燃料代高騰が続く中、注目を集めているEV(電気自動車)。EVは補助金や税制優遇も受けられるため、ガソリン車に比べて金銭的にお得な部分が多い印象ですよね。しかし、高額な車両費用、バッテリー交換費用など、ガソリン車に比べ欠点と言える部分もあります。
今回はEVとガソリン車、どっちの方がお得なのかを様々な視点から比較しました。改めて双方の利点を知り、自分にはどちらが合っているかを考えてみてください。
なぜ今「EV」が注目されているのか
昨今高い注目を集めているEVですが、その理由は単に燃料代が高騰していることだけではありません。背景には深刻化が進む「地球温暖化問題」があり、各自動車メーカーは「脱炭素」を目指しEVへのシフトを急ピッチで進めています。その一環で開発競争も進み、航続距離の向上、バッテリー寿命の向上など、EV自体の性能も年々アップしており、より扱いやすい車へと進化していることも注目度が高まっている理由の一つと言えます。
世界各国がEV車の開発に力を入れており、一躍EVトップメーカーとなった中国発の「BYD」をはじめ、「Tesla」「Volkswagen」「BMW」「Volvo」等これまでガソリン車に注力していた自動車メーカーもEV車種を積極的に投入するようになりました。
データで見る「燃料コスト比較」、1㎞あたりでいくらかかる?
それではEVは本当にお得なのでしょうか。EVというと「燃料代が安い」というイメージもありますが、本当にガソリン車と比べて安いのでしょうか。ここでは両者の燃料にかかるコストを比較していきます。
EVの電費について
まず、EVの電費(燃費)は一般的に「Wh/km」で表されます。Wh/kmとは「1km走行するために必要な電力量」のことであり、数値が小さいほど電費が良いと言えます。例えば日産が販売する国産EVの看板モデルである「リーフ」の電費は130Wh/km(WLTCモード)です。また軽自動車のEV「サクラ」では124Wh/km(WLTCモード)となり、コンパクトなだけありさらに良い値となっています。
1kmあたりの燃料コスト(日産・リーフ)
日産のEV「リーフ」の場合、1㎞あたりの燃料コストは約4.03円/kmとなります。
計算式:
31円/kWh(※1)÷約7.69km/kWh(※2)=約4.03円/km
※1 公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が公表する電気代の目安値(令和4年7月22日改訂)
※2 1㎞÷0.130kWh=約7.69km/kWh(日産リーフのカタログ電費はWLTCモードで130Wh/km)
1kmあたりの燃料コスト(マツダ・MAZDA3)
比較として、マツダのガソリン車「MAZDA3」の場合、1㎞あたりの燃料コストは約9.26円/kmとなります。
計算式:
154.7円/L(※1)÷16.7km/L(※2)=約9.26円/km
※1 資源エネルギー庁が公表するレギュラーガソリンの平均価格(2026年1月19日時点、暫定税率廃止後の価格)
※2 MAZDA3のカタログ燃費値(WLTCモードで16.7km/L ※ATモデル)
結果:1kmあたりのコストはEVのほうが安い
上記2台の1kmあたりの燃料コストを比較すると、リーフは約4.03円/km、MAZDA3は約9.26円/kmとなり、EVのリーフのほうが半分以上コストが安いことがわかります。なおこの2台は同じCセグメントサイズの乗用車であり、車格の近い車種であることから比較対象としています。
メンテナンス費・税金などのコストは?
