届けしました。
ジャンル:食物販店
住所:福岡市城南区長尾5-9-11
電話番号:092-985-3846
営業時間:10:30~18:00(日曜~16:00)
定休日:不定
メニュー:塩麹170g 880円、醤油麹・玉葱麹・大蒜麹 各170g 980円、甘麹 170g 760円、いちごの果肉入り生酵素ドリンク160g 840円~、お家で簡単!味噌キット(米・合わせ・麦)各3,200円
URL:https://www.instagram.com/nagao_kouji_cafe
ジャンル:スイーツ、カフェ
住所:久留米市日吉町28-1 2F
電話番号:0942-25-9165
営業時間:12:00~:20:00(カフェOS19:30)
定休日:火曜
席数:カウンター12席、テーブル12席
個室:なし
メニュー:錦糸モンブラン1,980円、和栗と季節の果物パフェ2,530円、栗粉もち1,760円、和栗と季節の果物タルト2,200円、1mm和栗のモンブランソフト1,200円 ※イートンメニューはドリンク付き、テイクアウト専用:お重1,900円、鈴~すず~1,600円
URL:https://www.instagram.com/sashiiro2022
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