年間200万部減少“紙の新聞”が消滅するとどうなる?
日本新聞協会が毎年末に公表している新聞総発行部数。それによると2022年の1年196万部も減って、ついに3,000万部を割った。元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんはRKBラジオ『立川生志 金サイト』で、地元紙が廃刊になったアメリカの例を出しながら「新聞メディアが衰退する社会」に警鐘を鳴らした。
20年間で2000万部が消えた
新聞総発行部数、2000年代初めには5000万部近くありました。それがこの20年余りで2000万部、およそ4割が消えてしまいました。
特にここ5年間の減り方は急で、毎年およそ200万部ペース。つまり20年で消えた2000万部のうち半分がこの5年間に集中しています。あくまで計算上ですが、仮にこのペースで減り続ければ、2030年代には日本から紙の新聞は消えるほどの減少幅です。
かつては一家に1部は当たり前でしたが、その「世帯部数」が1を割り込んだのが2009年。去年は0.57部ですから、新聞を取っている家庭は2軒に1軒です。しかも高齢世帯が多く、新聞通信調査会のデータによると、60代以上では8割前後が定期購読しているのに対し、30代ではおよそ3割。別の調査では、紙の新聞を読んでいる人が20代では6.3%、10代ではわずか2.5%で、逆にインターネットの利用は10代で90.1%、20代では96%に達しています。
つまりネットの普及に伴って、紙の新聞は高齢者のメディアになり、若い世代の新聞離れを食い止められないまま、どんどん宅配読者を失っているということです。
加速したのは、スマホの普及が進んだ2010年代からで、高速通信によって画像が簡単に開けるようになり、ニュースはYahoo!などのニュースサイトやSNSから得る人が急増したためです。これは、電波が4G、5Gと高速化して動画がストレスなく見られるようになった今、テレビでも同様のことが起こり始めていて、若い人はYouTubeやさまざまな動画サイトでコンテンツを見るようになり、去年のサッカーワールドカップでは無料でネット中継したABEMAの視聴者数が1000万人を超えました。情報のプラットフォームはもはやインターネットなんだと、改めて思い知った出来事でした。
特にここ5年間の減り方は急で、毎年およそ200万部ペース。つまり20年で消えた2000万部のうち半分がこの5年間に集中しています。あくまで計算上ですが、仮にこのペースで減り続ければ、2030年代には日本から紙の新聞は消えるほどの減少幅です。
かつては一家に1部は当たり前でしたが、その「世帯部数」が1を割り込んだのが2009年。去年は0.57部ですから、新聞を取っている家庭は2軒に1軒です。しかも高齢世帯が多く、新聞通信調査会のデータによると、60代以上では8割前後が定期購読しているのに対し、30代ではおよそ3割。別の調査では、紙の新聞を読んでいる人が20代では6.3%、10代ではわずか2.5%で、逆にインターネットの利用は10代で90.1%、20代では96%に達しています。
つまりネットの普及に伴って、紙の新聞は高齢者のメディアになり、若い世代の新聞離れを食い止められないまま、どんどん宅配読者を失っているということです。
加速したのは、スマホの普及が進んだ2010年代からで、高速通信によって画像が簡単に開けるようになり、ニュースはYahoo!などのニュースサイトやSNSから得る人が急増したためです。これは、電波が4G、5Gと高速化して動画がストレスなく見られるようになった今、テレビでも同様のことが起こり始めていて、若い人はYouTubeやさまざまな動画サイトでコンテンツを見るようになり、去年のサッカーワールドカップでは無料でネット中継したABEMAの視聴者数が1000万人を超えました。情報のプラットフォームはもはやインターネットなんだと、改めて思い知った出来事でした。
「ネットのニュースはタダ」という誤解
