もはや「特別な事情がある人」のための学校ではなくなっている「通信制高校」。N高校やトライ式高等学院などの名前を耳にする機会も増え、入学者数も例年増加しており、現実的で一般的な進路のひとつになりつつあります。しかし通信制高校は全日制高校と異なる部分も多々あるため、よく理解せずに進学してしまうと後悔するケースもあります。
そこで本記事では、通信制高校の仕組み、学び方、学費等についてわかりやすく解説します。
「高校=全日制が当たり前」という時代は変わりつつある
これまでの時代は全日制高校に入学し、月曜~金曜毎日学校に通学して学ぶ高校生活が一般的でした。そして「通信制高校」というと、不登校や退学した人など、特別な事情がある人の受け皿というイメージが定着しており、“当たり前”とは言い難い部分がありました。
しかし多様性が重んじられる時代となり、昨今は環境の自由さなどに惹かれ、通信制高校を敢えて選ぶ人も増えてきています。例えば「自分のペースで学びたい人」、「やりたいことと両立しながら学びたい人」、「スポーツや芸能活動などのプロ活動に専念したい人」などが通信制高校に通うケースも増えてきているのです。
入学者数も増加傾向
文部科学省が発表した学校基本調査(令和7年度)によれば、通信制高校の生徒数は10年連続で増加し、過去最多の30万5197人を記録しています(※1)。対して全日制・定時制の高校生の合計生徒数は287万3619人であるため、約10人に1人が通信制高校に通っている計算となります(※2)。こうした数値データを見ても、通信制高校が一般化してきている傾向が確認できます。
※1 学校調査・学校通信教育調査(高等学校)ー学校通信教育調査票ー157都道府県別生徒数より
※2 学校調査・学校通信教育調査(高等学校)ー学校調査票(高等学校 全日制・定時制)ー135学年別生徒数より
通信制高校とは?全日制との違い
通信制高校は、全日制高校と異なる部分もたくさんあります。ここでは両者の違いについて解説します。

1.毎日の登校が不要
全日制高校の場合、月曜~金曜の週5日間、毎日登校する必要があります。対して通信制高校は毎日登校する必要はなく、登校ペースは自分の好みに合わせて調整できます。学校にもよりますが、月に数回、もしくは年に数回登校すればよいという学校もあります。
ただし通信制高校の卒業要件に一定のスクーリング授業(対面授業)が含まれるため、まったく登校せずに卒業することはできず、通信制高校であってもある程度の登校が必要です。
2.留年がない
全日制高校の場合は「学年制」を採用し1年毎に成績や出席日数の進級条件が設けられているため、その年に成績不振や出席日数不足があると留年となることがあります。対して通信制高校は「単位制」であり、74単位以上の単位を取得し、かつ3年以上在籍すれば卒業できます。留年という概念がそもそもないため、自分のペースで学習していくことが可能なのです。ただし74単位を取得できないと3年で卒業できず、4年5年と長く在籍する人もいます。
3.入試で学力が問われないことが多い(筆記試験がないことが多い)
全日制高校の場合、入試で筆記試験(学力試験)があるのが一般的であり、偏差値の高い高校ほど筆記試験の難易度は上がります。対して通信制高校は、筆記試験は行わないことが多く書類選考や面接での入試となるのが一般的です。例えばKADOKAWA・ドワンゴが運営する「N高グループ」では、ネットコースとオンライン通学コースの入試は書類選考のみとしています。
通信制高校で「できること」
通信制高校に入学すると、どのような学び方ができ、どのような学校生活を送ることができるのでしょう。ここでは通信制高校で「できること」について解説します。
自宅での学習ができる
通信制高校では通学せず自宅での通信学習が可能です。従来は冊子やDVDなどが主流でしたが、最近はインターネット+タブレット端末を活用し映像授業を受ける方法が普及しています。好きな時間に学習することができ、一時停止や繰り返し再生も可能であるため、自分のペースで学びやすいことが大きな利点です。
キャンパスに出向き先生や同級生と交流できる
通信制高校というとずっと一人で学習する孤独なイメージもありますが、実際は人と交流する手段も多々用意されています。多くの通信制高校では全国各地にキャンパスを設置しており、基本的には自由にキャンパスに出向くことが可能です。キャンパスに出向き先生から対面サポートを受けたり、同級生と交流したりすることもでき、学園祭や体育祭などのイベントを豊富に用意している通信制高校も少なくありません。
また昨今はネット上で同級生同士が気楽にコミュニケーションできる環境が整備されてきているため、通信制高校の学生であっても友達との関係を作りやすいのです。
学業以外のことにも専念できる
通信制高校は通学が不要でかつ単位制でもあるため、自分の時間が作りやすく学業以外のことにも専念しやすいことが大きな利点です。例えば「働きながら高校に通う」、「芸能活動やクリエイター活動をしながら高校に通う」、「好きな場所に住んで学習する」といったライフスタイルも実現しやすくなるため、他にやりたいことがある人にとっては恩恵を得やすいでしょう。
「高校卒業資格」を得られる
通信制高校は全日制高校と同様に卒業すると学校教育法が定める「高校卒業資格(高卒)」を得られます。そのため働きながら高卒資格を得たい人などが通信制高校を利用するケースも少なくありません。
気になる費用(学費)相場は?
