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与党圧勝後の東アジア情勢:高市外交の本格始動と周辺国の思惑

飯田和郎

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東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、2月9日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演。昨日8日に投開票が行われた第51回衆議院議員総選挙の結果を受け、自民党圧勝で基盤を固めた高市早苗政権の今後の周辺外交、とりわけ東アジア諸国との向き合い方について解説しました。

「高市選択選挙」の結果と市場の反応

昨日投開票が行われた衆議院選挙は、自民党が単独で316議席を獲得し、総定数の3分の2を上回る歴史的な大勝となりました。立憲民主党と公明党の一部が合流して誕生した「中道改革連合」が惨敗を喫するなか、有権者は「高市早苗が内閣総理大臣でよい」という審判を下した形です。

今朝の株式市場は、高市政権の継続と安定した政権基盤への期待から、買いが先行する展開となっています。高市総理は解散時の記者会見で「主権者たる国民の皆様に決めていただきたい」と述べていましたが、まさにその信任を得て、外交においても一段と強い姿勢で臨むことになりそうです。

台湾が歓迎する「救いに行く」のメッセージ

今回の選挙結果を最も歓迎しているのは、台湾でしょう。高市総理は選挙戦の最中、1月26日のテレビ討論で、台湾有事への対応についてこう踏み込みました。

「台湾で大変なことが起きた時、私たちは日本人やアメリカ人を救いに行かなきゃいけない。共同行動を取っているアメリカ軍が攻撃を受けた時、日本が何もせずに逃げ帰れば、日米同盟はつぶれます」

かつて「特定のケースの明言は慎む」としていた方針を一歩進め、台湾有事を日本の「存立危機事態」と見なす考えを改めて強調したのです。この発言は台湾メディアで大きく報じられ、中国の軍事的威圧にさらされる台湾市民にとって、非常に力強いメッセージとして受け止められました。頼清徳政権にとっても、高市政権の安定は大きな安心材料と言えます。

中国の警戒:深まる対立とレアアース規制

一方、中国は強い不快感を示しています。高市総理の発言を受け、中国外務省は「日本が台湾に口出しする資格はない」と猛反発し、総理自身、また総理の周囲にいる保守派の政治家を念頭に「戦後の国際秩序に挑戦する右翼勢力の野心を暴露した」と非難しています。

中国は現在、日本産水産物の輸入停止に加え、観光客の渡航自粛、さらには中国産レアアースの対日輸出規制強化という強硬な対抗措置をとっています。

レアアースはAIやドローンなどの先端技術に欠かせない資源であり、世界生産の7割を握る中国が「デュアルユース(軍民両用)」を理由に規制を強めれば、日本のハイテク産業への影響は避けられません。高市総理は「強い政権」を背景に中国の姿勢軟化を狙いますが、ベネズエラ問題などで欧米諸国が中国との距離を調整するなか、日中関係だけが冷え込んだまま孤立するリスクも孕んでいます。

「咲き誇る花」の外交:交錯する日中の自画像

高市総理と習近平主席はいずれも「強さ」を強調し、目指す姿勢が共通しています。興味深いのは、高市総理が掲げる「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」という言葉です。一方で、中国の「中華」という言葉も「世界の真ん中で咲き誇る花」を意味します。日中双方が自国を「真ん中の花」と位置づけて主導権を争う構図は、類似しています。それが今日の摩擦を生んでいるのかもしれません。

来月19日には、ワシントンでの日米首脳会談が予定されています。トランプ大統領は衆院選での高市氏勝利に「全面的な支持」を表明しましたが、会談では防衛費のさらなる増額要求など、厳しい「ディール」を迫る可能性もあります。

今回の選挙結果により、日本は高市カラーの強い「進路」を選択しました。地政学的リスクが高まる東アジアにおいて、この強硬な姿勢が平和を導くのか、あるいは火種を広げるのか。私たちは、その重い選択の先にある未来を注視していかなければなりません。

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この記事を書いたひと

飯田和郎

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。