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東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、3月2日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演。中東情勢の緊迫化が日本経済に影を落とすなか、私たちの生活に浸透した「中国発の格安越境通販」を巡る国際的な規制の動きと、その背景にある課題について解説しました。
2000円のジャンパーと中東情勢の意外な接点
イランの核開発をめぐり、アメリカとイスラエルがイランへの攻撃に踏み切り、最高指導者ハメネイ師が殺害されました。国際情勢は混迷を極め、週明けの株式市場、そして原油価格への影響は計り知れません。
日本は輸入する原油の9割を中東諸国から輸入していますが、石油価格の高騰は、ガソリン代だけでなく、私たちの身近な「衣類」にも直結します。化学繊維の原料は石油から精製されるナフサだからです。私がきょう着てきたジャンパーは、中国からの「越境通販」で2000円余りで購入した格安品です。こうした「安さ」を武器に世界を席巻する中国通販サイトが今、大きな転換期を迎えています。
「欧州の中国詣で」と貿易赤字のジレンマ
外交に目を向けると、ヨーロッパ首脳の「中国詣で」が相次いでいます。2月25日にはドイツのメルツ首相が北京で習近平国家主席と会談しました。昨年12月のフランス・マクロン大統領、1月のイギリス・スターマー首相に続く動きです。
トランプ政権の関税政策により対米輸出が鈍化するなか、ドイツにとって中国は最大の貿易相手国となりました。しかし、ドイツは同時に多額の貿易赤字も抱えています。その赤字の要因の一つとしてクローズアップされているのが、「シーイン(SHEIN)」や「テム(Temu)」に代表される中国発の格安通販です。
「シーイン」「テム」への厳しい視線と法的規制
欧州委員会(EUの執行機関)は、シーインに対し、デジタルサービス法に基づき、違法商品対策が適切かどうかの調査に入ると発表しました。
フランスでは過去、シーインが扱うアダルトグッズが「児童の性的虐待にあたるおそれがある」と認定された事例もあり、輸出側のチェック体制が厳しく問われています。私も「安いから」とテムでジャンパーを購入しましたが、スマホをいじれば広告が飛び込んでくる現状に、日米欧の主要国、それにアジアの近隣国は一斉に規制へと舵を切りました。
「免税措置」の撤廃:世界が進める公平性の確保
規制の最大の焦点は、これまで少額貨物に適用されてきた「関税の免除」です。たとえばEU加盟国ではこれまで150ユーロ(約2万8000円)以下の国際貨物の関税は無税でしたが、2月にこの免税措置の撤廃を正式に決定。2026年7月から実施されます。
また、アメリカはすでに昨年5月、800ドル(約12万円)未満の輸入品への関税免除措置を廃止しています。
理由は三つあります。一つは、免税範囲の郵便物が増えすぎて、適切な税関検査をするための負担が大きくなったため。ヨーロッパの場合この免税範囲の郵便物のなんと9割以上が中国からの輸入です。二つ目の理由として、これだけ増えたのなら、しっかり関税を徴収しよう、ということ。
そして三つ目は、市場の公平性です。免税で入ってくれば、その国やエリアの同じ産業がダメージを受けます。外交や軍事とは違う別の意味で、ここでも中国の存在が顕著になったための措置と考えられます。
日本も2028年から「消費税免除」を廃止へ
日本でも同様の動きが決定しました。現在の税制では「1梱包あたり1万円以下」なら関税と消費税が免除されていますが、2028年4月から、この少額輸入貨物への消費税免除が完全に廃止されます。
明らかに中国通販、少額輸入貨物を意識した措置ですが、欧米に続くこの決断は、消費者にとっては値上げとなる一方、国内産業との公平性を考えれば避けられない道だと言えるでしょう。
ただし、中東でのイラン攻撃による原油高は、物流コストを押し上げ、格安通販の価格にも跳ね返ります。免税廃止と原材料高のダブルパンチとなれば、私たちが享受してきた「中国発の安さ」は過去のものになるかもしれません。
国産品も輸入品も価格が上がるなか、消費者は何を基準に商品を選ぶのか。身近にある、これまで安価な商品も無関係ではなくなります。そういう意味でも、今回のイラン攻撃は、遠い世界の話ではないといえるでしょう。
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