通信制高校の学費は、全日制高校に比べ安くなるのが一般的です。目安として年間の学費は約10万円~20万円と言われています。例としてN高等学校が公表する学費モデルでは、年間の学費は7万円前後、3年間の実質負担額は21万1000円(普通科、就学支援金の支給あり、※参考PDF)と計算されています。
ただし「サポート校」の学費を含めると高額に
通信制高校は自分のペースで学習するが故に、学力が上手く伸びなかったり、卒業自体を諦めてしまったりするケースも珍しくありません。そうした通信制高校生を対象に、学業とメンタルの両面からサポートする予備校のような学校があり「サポート校」と呼ばれています。通信制高校の入学と同時にサポート校に入学する学生も多いです。
このサポート校の学費は私立の全日制高校と同程度と言われており、年間学費は約50万円~60万円が目安となります。またサポート校の学費とは別に通信制高校の学費が発生しますので(年間約10万円~20万円程度)、両校の学費を合算した額が総支払費用となります。
卒業後の進路はどうなる?
「通信制高校を卒業するとその後はどうなるの?」「大学には進学できるの?」という点は気になるところですが、昨今は通信制高校を卒業後に大学に進学する人が増えている状況です。学校基本調査(令和7年度)によれば、卒業者数9万1809人のうち約28%に当たる2万6301人が大学へ進学している状況となっており、通信制高校の大学進学率は例年上昇中です。(※1)
ただし全日制高校の大学進学率は令和7年段階で59.49%と言われているため、全日制と比べると進学率はまだまだ低い状況であることは否めません。また通信制高校に通う生徒の中には、もともとクリエイター志望、スポーツ選手志望、独立志望などの人も多いため、学力はあっても敢えて大学へ進学しない学生も一定数います。
※1 卒業後の状況調査ー卒業後の状況調査票(高等学校 通信制)ー297状況別卒業者数より
サポート校を使うと進学率は高まる
単に通信制高校に通うだけでなく、サポート校を利用している人であれば進学率はさらに高くなる傾向です。『家庭教師のトライ』が運営するサポート校「トライ式高等学院」では、自校の大学進学率を71.1%と公表しており、東京大学、 京都大学、早稲田大学、 慶應義塾大学などの難関大学へ進学している学生も少なくないようです。
通信制高校が向いているのはどんな人?
通信制高校は良くも悪くも向き不向きが分かれる環境です。ここでは通信制高校にはどんな人が向いているか、性格的特徴を解説します。
自分のペースで学びたい人
「周りと一緒のペースでは頭に入りにくい」「自分のスピードで学んでいきたい」「毎日決まった時間に起きて学校に行くのが苦手」といった人は、マイペースで学べる通信制高校が向いています。
集団行動が苦手な人
「集団で一緒に何かをするのが苦手」「常に周囲に人がいると疲れてしまう」「一人の方が気楽で勉強にも集中できる」というタイプの人も通信制高校が向いています。通信制高校では基本的には自宅などで一人で学習することになるため、人間関係の気疲れなどに悩まされず、気が散ることなく勉強に取り組めます。
他にやりたいことがある人
「歌手を目指していて歌やダンスの練習もしたい」「スポーツ選手になるためにトレーニングもしたい」「すでにクリエイターとして活動しており仕事と学業を両立したい」など、他にやりたいことがある人は、毎日通学する必要がなくスケジューリングの自由が効きやすい通信制高校が向いています。
自己管理ができる人
通信制高校では自分のペースに合わせて学習できる分、自己管理能力が求められます。「強制されないと勉強できない」「自由な環境だと好きなことばかりしてしまう」といったタイプの人が通信制高校に通うと危ない部分もあります。自己管理ができずに実際に退学してしまう人や卒業に何年もかかってしまう人もいるのです。
通信制高校の注目度は年々高まっており、かつてのように不登校や退学した人だけでなく、さまざまなタイプの人がそれぞれの目的を持ち利用する手段となってきています。向き不向きもありますが人によっては最適な学習の場ともなり得るため、選択肢の一つとして考えておくと良いかもしれません。
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