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コの字カウンターで広東料理のコースをじっくりと

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西鉄平尾駅から徒歩8分。南区平和に新たな中華料理店がオープンしたという情報をキャッチしました。お店は、筑肥新道沿いにありイエローの扉が存在感を放つ「中華じげん」です。福岡の名店で長年腕を振るってきたオーナーシェフによるコース料理を楽しめる一軒とのこと。中華料理には目がない私。好奇心の赴くままにその扉を開いて、さっそくお邪魔してきました。

中華じげん_内観

店内はコの字ウンター10席のみ。モルタル調の風合いがシックな雰囲気を醸し出し、なんともカッコいい内装です。カウンターの内側には蓋が2つあり、そこを開けるとコンロと流しが登場。コースの最後に供される中国茶を淹れるために設計された特別仕様とのことです。

中華じげん_中国茶

オーナーシェフの本堀大介さんは、「ヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテル」やホテル日航福岡の「鴻臚」を経て、福岡の人気店「広東料理 SESSI0N」では料理長を務めた経験を持つ、この道のスペシャリスト。「これまで携わってきたお店よりも、できるだけお客さまと近い距離感で美味しい料理を食べていただき、料理のことや色々なお話が気軽にできる空間を意識しました。こうしたミニマムなカウンターだけのつくりにしましたのも、その思いからです。この『一体感』こそがこの店が目指すスタイルですから」と本堀さん。そのためにも、メニューはコース料理のみで勝負。しかも、完全予約制でその日予約を入れた最初の人の時間に合わせて、全席のコースがスタート(ランチは12時から一斉スタート)するというスタイルを採用することで「ここでしか得られない価値を共有したい」との思いがあるのだとか。

中華じげん_店主

まずは「整うランチコース」(4,000円)をいただきました。
国際薬膳師の資格を持つ本堀さんは、九州産を基本とする素材にこだわった広東料理で「心身ともにととのうように」とコースを組み立てているそうです。
そんなコースの最初にいただくのが「魂の上湯(しょんとん)を使った季節のスープ」です。広東料理の肝とも言えるスープは、蓋を開けた瞬間、なんたる馥郁たる香り。「久米島赤鶏と沖縄産キビまる豚と干し貝柱で出汁をとり、そこに昆布だしを混ぜ、金華ハムで少し塩味を加えています。このベースのスープに、時期によって色々な素材が加わります」と本堀さん。この日は、湯葉とアワビがスープに入り、スープを一口飲むだけで、素材本来の旨味が一気に広がります。体の隅々までうまさが染み渡っていくような感覚を覚えました。

中華じげん_スープ

その後は、「魂の上湯を使った揚げ物 タイシーウォーザー」、そして、店主オリジナルのノンアルコールドリンクと続きます。コースで料理の合間にノンアルコールドリンクをはさむというのも変わった趣向。煮出した大葉にライムの搾り汁を加えて炭酸で割ったものなどにより、フレンチのグラニテのように、口の中を一旦クールダウンしてもらうのが目的だそうです。
それらを経て、ようやく前菜5種の盛り合わせという流れです。まるでクラシック音楽のような、軽やかな流れから徐々に盛り上がっていく期待感に包まれるように心地よいリズムで味わっていきました。

中華じげん_アイキャッチ

5品目の「バラエティ豊富な季節の二重膳」では、雲仙あか牛の三角バラとうきは産レンコンを使った中国味噌煮込みをはじめ、白身魚のチューニャン(餅米の発酵調味料)の煮込み、自家製ザーサイ、対馬産原木シイタケのイノシシ肉詰、乾燥キクイモなど、その名の通り実に豊富な料理が籠にイン。コースの中盤にして、これだけ豊富な料理を楽しめるからには、昼から紹興酒を飲みながらじっくりと味わう、なんて楽しみ方もアリかもしれません。「実際に、ランチとお酒を楽しまれる方もいらっしゃいますよ。紹興酒はもちろん、ワインも豊富にそろえていますので、ぜひ自由に味わってくださいね」と本堀さん。次回はお酒と一緒にペアリングも楽しみたいと思います。

ランチをいただいた感動が忘れられず、後日、ディナーにも伺いました。ディナーもランチ同様、「『みだれる』ディナーコース」1種類のみ。こちらも最初にスープを味わうところから始まります。2品目の「前菜盛り合わせ」では、宝石のような9品が印象的でした。中でも特に印象的だったのが「うきは産トマトの杏露酒漬け」(写真左上)。

中華じげん_前菜盛り

トマトの甘みと杏露酒の甘みが融合し、それでいてさっぱりとした後味でした。一口食べて紹興酒を飲めば、さらに上品な甘さが引き立ちます。残りの8品もどれも味わい深く、次なる料理への期待は高まるばかりです。

じげん 鶏の丸焼き

そして、この日の肉料理は「沖縄久米島産赤鶏の丸焼き」です。塩やスパイスを擦り込んだ鶏を1日寝かせ、じっくりと焼いた後、8時間ほど乾かして完成するという、手間暇を惜しまず仕上げる一品なのだとか。それ故、パリパリの皮と噛むほどに旨味が滲み出てくる柔らかい身の味わいは絶妙。ずっと噛み続けていたいほど、この料理にしばし心を奪われてしまいました。

中華じげん_鶏

料理はもちろん、空間や器など、トータルで本堀さんが表現する世界観にどっぷり浸ることができました。中華の新たな『次元』に誘われた食体験でした。またぜひ“ととのい”に行きたいと思います!

《中華じげん》
福岡市南区平和2-1-1
092-600-4294

店舗名:中華じげん
ジャンル:中華料理
住所:福岡県福岡市南区平和2-1-1
電話番号:092-600-4294
営業時間:12:00~15:00/18:00~22:00※完全予約制(ランチは前日22:00まで、ディナーは前日16:00までに要予約/ランチは12:00から一斉スタート、ディナーは最初に予約を入れたゲストの時間に合わせて一斉スタート)
定休日:月・火曜
席数:カウンター10席
個室:なし
メニュー:ととのうランチコース4,000円、みだれるディナーコース9,000円
URL:https://www.instagram.com/chinese_jigen/

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この記事を書いたひと

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