自動車を保有すると、かかるコストは燃料だけではありません。メンテナンス費、税金等、他にもさまざまなコストが発生します。ここではそうした燃料以外のコストをEVとガソリン車で比較していきます。
メンテナンス費(オイル関連)
EVの場合、内燃機関を持たないため各種オイル類は使用せずオイル面ではメンテナンスフリーです。一方ガソリン車の場合、エンジンオイル、ATオイル(ミッションオイル)等の定期的な交換が必要になります。さらにEVでは、エンジンに関連する動力パーツの修理・交換が発生しないことも安上がりのポイントです。
メンテナンス費(バッテリー)
EV特有のコストとして、走行のために使用する大型の駆動バッテリーの交換費用が発生します。駆動バッテリーは消耗品となり、8年または16万km程度(メーカーによる)を目安に交換が必要になります。価格は40万円台後半~100万円となり高額です。一方ガソリン車ではこうした駆動バッテリーは搭載しないため、コストは0円です。
自動車税
EV:
新規登録翌年度に限り、グリーン化特例により概ね75%の軽減が適用される(制度内容は年度ごとに見直し)
ガソリン車:
排気量による(例:1998㏄のMAZDA3の場合、自動車税は年額3万9500円)
自動車税は排気量に応じて決まりますが、EVの場合は最小区分の排気量1000㏄以下とみなされるため、年額は最も安い区分となる2万5000円となります。ガソリン車の場合は搭載するエンジンの排気量に準じる形となるため、高級セダンやスポーツカーなど排気量の大きいエンジンを積んでいるモデルほど高額となります。
自動車重量税
EV:
新規登録翌年度に限り、グリーン化特例により概ね75%の軽減が適用される(制度内容は年度ごとに見直し)
ガソリン車:
車の重量0.5トンに対して4100円。ただしハイブリッド車など一部の環境配慮車種はエコカー減税を受けられる(25%~最大100%免税)
自動車重量税は、車の重量0.5トン毎に発生する税金です。しかしEVの場合は車重関係なく、どの車種であってもエコカー減税の100%免税対象となるため支払いは0円となります(5年間まで)。なおガソリン車であってもエコカー減税の対象となる車種がありますが(詳細は日本自動車工業会の一覧を参照)、エコカー減税の対象であっても減税の優遇額はEVに比べると少なくなるのが一般的です。
EVは購入コストが高いことがネック、補助金との関係は?
EVは良いことばかりではなく、購入コスト(車両価格)が高いという欠点もあります。ただしその代わりに手厚い「補助金制度」が用意されていることも覚えておきましょう。
EVは購入コストが高い
EVの車両価格はガソリン車に比べると高額です。例えば日産のEV「リーフ」の新車価格は518万8700円~(2026年1月時点)です。一方、リーフと同じCセグメントサイズの国産ガソリン車の新車価格は250万円~350万円程度が相場であるため、ガソリン車よりもEVのほうが1.5倍~2倍近く高い水準となっています。
その分、補助金も手厚い
EVの補助金には国の補助金である「CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)」と自治体の補助金の2つが用意されています。対象のEV車種を購入するとこの2つの補助金を利用でき、購入にかかる負担を減らすことができます。
CEV補助金:
国が用意する補助金。最大130万円まで補助(2026年1月1日以降)。例として日産リーフは129万円の補助金が設定されている。補助金額は車種によって異なり、詳細は次世代自動車振興センターのサイトを参照。
自治体の補助金:
お住まいの自治体が用意する補助金。自治体によって金額や対象条件が異なる。例として東京都でEVを購入すると最大60万円補助される(充電設備や太陽光発電システム等を設置するとさらに最大で30万円追加補助)。
例えば日産リーフであれば、新車価格は約518万円となりますが、CEV補助金が129万円貰え、さらに東京都に住んでいれば最大で60万円の自治体補助金が貰えるため、差し引くと実質負担額は約329万円まで抑えられることになるのです。なおEV補助金制度の対象や補助金額の内容は毎年変動するため、最新の情報をよくチェックしておくことが大切です。
どんな人ならEVが得か/ガソリン車が得か
EVは人を選ぶ車でもあるため、すぐに乗り換えた方が良い人もいれば、これまで通りガソリン車に乗っていた方が良いケースもあります。ここではEVに乗って得する人、ガソリン車に乗って得する人のタイプをまとめてみました。

