目次
4月から新年度を迎え、自転車などの交通違反に対する取り締まりが厳格化される。青切符の導入で反則金が科されるケースも増える中、取り締まる警察側でも前代未聞の不祥事が発覚した。3月13日放送のRKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演した、元サンデー毎日編集長・潟永修一郎さんが、取り締まりのあり方と4月からの新ルールについてコメントした。
神奈川県警で発覚した「不正取り締まり」の衝撃
4月からの新ルールを説明する前に、交通違反を取り締まる側の問題についても触れさせてください。神奈川県警で2月に発覚した、不正取り締まりの事案です。
きっかけは、おととしの夏、速度超過で違反切符を切られた人から「反則切符に書かれた違反内容が、実際と違う」と、県警に問い合わせがあったことでした。この調査の過程で、取り締まった覆面パトカーのドライブレコーダーを調べると、前の車を追う時、同じ速度で追尾していないのに違反切符を切るなど、不正な方法で取り締まっていた例が発覚しました。
このため、所属する第2交通機動隊全体の調査に乗り出したところ、既にドラレコの記録が残っておらず正しい方法だったか確認できないものも含め、不正が疑われる取り締まりが2022年から24年の3年間だけで実におよそ2700件にのぼり、そのすべての違反取り消しと反則金計およそ3500万円の還付という、前代未聞の事態に発展しました。
第2交通機動隊にはおよそ100人の隊員がいますが、不正な取り締まりを主導したとされる巡査部長が懲戒免職になるなど、処分対象者は退職者も含めて計24人。このうち7人は、反則切符に虚偽の内容を書いたり、現場に行かずに実況見分調書を作ったりしたなどとして、虚偽有印公文書作成などの疑いで書類送検されました。
その余波は今も続いているようです。違反取り消しの対象者は全国にわたり、神奈川県警は通知文を送ったうえで、個別に電話で詳しく説明しているといいます。さらに専用電話も設けて24時間体制で相談を受け付けているそうですが、中には免許取り消しや免停で実害をこうむった人もいますし、免許更新で「優良ドライバー」の資格を失って保険料が上がった人もいます。
県警はこうしたケースも「適切に対応する」としていますが、最長で4年前の違反を今さら取り消されても、「あぁ良かった」とはなりませんよね。
さらに、ことは神奈川だけにとどまりません。当然ですが、一般市民は「どこもやってるんじゃないか?」と疑いますよね。警察庁もそこは深刻に受け止めていて、楠芳伸長官は「交通違反取り締まりに対する国民の信頼を損ないかねない重大な事案だ」と述べ、対応と再発防止に乗り出しました。
具体的には、捜査書類を点検する指導チームを警察庁と各都道府県警に設けるほか、違反者から「ドラレコの映像を見せてほしい」と言われたら応じるなど、不正のチェック体制強化や、取り締まりの透明性を高める施策を、最初の報道から1週間足らずで全国に通達しました。異例の速さですし、危機感の強さを感じます。
目的は事故抑止か、件数稼ぎか?「ノルマ」の弊害
では、そもそも交通違反取り締まりは何のために行われるのか? 楠長官は「交通事故抑止に資する」=つまり、悲惨な交通事故を防ぐ目的だと述べていますが、現実は「取り締まること自体」が目的化していなかったか、もっと有り体に言うと、件数を稼ぐことが目的化していなかったか。この点でも、今回の事案は問題を浮かび上がらせました。「ノルマ」の問題です。
実際にはノルマではないようですが、神奈川県警は不正が発覚した2024年まで、1年間の取り締まり件数について、過去の実績などをもとに「水準」を定めて、各警察署や交通機動隊に通知していました。これは全国的に神奈川だけのようですが、「誤解を招く」つまりノルマと受け取られかねないとして、去年から廃止しました。
結果として、神奈川県警の、去年の交通違反検挙件数は前年から10万件以上減っていますから、それまでは無理があったと見られても仕方ないでしょう。
どうかと思う一例を挙げると、神奈川県内に住む知人は4年前、横断歩道で一時停止しなかったとして、歩行者妨害で違反切符を切られました。ただ、知人は歩行者に気付いていったんは停車したんです。ところがその人は「行って、行って」と手で合図し、「いえ、どうぞ」と声もかけましたが、さらに「行って」と合図するので発車したら、警察官が出てきて、一部始終を見ていただろうに反則切符を切ったそうです。ちょっと、それはないと思いませんか?
