「住吉さん」の名前で親しまれている「筑前国一宮 住吉神社」の参道近く。昔ながらの風情が残る門前町で、地元の博多っ子御用達の寿司屋として長く愛されているのが「矢倉寿司」です。この場所で創業してから、およそ45年。大将の高橋昇さん、息子の昌宏さん親子二代が並んでつけ場に立つ姿は、いかにも「下町の寿司屋」らしい光景です。
大将の昇さんは東京の生まれで、江戸前の寿司を修行した後、新鮮な魚に惚れ込んで福岡に移住。そこで知り合った女将の麻利子さんさんと所帯を持って住吉に「矢倉寿司」を開業しました。
一方、息子の昌宏さんは博多の名店「高玉」で修業に入り、ホテルオークラ福岡店のオープニングスタッフに。途中、オランダ「ホテルオークラ・アムステルダム」の日本食店「山里」で勤務した経験を持つ国際派の寿司職人です。2012年から実家の店に戻り、修業先での経験を活かしながらも父親譲りの寿司を握っています。
カウンターに座り、まず注文したのは壁にもメニューが貼ってある名物の「舞茸どびん蒸し」(650円)。お猪口に注いだ出汁を一口啜ると、カツオと昆布の風味に具材の旨味がしっかり染み出しています。土瓶の蓋を開けると中には白舞茸、鶏肉、蒲鉾、銀杏、水菜、柚子皮など。ホッとするような味わいでお腹が温まり、食欲がわいてきます。
筆者のような酒呑みにとっては、魚をアテに一杯楽しむのも町寿司の大きな魅力です。写真の「穴子の酢の物」(900円)は、ふっくら炊いた穴子にキュウリとミョウガ、錦糸卵を合わせ、酢を効かせたさっぱりとした味付け。季節柄、燗につけた日本酒と合わせれば最高です。「ネタケースにある魚なら、できる限り何でも作りますよ」と若大将。そんな気安さも、町寿司ならではですね。
にぎり寿司は、中1,760円、上2,420円、特上3,300円の3種類。どれも8貫ずつですがネタがランクアップするということなので、ここはやっぱり特上にしました。登場したのは、中トロ、タイ、アカガイ、コハダ、ヤリイカ、車エビ、エビ、イクラのラインアップ。美野島商店街の「魚の折居」から仕入れるネタの新鮮さもさることながら、やや大ぶりに握られたシャリは食べ応えも十分です。
「この辺の常連さんは、年配の方でもしっかり食べられますから」と笑いながら握ってくれたのは若大将。中には「大将が握る寿司が食べたい」と指名する古くからのお客さんもいるそうで、二代にわたって愛されているのがうかがい知れます。
にぎりをひとしきり堪能した後は、江戸前に倣って「かんぴょう巻」で口直しといきました。細巻は2本660円からで、かっぱや鉄火、新香巻など10種類以上あり、1本からでも巻いてくれます。
さらに「ばってら」「さば松前」などの箱寿司や、具沢山の豪華な「江戸前ちらし」まで、多彩な寿司メニューが揃っています。ご近所や親戚などの集まりには、仕出しや出前に応えてくれるのも地元では心強い存在です。
馴染みの常連客をはじめ、初詣や七五三で住吉神社にお参りにくる家族連れ、さらに仕事で福岡を訪れる出張客まで。様々な客層から「この店があって良かった」と思わせてくれる、博多の町寿司です。
ジャンル:寿司
住所:福岡市博多区住吉3-5-8ケイジェイ博多住吉ビル1F
電話番号:092-262-1914
営業時間:11:30~14:00/17:00~22:00
定休日:水曜
席数:カウンター8席、座敷12席
個室:なし
メニュー:ランチにぎり1,050円~、中にぎり1,760円、上にぎり2,420円、特上にぎり3,300円、助六ずし770円、細巻(2本)660円~、ばってら660円、江戸前ちらし1,980円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40011021/
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