東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、12月29日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演。激動の2025年を締めくくるにあたり、私たちの日常に欠かせない存在となった「外国人労働力」の現状と、日本が直面する少子高齢化の深刻な課題についてコメントしました。
介護やサービスの現場に息づく外国人の力
年の瀬、上京した折に都内の高齢者施設に住む叔母を訪ねました。施設に入ると、フィリピン出身の女性スタッフたちが明るい笑顔で迎えてくれました。叔母の部屋にお茶を運んできてくれたのも彼女たちでした。
その夜、友人と入った居酒屋でも、ネパールやバングラデシュから来た店員さんが、見事な日本語でスマホ注文の方法を教えてくれました。こうした光景は今や全国で見られますが、とりわけ首都圏では日常の風景に溶け込んでいます。
介護、建設、農業、サービス業――。もはや外国人の手を借りなければ、日本の社会は1日たりとも回らない。それが2025年現在の偽らざる実態です。
動き出した新制度と「量的マネジメント」の影
こうした中、政府は12月23日、外国人の在留資格に関する新しい運用方針を打ち出しました。
柱となるのは、即戦力型の「特定技能1号」と、2027年4月にスタートする「育成就労」です。「育成就労」は、人権侵害の温床とされてきた「技能実習制度」に代わるもので、3年間の滞在で技能を身につけることを目的としています。さらに高い技能を持つ「特定技能2号」になれば、在留期間の更新制限がなくなり、家族の帯同も認められます。
しかし、気になる点もあります。政府は「特定技能1号」の受け入れ上限を、これまでの82万人から80万5700人へと下方修正しました。高齢者や女性の就労、ITの普及などが理由とされていますが、背景には「外国人問題に厳格に対処する」という高市政権のカラー、いわゆる「量的マネジメント」への意識が透けて見えます。
加速する排外主義と「共生」への不安
今夏の参院選では「日本人ファースト」を掲げる政党が躍進しました。背景には、外国人が増えることへの治安悪化の懸念など、共生に対する不安が一部で広がっていることがあります。
福岡県内でも象徴的な出来事がありました。朝倉市で計画されていた、主に外国人向けのマンション建設が「移民政策反対」というネット上の猛烈な抗議やデモによって白紙撤回に追い込まれたのです。SNSでは誤情報も拡散され、騒動は今も尾を引いています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、55年後の2070年には総人口の約1割が外国人になると予測されています。人手不足の穴埋めはしてほしい、インバウンドの金は欲しい、でも定住されるのは嫌だ――。そんな「虫がよすぎる」論理が、これからの日本に通用するでしょうか。
日本は「選ばれない国」になってしまうのか
朝日新聞の推計(12月24日付)によれば、2025年の日本人の出生数は約66万8000人と、10年連続で過去最少を更新する見通しです。少子高齢化の波は、もはや止まりません。
一方で、同じ悩みを抱える韓国や台湾との間で、外国人材の「獲得競争」が始まっています。円安が続き、日本に賃金的な魅力が失われ、さらには排外主義的な言動があふれる国を、彼らは選び続けてくれるでしょうか。
彼らを「使い勝手のいい労働力」としか見ない視点は、早晩、日本を「選ばれない国」へと突き落とします。排外主義の先に待っているのは、日本人だけでなく、支え手である外国人もいなくなった、活力の消えた日本の姿です。
年末年始、多くの人が休む中で、街で働く外国人の姿をきっと見かけるはずです。彼らの視点に立って、この国の未来を考えてみる。そんな年の瀬にしたいものです。
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この記事を書いたひと

飯田和郎
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。





















