いわゆる“裏天神”と呼ばれる界隈に去年7月にオープンした「ロミカレー」。その直後から飲食関係の知人から「ロミカレー行った?」と聞かれること1回や2回ではなかった。なぜ周りのみんながお勧めするのか。ならばということで晩ごはんに伺った。
店主のロミさんこと永野浩美さんは不動産業界で長らく仕事をしていた女性。50歳を過ぎて一念発起してカレー業界に飛び込んだ人らしい。一般の会社員からカレー店主へ。聞くところによるとその決断をする大きなきっかけがあったとか。彼女に何があったのか、そしてどうしてカレー店主なのか、そのあたりをじっくりと聞いてみたいと思い取材させていただいた。
銀行員から不動産営業マンへ
1972年生まれのロミさん。福岡市内生まれで小さい頃は川遊びや木登りなど自然の中で遊ぶことが多く、どちらかと言えばおてんば娘だったらしい。地元の高校から短大を卒業後、福岡市内の銀行に就職した。
「銀行事務員として働いていたんですが、仕事のやりがいの点で自分に向いてないと思い退職してインテリアコーディーネーターの学校に入学したんです。その後は派遣社員として大手不動産会社の受付をしていました。数年後、その会社の上司が独立開業するという時に『うちで働かない?』って誘われたんです。何か面白そうと思い会社の立ち上げに参加しました」とのこと。
入社した不動産会社で最初は事務員をしていたが、社長から「不動産営業の仕事をしてみないか?」と提案されたという。やりがいがある仕事だと思ってうけることにしたそうだ。
「新築マンションの販売をする仕事だったんですが、どうせやるなら、と思って宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引士)の国家資格を独学で取ったんです」
不動産の専門学校にも行かずに独学で合格できたというロミさん。会社の周りにプロがいるので分からないことは教えてもらえたといえどもすごく頑張ったことだろう。
「けっこう真剣に勉強してました。マンションを契約する時に重要事項説明をするんですけど、それは宅地建物取引主任者しかできないんです。それも自分だけで出来れば給料もあがるので頑張りました(笑)」とあっけらかんのロミさん。
結局カレー店を始める51歳まで不動産会社で営業マンをしていたそうだ。
カレーに興味をもったのはいつ?
「最初にスパイスカレーにハマったのは『アフターグロー』さんでした。こんなカレーがあるんだと衝撃を受けたのを覚えてます」と、それからしばらく通ったという。
その後マンション販売で久留米に数カ月間いる頃に仕事場の近くにあった「ミカレー」に出会ったロミさん。
「店主のミカさんがすごく素敵な人で通うようになりました。そこでさらにカレーが好きになっていったので、こんなカレーを自宅でも作れたら良いなぁと思いミカさんのカレー教室に通うようになったんです。でもその頃はまさか自分が将来カレー店を開くなんて考えてはなかったです」という。
その後もマンション販売の仕事で数カ月から1年単位であちこちの現場で仕事をしたロミさん。毎回仕事場の近くでカレー店を見つけては通う生活をしていたそうだ。
人生を変えるきっかけになった病気
「49歳の時に癌になったんです。それから人生に対する考え方が変わりましたね。不動産の仕事は大好きだったし会社の人も好きだったんですが、このままずっと今の仕事をしてるだけで良いのだろうか、他にやりたいことはないのだろうかと考えるようになったんです」とロミさん。
土曜日の朝は出勤前に平尾のうどん店「粉やなぎ」の2階にある「NOB COFFEE」で朝コーヒーを楽しんでいた彼女だが、会社員だけではなく自営業の人など幅広いジャンルの人と出会うことでが刺激を受けたそうだ。
「自分で仕事をしてる人ってキラキラして見えたんです。やりたいことをして生きることって素敵。私も何かやりたい!!と思うようになりました」という。
何かやりたいこととは??
