1年半取得した産休・育休を経て、職場復帰を控えた3月半ば。ラジオから夕食の献立の話が流れてきた。「我が家は豚汁。豚汁の日は、おかずは豚汁だけ!」というリスナーに、男性パーソナリティーが返した。「今は共働きがスタンダードになりつつある。具だくさんのみそ汁は栄養満点! それ一つで立派な献立だ」と。私は思わず目を見開いた。家事は女性が担うという昭和的な環境で育った私にとって、親世代の男性が放送でそう述べたことは大変な驚きだった。
新生活を前に「忙しくても娘にはきちんとした食事を」といつの間にか自分に課していたプレッシャーを、そっと和らげてもらえた気がした。
復帰して間もなく1カ月。生放送はガチガチに緊張し、新たに挑戦している取材や編集は人一倍時間がかかる上に「子供のお迎え」というタイムリミットもある。帰宅後は娘を夜8時に寝かせるため、風呂、食事、洗濯と分刻みでこなし、娘と共にベッドに倒れこむ日々。
そんな慌ただしさの中でも、夫婦交代で大鍋にみそ汁を作ることだけは欠かさない。肉、豆腐、旬の野菜にだしとみそ。「よし、これさえあれば今日もきっと大丈夫」。仕事も育児もと力が入りすぎる私だが、具だくさんのみそ汁が、私の笑顔を保つ「お守り」となっている。
4月26日(土)毎日新聞掲載
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