ただ、放送局がティーバーやHulu、radikoなどに活路を見出すように、新聞社も独自のニュースサイトを充実させ、月額契約の有料配信を新たな収益源にしようとしています。私も「サンデー毎日」の編集長の後、毎日新聞のデジタルトランスフォーメーション本部という部署で、その充実と強化に携わりましたが、まだまだ紙の収益には遠く及びませんでした。
というのも、ネットのニュースはタダ(無料)だと思われる方が多いからです。今もよく、ネットでニュースを検索して「この記事は有料です」と出ると読まずに離れたり、中には怒ったりする方もいます。でも、情報は決してタダではないことをご理解いただきたいのです。
実際、ネット上で流れているニュースの多くは新聞などの報道機関が取材したもので、そのために、例えば全国紙は国内の県庁所在地や政令市など、さらに海外の主要都市にも支局や特派員などを配置し、年間数十億円規模の費用をかけて日々取材を続けています。ネット専業のニュースサイトでそういう体制を取っているところはまだありません。
記者教育もそうで、キャップクラスの記者を育てるには、10年以上の期間と、それまでに1人当たり1億円程度の費用がかかります。
今は、多くの新聞社が本業だけでその費用を賄えなくなり、不動産やさまざまな付帯事業で稼いで取材網を支えているのが現実です。
というのも、ネットのニュースはタダ(無料)だと思われる方が多いからです。今もよく、ネットでニュースを検索して「この記事は有料です」と出ると読まずに離れたり、中には怒ったりする方もいます。でも、情報は決してタダではないことをご理解いただきたいのです。
実際、ネット上で流れているニュースの多くは新聞などの報道機関が取材したもので、そのために、例えば全国紙は国内の県庁所在地や政令市など、さらに海外の主要都市にも支局や特派員などを配置し、年間数十億円規模の費用をかけて日々取材を続けています。ネット専業のニュースサイトでそういう体制を取っているところはまだありません。
記者教育もそうで、キャップクラスの記者を育てるには、10年以上の期間と、それまでに1人当たり1億円程度の費用がかかります。
今は、多くの新聞社が本業だけでその費用を賄えなくなり、不動産やさまざまな付帯事業で稼いで取材網を支えているのが現実です。
新聞がなくなったときに喜ぶのは誰か?
先ほど、このままのペースで部数が減り続ければ、2030年代に新聞は無くなると言いました。私はそうはならず、どこかで踏みとどまると考えていますが、もし仮にそんなことになったら、現場で取材して得られる一次情報は激減し、不確かな情報や、政府や役所が発表する情報が多くを占めるようになるでしょう。
そうなったときに喜ぶのは、情報をコントロールしたい権力者や、隠したいことがある人たちです。現にアメリカでは、地元紙が経営難で廃刊になった直後から市の幹部が給料を毎年吊り上げて、行政官は大統領の2倍、市議会議員に至っては相場の20倍以上の給与を得ていました。これを暴いたのはロサンゼルス・タイムズの記者でした。
この逆風の中で日本の新聞はまだ頑張っています。毎日新聞の後輩たちも、障碍者らが強制的に不妊手術を受けさせられた旧優生保護法の問題や、子どもたちが介護を担っている実態を伝えた「ヤングケアラー」の問題など、埋もれた声をすくい取る調査報道に取り組んでいます。
どうか皆さん、紙でもネットでも構いません。新聞を読んでください。
そうなったときに喜ぶのは、情報をコントロールしたい権力者や、隠したいことがある人たちです。現にアメリカでは、地元紙が経営難で廃刊になった直後から市の幹部が給料を毎年吊り上げて、行政官は大統領の2倍、市議会議員に至っては相場の20倍以上の給与を得ていました。これを暴いたのはロサンゼルス・タイムズの記者でした。
この逆風の中で日本の新聞はまだ頑張っています。毎日新聞の後輩たちも、障碍者らが強制的に不妊手術を受けさせられた旧優生保護法の問題や、子どもたちが介護を担っている実態を伝えた「ヤングケアラー」の問題など、埋もれた声をすくい取る調査報道に取り組んでいます。
どうか皆さん、紙でもネットでも構いません。新聞を読んでください。
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