城南線から浄水通り側に少し入った薬院の静かな住宅街。周囲には飲食店も少ないマンションの1階で、ひっそりと営業しているのが「金のわらじ」です。女将・白井三希子さんの実家は、百年以上の歴史を持つ老舗料亭の「新三浦」。物心ついた頃から慣れ親しんできた「水だき」を、女性らしい家庭的なサービスで提供しています。
基本のメニューはシンプルに単品の「水だき」(3,300円)と「水だきコース」(4,500円)のみ。コースで注文すると、三希子さん手づくりの惣菜盛り合わせ5品と肝煮、手羽先の唐揚げが出てきます。これらをつまみにビールか焼酎でも飲みながら、主役の鍋を待つことにしましょう。
「新三浦」といえば白濁スープの元祖といわれ、「私が子どもの頃は店の敷地内に家があり、厨房にしょっちゅう出入りしていました」という三希子さん。祖父や父が毎日スープを仕込むの見ているうちに、その作り方を覚えるともなく覚えたといいいます。今では生後3ヵ月以内の新鮮な丸鶏を毎日早朝から5~6時間以上も炊きあげ、伝統の白濁スープをとっています。
あらかじめ火を通して丁寧にアクをすくった鍋の中身は、骨付きのモモ肉がメインです。あらためてコンロに乗せて火を点けた後は、グツグツするまで煮込んだスープを一杯。伝統的なスープのとり方は実家と同じといいますが、マイルドで口あたりのいい飲み口は、どこか女性らしいやさしさを感じます。添えられた塩は全国各地の天然塩をブレンドしたもので、ひとつまみ入れるとさらにスープの旨味を引き立ててくれます。
スープを飲んだ後は、自分のペースで食べ進めることができます。これって結構大事なポイントで、仲居さんやスタッフが付いて調理してくれるフルサービスはもちろんありがたいのですが、筆者のような酒飲みは自分のペースで気ままに飲み食いしたいということもあるんですよね。というわけでチビチビと酒を飲みながら、ほろ酔い加減になったところで一気に野菜や豆腐を投入し、フィニッシュに向けて煮込んでいきました。
具材がほどよく煮えたところで小皿にとり、自家製のポン酢でいただきます。柑橘には橙、醤油は熊本産のヤマア醤油を使っていて、サッパリとした酸味にコクのある旨味が鶏肉、野菜の味にベストマッチ。もう少し食べたいというときは追加で「つくね」(800円)を注文することもできるので、そちらもオススメです。
シメのご飯ものは残ったスープを一旦厨房に引き取って濾し、ご飯に卵を落とした雑炊に仕たててくれます。黄身の色が濃い卵は女将の親戚が育てているという大分県産で、まろやかな甘みのある味に仕上がっていました。鶏肉と野菜のエキスが凝縮され、五臓六腑に染みわたります。
数年前に自慢の鶏スープをベースに豆乳などを加えた「博多水だきカレー」を商品化してレトルトパックで販売中。現在は夜だけの営業ですが、近々このカレーをメインにしたランチ営業を準備しているということなので、楽しみに待ちたいと思います。
ジャンル:郷土料理、鍋
住所:福岡市中央区薬院4-18-26サンビューハイツ浄水1F
電話番号:092-524-0461
営業時間:17:00~22:30
定休日:水曜
席数:カウンター4席、掘りごたつ16席
個室:なし
メニュー:水だき3,300円(2名より)、水だきコース4,500円(2名より)、つくね800円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40030794/
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