PageTopButton

ジョジョ~そのアニメの軌跡~ RKBアナウンサー 冨士原圭希

「なんだ、これはッ!」
初めて『ジョジョの奇妙な冒険』の原作を読んだとき、思わず漏れた言葉だ。
主張する擬音、演劇的な台詞回し、ギリシア彫刻的ポーズ…。漫画を超えた「何か」に出会った感じがした。人生初のなんだこれは体験。岡本太郎よろしく、すぐに理解できないものには、強烈な引力がある。なんだこれはと連呼しながら、気づけば、ジョジョの世界観にどっぷり浸かっていた。チェリーは舌の上で転がすようになったし、モナリザの手は直視できなくなった。

そして、10年前。『ジョジョ』アニメ化の報が入った。
正直に言うと、不安の方が大きかった。ジョジョの表現は漫画ならではのものが多く、再現が難しいと思ったからだ。
そんな中、ジョジョ第1話が放送される。
開口一番もれた言葉は「なんだ、これはッ!!」

決して否定の意味ではない。逆だ。ジョジョの構成要素が、見事なまでに落としこまれていた。言っている意味がわからないと思うが、ジョジョぽいね、ではなく、それはたしかに、『ジョジョ』だった。
例えば、擬音。「メメタァ」「ゴゴゴゴ」「ズキュゥゥゥン」。個性的な音表現の数々は、ジョジョを代表する要素の一つだが、アニメではただの音声として処理されてしまうのではないか、そう思っていた。
あえて言う、そんな心配は「無駄」だった。
アニメ・ジョジョは、擬音を字体もそのままに、完全再現してきた。擬音だけではない。構図、デザイン、台詞回しに至るまで、全て完全再現。シビれた。そんな制作者の姿勢に憧れすら抱いた。

それから10年間。アニメ・ジョジョは各部の要素を余すことなく再現し、私たちを沸かせてきた。
一方で、募る疑問。
「どうやって作ってるんだ、コレはッ!?」
ジョジョを完全再現するための、制作現場の熱量、工夫はいかほどのものか。高いクオリティが維持されればされるほど、その内情を知りたくなった。
その疑問に答える展示会が、今博多阪急で催されている。
「『ジョジョの奇妙な冒険』 アニメ10周年記念展」だ。

ジョジョ展、ではなくジョジョのアニメ展。
アナウンサーという職権を乱用し、取材という形で真っ先に展示場へ向かう。
ゲートをくぐって叫んだ。「なんだ、これはッ!!!」

そこに展示されていたのは、私の疑問に答える、制作工程の全てだった。
ファントムブラッドからストーンオーシャンまで分けられたブースに、原画、絵コンテ、資料、制作コメントなどがこれでもかと並んでいる。書き込みの量、資料の細かさ、そしてほとばしるジョジョ愛…。
ジョジョをアニメ化する、その「覚悟」が、言葉でなく心で理解できた。
その一部を紹介しよう。

「作画の濃さ参考」に注目。ジョジョといえば濃い作画。それを、どこまで濃くするか、逆に薄くするかを繊細に調節しているのだ。アニメとして無理のない範囲で表現しながら、ここぞというところで描ききるバランス感、その苦心がよく表れている。

杜王町の地図が、緻密に作られている。それぞれの位置関係に驚かされるだけでなく、原作を元にして整合性を持たせ、リアルな町として浮かび上がってくる。「ダイヤモンドは砕けない」は杜王町が主人公と言っても過言ではない。アニメスタッフのリスペクトが感じられる。

『ジョジョ』の原作はあまりにも偉大だ。今回の特別展を通して再認識できた。数多の展示物が示していること、それは、荒木飛呂彦先生が作り上げた世界観をアニメ化するために、監督、演出、脚本、アニメーター、演者といった多くの人々が一丸となって闘っていたことだ。
そう、『ジョジョ』のアニメとは、荒木飛呂彦先生という1人の天才に挑む人間讃歌なのだ。
古参のジョジョファン、アニメからのファンはもちろん、ジョジョを知らない人でも、その熱量に圧倒されるはず。
その奇妙な軌跡を、この展示会で是非感じていただきたい。

え?明日行く?いやいや。明日って、いまさッ!

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

radiko 防災ムービー「あなたのスマホを、防災ラジオに。」