「そう思って浮かぶのはカレーしかありませんでした。久留米の『ミカレー』のミカさんに相談すると『良いね!!頑張って!!カレー作りのことだけでなく仕入れのことや経営のことなどなんでも教えるよ!!』と応援してくれたんです」
その頃には「ミカレー」のカレー教室ではロミさんは師範クラスになっていたという。病気のこと仕事のことカレーのこと周囲の友達のことなどいろんな状況がロミさんをカレー店開業の方向へと進む流れが出来ていたようだ。
「ミカレー」のミカさん(左)とロミさん(当時の写真)
カレー店開業に向けて
それからロミさんは会社に退職願を出したそうだ。引継ぎもあるので半年後に退職するということで社長にも理解してもらったという。21年間働いた不動産会社でありやり遂げた感はあっただろう。社長も応援するように送り出してくれたそうだ。
「その後、『ミカレー』のミカさんに、無給で良いので働かせてくださいとお願いしたんです。休日になると久留米まで通って『ミカレー』で修業させてもらいました。本当に何でも教えてもらっていくら感謝しても感謝しきれないです」と。
2024年3月に不動産会社を円満退職。自分の店舗を探し始めたが条件に合う物件がなかなか見つからなかったそうだ。そんな時に、「NOB COFFEE」の客友達と一緒に通っていた一階にある「粉やなぎ」の小栁さんから「店舗物件が見つかるまで、うちの定休日にここで営業してみたら良いんじゃない」と提案してもらったそうだ。
「毎週月曜日のお昼に間借りして営業させてもらいました。開業に向けての練習にもなるので少しずつ告知して知り合いに来てもらうところから始めました。最初は物件が見つかるまで、と話していたんですがなかなか見つからずに最終的にはなんと10カ月も営業させてもらったんです。小栁さんも頭が上がらない人です」と感謝の気持ちでいっぱいのようだ。
「粉やなぎ」間借り営業時代。左から2番目が小栁さん。一番右が「NOB COFFEE」のノブさん(当時の写真)
また、福岡カレー界のレジェンドでもある「薬院スパイス」の高田さんのカレー教室も足を運んでいたロミさん。
「高田さんの勧めもあり間借り営業中の11月から12月にかけて2週間インドにカレー研修にも行きました。あちらでの教室も高田さんが段取りしてくいただきました。あの経験もとてもためになりました。特に南インドへはまた行きたいくらいハマりましたね」とのこと。
インド研修中の写真
「ロミカレー」開業
そしていよいよ2025年1月、「ロミカレー」の物件が決まった。2025年7月「ロミカレー」開業。
「約半年間、建設業界勤務の友人の力を借りて店作りをしました。インテリアコーディネーターの勉強もしていたり、マンション営業でリフォームに関わって来ていたので自分の店を作るのは楽しかったです」
立派なお店が出来上がっているが、資金とか大変だったのではないだろうか。
「借金をするのが怖かったので自宅マンションを売ってその資金を使いました。おかげで今は賃貸マンションです。気持ちもお金もここの店に集中して頑張る覚悟です。
カレーメニューは週替りのカレーを3種類組み合わせた合い掛けプレートがメイン。単品カレーでの注文も出来る。ではどんなカレーを目指しているのだろうか。
「辛いカレーも辛くないカレーもありバランスを大事にしてます。ハーブとスパイスのことも以前から勉強していたので特に香りを大事にしたカレーに仕上げたいと思っています。大病を経験してからの開業なのでやはり身体に良いものを食べたい、食べてもらいたいという気持ちは一番強いですね。マラソンなどのラン友達や登山友達もたくさん来てくれるので特に健康についても考えますね。ライスはインド米と日本米を50%ずつブレンドしてます。あえて本格的になり過ぎないよう、みんなに食べやすくて美味しいと思ってもらえるようにあえてブレンド米にしてます。最近は菓子作りをしている友達にプリンやシフォンケーキも習っていて、スパイスを使ったカレー店ならではのスイーツも研究中です」とのこと。
副菜の野菜類は見た目も味もバランスよく一皿の完成度の高さを助けており、優しく食べやすいけど、しっかりスパイシーで香りを楽しめるちょうどよく本格的なインドカレーに仕上がっている。
将来について
実は10年前からマラソンに挑戦しているというロミさん。昔から走るのが得意だったのかと言えば、まったくの素人だったそうだ。
「最初は大濠公園1周の2kmも走れなかったんです。しかしその年には福岡マラソンに参加して42.195km完走しました。それから走ることにハマりましたね。トレイルランニングという山の中を長距離走る競技にも取り組みました。コロナ禍の東京マラソンにも参加しサブフォー(完走タイムが4時間を切ること)も達成したんです。さらに100kmマラソンなどにも参加して完走しました」
大濠公園1周も無理だった人がすごい・・・。
「今年5月には、過去一番の長距離の173kmの距離を走るレースに参加するんです。31時間の制限時間で走るのですが、100マイル以上のレースの完走者は“マイラー”と呼ばれます。今年の目標はマイラーになることです」と10年前に始めたマラソンにおいても取り組みが半端なく真剣だ。
ここまで話を聞くと不動産やインテリアの資格取得にマンション販売の営業にマラソンにと、とにかく頑張り屋さんのロミさんだ。これだ!!と思ったことにはとにかくとことん一生懸命取り組んできた彼女。そんなロミさんがすべてを投げ打って覚悟を決めたカレー店主の道。この世界でも最初は大濠公園1周から始まったと思うが、今ではしっかり一国一城の主だ。
「ランに例えるならカレー店オープンして半年、やっとフルマラソン完走というとこでしょうか。これからカレー店としても“マイラー”へとなれるよう末永く走り続けていきたいですね」と元気に気持ちを語るロミさん。
ロミさんの笑顔を見ているとそれが絶対出来るよねと思わせてくれる明るさでこちらも元気をもらえるパワーを感じる。裏天神のビルの3階、ちょっとした隠れ家感のある場所で美味しそうな香りと共に頑張り屋のロミさんが笑顔で迎えてくれます。是非お試しあれ。
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