EVに乗って得するタイプの人
EVは電費(燃費)が良いことが強みであるため、年に1万キロ以上走り、車にたくさん乗る人が向いています。また生活圏で日常的に充電する必要があるため、自宅や駐車場に充電設備がある人(もしくは設置できる人)がEV向きです。
EVは自動車重量税が何年もの間減税されるため、すぐに乗り換えるのではなく5年10年と長く乗る人の方が税金の恩恵を十分に受けられます。エンジンオイルやATオイル等の消耗品代も掛からないため、この点も長く乗るほどその恩恵が積み重なっていくことになります。
なおEVは購入時の補助金が大きな支えとなりますが、支給額や条件は車種や自治体によっても異なります。購入するEV車種ではどの程度の補助を受けられるかもチェックポイントです。
ガソリン車に乗って得するタイプの人
自宅に充電設備がない人、郊外などで生活圏に充電施設が少ない人の場合、充電のため遠く離れた充電施設に移動しなければならず、余計な燃料コストが発生してしまいます。時間的にも無駄になるので、そうした環境であれば無理にEVに乗り換えずこれまで通りガソリン車を使用した方がお得と言えることもあるのです。
またEVの場合、補助金があるとはいえガソリン車に比べると初期費用(車両購入費)は高額になってしまうケースが多いです。昨今は物価高ではあるものの、ガソリン車であればまだまだ車両価格200万円以下、初期費用は数十万円程度で購入できる安価な車種もありますので、初期費用を抑えたい人はガソリン車を選んでみるのも手です。
さらにガソリン車は、EVのように高額な駆動バッテリー交換費用が発生しません。EVの場合は長く乗ると駆動バッテリー交換のため何十万円もの交換費用が発生してしまうため、そうした多額の出費を避けたい人もガソリン車の方が向いているでしょう。
EVとガソリン車、この先将来の見通しは?
最後に、EVとガソリン車はこの先の未来どうなっていくのでしょう。将来的な見通しや取り巻く環境の今後の変化について触れていきます。
補助金は増額の傾向
国が用意するCEV補助金の上限額はこれまで90万円でしたが、令和8年(2026年)1月1日以降に車両登録する車種からは上限額が130万円まで拡大されました。CEV補助金は毎年変動するためこの先どうなっていくかは未知数ですが、国もEV化の流れを促進しているため、今後さらに補助金額が増額される可能性もあります。
充電インフラが急速に整備されはじめている
EVの充電インフラについて、経済産業省は現在の約3万口(うち急速充電9000口超)を、2030年までに約10倍の約30万口(急速充電)約3万口)にまで拡大する計画を立てています。急速充電器の出力も向上する見込みであり、高速道路での新規分は90kWh以上で実現される予定です。日本においてEVは充電インフラの少なさがネックとなっていましたが、今後はEVであってもガソリン車のようにどこでも充電できる未来が訪れるかもしれません。
ガソリン車は規制が進む恐れあり
2020年10月、政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言をしました。それに伴い、日本国内において乗用車は2035年に純エンジン車の販売を終了し、新車販売されるのはEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池自動車)、HEV(ハイブリッド車)に限定するという目標も設定しています。あくまで目標でありガソリン車が必ず消えるとは限らないものの、政府や自動車メーカーが一丸となりEV化を進めている状況にあるため、ガソリン車の置かれる立場は今後より厳しくなる可能性があります。
同時に直近では行き過ぎたEV化を懸念し「ガソリン車回帰」の兆候が世界中で見られるようにもなってきており、ガソリン車への規制を緩和する動きも見られるため、今後の動向が注目されています。
以上、EVとガソリン車のコスト等について比較を行いました。EVは燃料コストが安く、税金やメンテナンスにかかる費用が安いことも利点ですが、車両価格が高い、バッテリー交換費が高いなど欠点となる部分もあります。一長一短であり、取り巻く環境も刻々と変わりつつあるため、「本当に自分に合っているか」という点をよく考慮して選ぶことをおすすめします。
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