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九州を代表するフレンチ「Goh」が西中洲で過ごした20年【最終回】

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10月17日、福岡を代表するレストラン、西中洲の「La Maison de la Nature Goh」(以下「Goh」)が20周年、つまり人にたとえると成人すると同時に生誕の地、西中洲での営業を終了しました。もちろんこれは前向きな閉幕で、12月1日にはキャナルシティ博多前で開業する「010 BUILDING」で、新たなチャレンジが始まります。
2002年に18席の小さな店として誕生してから、成人するとともにその地を離れとてつもない飛躍を遂げるまでの20年について福山剛シェフに話を聞きました。


「アジアのベストレストラン50」にランクイン

弓削(以下「弓」) 2015年に「quenelle」を閉めて、「Goh」を広くしたんですね。ところで、やっぱり「アジアのベストレストラン50」に選ばれたのは大きかったですよね。旗からみてても、ここからの「Goh」の進化はすごかったです。
福山(以下「福」) そうですね。2016年に初めて31位にランクインして、翌年は落ちたんですよ。そして2018年から今まではおかげさまで毎年受賞させてもらってます。
 えっ、一度落ちたんですか。
 そうなんです。
 それは知らなかった。一度入ってからはずっと入ってたと思ってました。受賞後に変わったことって何ですか。
 まず、お客さんが変わりました。それまではほとんど福岡のお客さんでしたが、そこに海外も含めて幅広いエリアの美食家といわれるようなお客さんが増えました。
これまでは福岡の人に向けて料理を考えていましたが、新たな層が増えてきたことにより、その層の人たちが満足することもしないといけなくなりました。
そのバランスをどれくらいにするのかが難しかったですね。新しいこともしないといけないけれど、それをやりすぎると福岡のこれまでのお客さんが離れてしまいそうで。
それに、年々いろんな人と出会うことも増えました。そうすると、連絡もたくさん来るし、連絡しないといけない人も増えます。イベントなどに呼ばれることも増えましたから、どうしても多忙になって、これまでやれていたことがおろそかになってしまいそうとか、これまで支えてきてくれた方々に不義理をしてしまいそうとか、そういうことを考えたりもしました。

Gohシェフ仲間 「Goh」ラストデーパーティより

 受賞以降、全国からシェフが来ることも増えましたよね。
 それはほんとにそうですね。
 これって、福岡の飲食業界にとってすごい貢献度だと思いますよ。福山さんに会いに来るわけですけど、当然、他の店にも行くし、福山くんを介して日本のトップシェフと福岡の料理人に交流が生まれたわけですから。
 トップシェフとのコラボディナーなどもやることが増えましたが、ぼくは元々コラボディナーには後ろ向きだったんです。1回だけだから料理のクオリティも下がるし、コストがかかるから参加費も高くなるし、なにより自分の作ってるところ、そして料理を他の料理人に見られるのも恥ずかしくて嫌だったんです。でも、いざやってみると、自分の料理、自分の店のいいところと悪いところが客観的にみえてきて、取り入れられることがたくさんあったんです。それによってお店のレベルが上がっていき、お客さんにそれを還元できることに気づきました。スタッフたちも得るものが大きいですしね。評判のレストランで食事するだけじゃわからないことが、コラボイベントなどで一緒にやるとわかるんです。

Gohガガン氏 ガガン・アナンドシェフ/「Goh」ラストデーパーティより

 その後、今の店を一旦閉めて、新たな店をガガン・アナンドさんと一緒にやろうという経緯はどういうものだったんですか。
 バンコクにあった彼の店「ガガン」は2015年から4年連続で「アジアのベストレストラン50」の第1位を獲得したのですが、初めて会ったのはその前年の2014年でした。「Goh」に時々来てくださっていた上海在住のお客様が、上海の三つ星レストラン「Ultraviolet by Paul Pairet」に招待してくださり、そのときガガンも来ていたんです。それが彼との最初の出会いですね。そして翌年2015年にその上海のお客様の誕生パーティを「Goh」でやることになったのですが、そのときサプライズでガガンと一緒に料理を作ろうという話になったんです。それがコラボイベント「GohGan」の始まりです。その後2016年の秋に「GohGan」を京都でやったときに、「菊乃井」さんで食事しながら、いつか一緒に店をやりたいねという話をしたのが最初です。
 その後、あちこち場所を探してましたよね。
 そうなんです。郊外とかホテル内とかいろいろ条件を聞いたり見に行ったりしましたが、縁があって、「Zero-Ten」さんから今回のビルの話をいただいて、今に至るという感じですね。
 1階がガガンさんと一緒にやる「GohGan」で、3階は「Goh」。2階は「Zero-Ten」さんが運営するエンタテイメントレストランで料理を「GohGan」が提供するということですか。
 そうですね。1階はアラカルトで気軽にワイワイと食事できる新しいファインダイニングの形を作りたいんです。もちろん料理はガガンと考えた新しい料理、とびきりおいしい料理でお迎えしますよ。1・2階は12月1日、3階は1月にオープンしますので、ぜひ遊びに来てください。
弓 成人した「Goh」が、これからどんな成長をしていくのが楽しみです。きょうは長い時間ありがとうございました。

以上。【3部作の最終編】

弓削聞平(ゆげ ぶんぺい) UMAGA編集長
福岡在住フリーエディター。当時「シティ情報ふくおか」を発行していたプランニング秀巧社を経て、2001 年より福岡とグルメをテーマにフリーエディターとして活動。福岡のグルメ雑誌「epi」「ソワニエ」の元編集長。 個人事務所「聞平堂」では「ぐる~り糸島」「福岡 気軽で楽しい町の寿司屋」「私、この店、大好きなんです。」等を出版。RKBラジオ「オトナビゲーション」内「本日のユゲ押し」に出演中。インスタID:bunpei_yuge

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