地下鉄七隈線薬院大通駅より歩いて2分。城南線の一本裏手の細路地で営む「鮨 品川」。控えめに掲げられた看板と“鮨”と書かれた白い暖簾だけが目印で、たたずまいから非日常的な雰囲気を感じます。こちらは昼夜営業し、ともにおまかせコースのみを用意。昼は5,500円、夜は17,600円という価格設定です。今回はコスパが良いと評判の「夜」のおまかせコースを目当てにお邪魔してきました。
店に入ると店内はとてもシンプルな造り。白木の一枚板のカウンターや天然石の壁が重厚な雰囲気を醸し出しています。席はカウンターのみで、店主の品川かずひこさんが調理する姿を目の前に料理を堪能できます。
「夜」のおまかせコースはお通し、刺身2種、季節野菜の炊き合わせ、寿司12貫、椀物という構成。まずいただいたのはお通しです。この日は春の七草の一つでもあるセリを使った白和え。セリの爽やかな風味をしっかり感じられる素材の味わいを活かした優しい味付けで、口当たりもなめらか。丁寧な仕事ぶりが見て取れます。
2品目に白身魚と青魚のお造りをいただき、その次に供されたのは季節野菜の炊き合わせ。出汁の旨味が染みた菜の花とナス、ニンジンの彩りがきれいです。野菜の下に隠れているのは道明寺粉から作った桜餅。こちらの桜餅は甘鯛を一緒に蒸し上げており、桜の葉の香りと相まってとても上品な味わいです。桜餅のモッチリとした食感もクセになります。
ここからはいよいよコースの主役、寿司が供されます。品川さんは佐賀県嬉野市出身。「できるだけ地元産の食材を使いたい」と、シャリの米は合鴨農法・完全無農薬で栽培された嬉野市産、ワサビは「水源の森百選」の一つに数えられる多良岳の伏流水で育てた太良町産など、佐賀県の食材を多用します。器も唐津焼、有田焼、肥前吉田焼など佐賀の焼き物を使うのもこだわりの一つです。
この日まずいただいたのは鯛。数日間寝かせることで旨味が凝縮した鯛は、食感ももっちり。噛むほどに鯛の味わいが口の中に広がります。「鮨 品川」の寿司は基本的に煮切りを塗るのでそのまま味わいます。煮切りは極めて薄味に仕上げており、素材本来の味わいを見事に引き立てているのはさすが。ネタに添えられたもみじおろし、ネギ、ゴマ、さらに橙が爽やかに香り、こういった細かな部分にも職人の技術を感じます。品川さんは「素材を活かす“博多前寿司”のスタイルは大切にしていますが、少しの遊び心を加えるようにしています」と話します。
次は豊洲市場のマグロ専門仲卸「やま幸」から仕入れているというトロ。こちらはシンプルに薬味などは添えられていません。抜群の脂のりで、口に入れた瞬間にとろける食感が楽しめます。プリプリとした食感の車海老も素材の甘みがしっかり。茹で上げ具合が絶妙です。
ほどよく身が締まったコハダ、サバはともに塩と酢で〆て提供。とくにサバの〆方の具合は抜群で、切った断面を見てみると、身の芯はピンク色を帯び、刺身とシメサバの中間のように見えます。食べてみるとしっとりとした口当たりとほどよい酸味で、その美味しさに思わず笑みがこぼれてしまいました。
柳橋連合市場の馴染みの鮮魚店で仕入れを行っている品川さんは、「仕入れ値と食材の質のバランスも大切にしています」と話します。「ウニは唐津産なども有名ですが、産地にこだわりすぎると、どうしても仕入れ値が高くなり、それだとお料理代を上げなくてはいけなくなってしまいます。それで味わい、仕入れ値ともに安定している北海道産を使うことが多いです。私が大切にしているのはお客様の満足感。美味しいのはもちろんですが、お腹もしっかり満たしていただきたいんです」。
温かみにあふれ、真心を感じるメッセージ。「鮨 品川」の一番の魅力はこの品川さんの真摯な人柄だと強く感じました。福岡の老舗「やま中」などで20年にわたり腕を磨いてきた品川さんの技術、そしてその人柄が魅力の隠れた名店。肩肘張らずにこだわりの寿司や料理を楽しめること請け合いです。
ジャンル:寿司
住所:福岡市中央区薬院3-14-5
電話番号:092-523-7530
営業時間:12:00~14:00/18:00~21:00
定休日:日曜・祝日
席数:カウンター8席
個室:なし
メニュー:昼のおまかせコース5,500円、夜のおまかせコース17,600円
URL:https://fbn3500.gorp.jp/
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