薬院の新川沿いに2020年にオープンした「ココカラ」が、4周年を機にリニューアルしました。もともと中華と発酵、日本酒バルという独自性の高いお店。どんな変化を遂げたのか探りに行きました。
店構えで変わったのは、奥にテーブル席ができたことです。前はカウンター席だけだったためお客は1組が2人まで限定されていましたが、これで4人までの利用もできるようになりました。
そしてメニューは、以前は中華と発酵をベースにした料理がメインでしたが、「かもしか」では中華と発酵以外にもスパイスやハーブを使った香味豊かな料理を提供するなど幅が広くなったのです。
店主の一瀬尚哉さんは山梨のホテルの中華料理部門で10年働いた後、先輩が開いた居酒屋で5年働き、独立。若いうちに一度知らない場所でチャレンジしてみたいと、縁もゆかりもない福岡にやってきて「ココカラ」をオープンしました。そして昨年、祐華さんとご結婚。「1人ではいろいろやるのに限界がありました。妻と一緒にお店をやることになったので、枠を広げようリとニューアルすることにしたんです」と話します。
一瀬さんは居酒屋時代に日本酒にハマり、勉強するうちに自然と発酵にも興味をもち始めたといいます。「自分が体調を崩した時期でもあり、身体に良いとされる発酵食品について調べるうちにこれまたハマってしまって。今では健康思考というよりも、発酵による旨味をいかにおいしさに直結させるかに興味が惹かれています」と一瀬さん。お店では乳酸発酵させたピクルスや、麹を使った発酵調味料・食品が手作りされていました。発酵する人=醸す人=醸し家。これが店名の由来です。
そんなお料理に合わせて楽しみたいのが、以前から力を入れている日本酒です。秋田県の日本酒を中心に、全国の日本酒を常時50種類ほど揃えています。
1杯目はやっぱりビールかな、でも日本酒のお店だしな~と悩んでいると、祐華さんから「『生酛のどぶ』というにごり酒のビール割りはどうですか?」とのご助言が。そんなのがあるんだ!と注文。
「どぶビール」(940円)はあらかじめ割ったものではなく、小瓶のビールとグラス1杯分の「生酛のどぶ」を出してくれ、自分で割っていきます。祐華さんのおすすめはビール2:「生酛のどぶ」1の割合。コクと爽やかさがちょうどいい、どぶビールが味わえます。
さて料理はどうしよう迷っていると、今度は一瀬さんから「お一人なら酒肴セットがおすすめです」とのご助言が。本日の品書きから5皿2,000円、4皿1,600円、3皿1,200円で提供されています。これはお得と、3皿セットを頼みました(セットは単品のハーフサイズ、人数分での注文)。
酒肴セットは人数分で盛り付けてくれます(写真は各1人前分)。「焼きナス、キノコ、蒸し鶏の四川風金胡麻ソース」(写真)は、ふわっとした鶏肉、なめらかな焼きナス、コリっとしたキノコ、さらにカリカリのナッツとまぁ食感の豊かなこと。そこに味わい深くピリッと辛い金胡麻味噌や、その他スパイスの味が混じり合い、とにかくいろいろな香りと食感のオーケストラです。
次は「中華風スパイス煮込み5種盛り」です。さまざまな香辛料を加えた醤油ベースのスープで食材を煮込んだ「ルースイ」という中華料理で、いわゆるおでんのようなものだそう。この日は豚タン、うずら卵、里芋、シイタケ、アサリの5種類。八角やクローブなどいろいろな香りが感じられ、またそれぞれの食材の持ち味と食感が生かされていました。
こちらは「鶏肝(キンカン)の紹興酒漬け」と「鶏肝の八丁味噌漬け」が1皿に。漬けによる浸透圧で水分が外に抜けるぶん、キンカンも肝も旨味が凝縮! ねっとりした食感と濃厚な味わいのこの2品は、とりわけ日本酒とよく合います。ちなみに祐華さんは日本酒ソムリエの資格も持っていて、お店ではペアリングも提案しているので、ぜひ料理に合う日本酒を尋ねてみてください。
酒肴系のお料理のほか、点心も提供しています。「三種キノコの焼売」(1個280円)と「もち米の焼売」(1個260円)(写真左)は、どちらも餡に酒粕を使い味に深みを出しています。「発酵あんこのビター春巻き」(500円)(写真右)は、砂糖を使わず麹の自然な甘みからなるあんこを使用。控えめな甘さで、スパイスソルトをつけていただきます。
「かもしか」ではレアなヴィンテージ日本酒も提供しています。「まさに、このあんこの春巻きに合うのが古酒、それも燗酒がとても合いますよ」と祐華さん。ならばと、写真右端の「達磨正宗 熟成3年」(750円)を熱燗にしてもらい合わせてみました。すると、古酒の甘さとあんこの甘さがほぼイコール! 互いになじみ合う、見事なペアリングが味わえました。
そして締めに「自家製香味辣油の汁なし坦々麺」(ハーフ680円)を注文。白ネギ、青ネギ、ゴマ、カシュナッツ、芽菜(中国の高菜)、肉味噌と具沢山です。美しい見た目がもったいないけど、かき混ぜて一同にいただきます。タレには酒粕とたっぷりのスパイスが使われていて、ここでまた香りと食感のオーケストラ。それもラストにふさわしいパンチあるオーケストラでした。
それにしても発酵の力に加え、一瀬さんのアイデアによる食材や調味料の組み合わせ方たるや。どの料理も他にないオリジナリティが感じられ、つい「これは何を使っているの?」「どんな日本酒が合うの?」と質問攻めしてしまいましたが、ご夫妻はとても丁寧に答えてくれ、会話が弾みました。「かもしか」では、そんなご夫妻とともに「醸す時間」も重要な要素だと言えるのです。
店舗からの提供
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