また、これは私が以前よく目撃した、東京都内の幹線道路に架かる片道3車線の橋のケースです。橋の上は車線変更禁止ですが、渡った先の交差点で、一番左側は左折レーンになっています。橋は中央部が少し高いので見通しが悪く、知らずに左車線を走っていた直進車が車線変更すると、待ち構えた警察官が次から次に切符を切っていました。
また、うちの近所で朝夕だけ一方通行になる坂道も同様で、規制に気づかず坂を上ると、はいピピッです。確かにどちらも、標識を見落とすほうが悪いんですよ。それは分かっています。でも事故防止を言うなら、橋や坂道の手前で注意してくれるほうが「事故防止に資する」んじゃないか、と思ってしまいます。まぁ一罰百戒なのかもしれませんが…。まぁ、ドライバーの愚痴に聞こえたらごめんなさい。
4月から自転車も「青切符」対象に。反則金はいくら?
私は、警察庁が「交通違反取り締まりに対する信頼回復」のために対策を通知した今年、何か変わるのかは注視しています。そのうえで、来月4月からの自転車などの取り締まり強化の話です。
まず、対象となる乗り物です。自転車は電動アシストや三輪のものも含めて、すべてと思った方がいいです。その他は、主に電動キックボードやモペットと呼ばれるペダル付き原動機付自転車などです。
では、どう変わるのか。簡単に言うと、これまで警告や指導で済んでいたような違反でも、運転者が16歳以上であれば交通違反の青切符が切られ、反則金が徴収されるようになります。
どんなケースかと言うと、例えば「ながらスマホ」=走行中にスマホを持って通話や操作したりすると、反則金は1万2000円▽信号無視は6000円▽一時停止違反は5000円▽逆走(右側走行)や歩道で人の通行を妨げたりすると6000円--などです。車と違って、運転免許を持っていても、点数を引かれることはありませんが、3年以内に2回以上違反を繰り返すと、安全講習の受講が義務付けられます。こちらは14歳以上が対象なので、中学生でも呼び出されることがあります。
このうち「ながらスマホ」は去年11月の改正で既に厳罰化されていて、青切符の行為でも、それによって事故を起こしたり、歩行者に危険を生じさせたりすると、赤切符(刑事罰)の対象になり、最悪、懲役刑もあり得ます。
また、飲酒に関しても、以前は酒酔い運転だけだった赤切符の対象が、同じく去年11月から酒気帯び運転にも拡大されています。酒酔いは、量に関わらず「アルコールの影響で正常な運転ができない」と判断された場合ですが、酒気帯びは呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上なら、いくら「酔ってない」と言っても即アウト。刑事罰だけでなく、点数に関係なく、運転免許を停止されることもあります。
「車なら絶対しないこと」を自転車だと軽く考えてしまう
まぁ確かに、歩いていても、車を運転していても、ながらスマホや飛び出しとかでぶつかられそうになったり、ヒヤッとしたりすることは結構ありますから、罰則強化はやむを得ないというか、当然という気がしますが、問題は「自転車には免許制度がないので、そもそも道路交通法をよく知らない運転者が多い」ことと、「免許を持っていても、車の運転では絶対しないことを、自転車だと軽く考えてしまう」ことだと思います。
私も40年来のドライバーですが、今言ったことがブーメランのように自分に返ってきています。例えば、酒気帯び運転です。朝、駅まで自転車で行って、予定外の飲み会が入った時など、正直、酔っていなければ、かつては自転車に乗って帰ることもありました。が、息子に厳しく注意されて、今は押して歩いています。ごめんなさい。
一時停止も、車の時ほどは気を付けていませんでしたが、ちゃんと止まる癖を付けようと思っています。一方、自分もそうなのに人のことを言って恐縮ですが、標識の意味を知らないのか、一時停止の道からビュンと出てくる自転車に急ブレーキを踏んだことは何度もありますし、渋滞中に横をすり抜けようとした自転車にドアを傷つけられて、そのまま逃げられたこともありました。
妻は、自転車で左側走行していたのに、右側通行してきた高齢女性の自転車と交差点でぶつかりそうになり、「謝りなさい!」と怒鳴られたことがあったそうです。
さて、4月以降、間違いなく自転車や電動キックボードなどの取り締まりは強化されます。人通りの多い歩道や交差点などには多くの警察官を配置し、ながらスマホや逆走などに目を光らせるでしょうし、自転車での帰宅者が多い駅周辺などでは、飲酒検問も行われると思います。切符を切られるかどうか以前に、違反は危険行為であることを自覚して気を引き締めなければ、と私も思っています。
取り締まりは「数から質へ」転換できるか
最後に、つい先日も富山県で暴走車が猛スピードで信号を無視して軽乗用車にぶつかり、親子2人が亡くなる痛ましい事故がありました。こうした悪質な事故防止や捜査に従事し、適正な職務遂行に努めている方々に敬意を表しつつ、「取り締まりの目的は件数を稼ぐことではなく、事故防止である」という通達の趣旨は、私も忘れずにおきます。
数から質へ――前代未聞の不祥事が、良い意味で交通取締りのターニングポイントになることを、願っています。
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう





















