人気の観光地であり、親日家が多いことでも知られる台湾。実際、住民の温かい人柄や素敵な景観、そしてうまい料理の虜になる日本人は数知れません。
「亜洲界世」を営む濵﨑洋平さんも、そうした“台湾フリーク”の一人。現地で惚れこんだ屋台や大衆食堂の味を、中央区港から美味しく発信する料理人です。
この店のルーツは、東区馬出にあった同名の飲食店。当初は和食主体の店でしたが、当時の店主が「台湾料理を出そう」と発案したことで、料理担当だった濵﨑さんは食べ歩きのため何度も台湾に赴きます。
そこで出逢った食文化に感動し、現地の味の再現に努力しますが、やがて馬出の店は閉店。そこで濵﨑さんは屋号を引き継ぎ、2007年に奥様と「亜洲界世」を再始動させたのです。
「派手ではないですが、地元の食材を上手に生かし、庶民の知恵も盛りこんで……そんな飾らない“普通のごはん”という感じが台湾料理の良さなんですよね」と、濵﨑さんが優しげな目を細めました。
さて、台湾の装飾品が彩る店内はまさに気さくな食堂そのもの。「料理を楽しみながら、台湾旅行の気分になってもらえたら」と濵﨑さん。オープン当初は「ここが台湾にまつわる情報交換や交流の場になれば」との思いもあったそうです。
手書きの料理名が並ぶカウンター周りは、ことさら“屋台色”が際だつ一画。僕も以前旅した台湾の景色を思い出し、ふと旅情に浸ってしまいました。入口近くには掘りごたつ席も設けられ、こちらは6名まで利用できます。
黒板のオススメを含め、メニューはどれも美味しそうなものばかり。しかも不思議と「どれも絶対うまいヤツ」の予感がするから目移りして困ります(笑)。
ともあれまずは、定番の「台湾ソーセージ」(700円)からスタート。現地のスパイス“五香粉”を豚肉に加えた濵﨑さんのお手製で、熱帯の料理特有の甘みと、八角などの東洋的な香りが鼻腔をくすぐります。背脂を少量混ぜて生みだす、程よいしっとり感も僕好みでした。
牛ハチノス、砂肝、豚の耳を、日台両国の醤油で煮込んだ「滷味(ルーウェイ)」(850円)も実に印象的な珍味。それぞれ異なる食感と、甘辛く染みた醤油の風味がとにかく絶品で、モツ好きならマストの一品でしょう。「味の入り方が違うので」と素材は別々に煮込んでおり、そのため風味もかなり上品。炊き合わせを思わせる、和食出身の職人らしい丁寧な仕事ぶりです。
なぜか中華店に来ると毎回頼んでしまう「青野菜炒め」(850円)も当然追加。塩とニンニクで炒めたシンプルな料理ですが、リピーターの多さでは三指に入り、濵﨑さんも「僕の中ではこれが看板商品です」とニコリ。
春夏は空芯菜、秋冬はこのA菜を使っており、どちらも小郡のアジア野菜専門農家から仕入れているとか。日本では馴染みのないA菜ですが、台湾ではポピュラーな高栄養価の野菜で、独特の香りと苦味が面白いアクセントになっています。
ふとスパイシーなものが欲しくなり、目をつけたのが「ラー油ワンタン」(600円)。本場・台湾の調味料をベースにしたネギ醤油は手強い辛さですが、その中にも適度な甘みがあり、とてもバランスの良い一品でした。
屋台・大衆食堂のテイストを持つ「亜洲界世」ですが、「滷味」でも触れた濵﨑さんの“丁寧な仕事”がそんなバランスを生み、どの料理にもひとサジの品格が輝くようです。それがワイワイ楽しむも良し、大事な人との会食にも良し、という使い勝手の広さに繋がっているのでしょう。
このように舌を喜ばす料理ばかりなのに、どれもほとんど1,000円以下の良心価格。上機嫌になった勢いで、持ち帰り限定の「胡椒餅」(1個300円/冷凍)まで買ってしまいました。翌日レンジでチンすると、香ばしい皮に美味な具が詰まった“窯焼き肉まん”が登場。こ、これはうまい! ちょっとしたお土産にも良さそうですよ。
ジャンル:中華料理
住所:福岡市中央区港2-4-24 ILGraziaマリーナ1F
電話番号:092-732-5258
営業時間:17:30~OS22:00
定休日:不定
席数:カウンター5席、テーブル14席、掘りごたつ6席
個室:なし
メニュー:滷味850円、青野菜炒め850円、ラー油ワンタン600円、ピータン500円、牛肉麺980円、イカ団子フライ750円、魯肉飯600円、胡椒餅300円(持ち帰りのみ)
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