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お世話になったあの人のために|アナウンサーコラム

「特に何もせず、しゃべらず、トイレにも行かず、頭の中に何かを思い浮かべたり考えたりしながら、2時間過ごしてください」。そう言われたとしたらどうするか? 考えるだけで2時間とは結構な長さだ。

マラソンという競技で、エリート選手たちは、42.195キロを2時間と数分かけて走る。この間、何を考えながら走るのかを選手に聞いてみると、「集団での位置取りや給水のこと」「マークしている選手が集団のどこにいるのか」「ライバル選手の動き」など回答はさまざまだ。中には「集団では特に何も考えない」と答える選手も。理由は、あれこれ考えることで、多少なりともエネルギーを消耗してしまうからだという。つまり、後半の勝負どころで使う力をためておくためなのだそうだ。そして後半、我慢のしどころが必ずやってくる。その時は「これまでお世話になった方々の顔が浮かぶ」と答える選手が珍しくない。それは、所属チームの監督やコーチ、チームメート、あるいは中・高・大学時代の恩師、また両親や家族だったり。長丁場のマラソンを「誰かへの感謝の気持ちとともに走る」心境も納得できる。

温泉の湯煙や別府湾の風景を楽しむ余裕の有無は選手次第。別府大分毎日マラソン。伝統のレースは、あす正午に73回目の号砲が響き渡る。


2月1日(土)毎日新聞掲載

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茅野 正昌

RKBアナウンサー

出身地:福岡県福岡市 誕生日:4月17日 アナウンサーをめざしたきっかけ 小学生のころ、ラジオで野球中継を聴いていて

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