料理と切っても切れない関係の器。お気に入りの器があるだけで、料理をすることや誰かをもてなすことがより一層楽しくなるものです。作家ものや民芸、アンティーク、世界各国の器まで、収納場所に困るほど器を集めてしまうライターの森脇美奈さんが、こだわりのセレクトが光るお店を紹介していきます。
今回紹介するのは、福岡市大手門にある「LIFE IN THE GOODS.」。ここ数年、気になる飲食店や雑貨店などが増えている大手門エリアですが、「LIFE IN THE GOODS.」やお隣の文具店「linde-cartonnage(リンデ カルトナージュ)」などができた頃から、少しずつその兆しが見えていたのではないでしょうか。そんな風に振り返っていたところ、「LIFE IN THE GOODS.」は今年9月にオープン10年を迎えると知り、驚きを隠せません。
これまでプライベートや仕事でたびたび足を運んできた「LIFE IN THE GOODS.」。窓の先に福岡城址の景色が広がるビル2階の店舗には、10年前と同じように穏やかな空気が流れ、店主・羽田裕行さんがいつもの笑顔で迎えてくれます。変わらないものがあるなかで、変化もありました。オープン当初は、さまざまな生活用品を扱っていましたが、現在は暮らしのなかでも「食」にフォーカスし、陶磁、木、ガラスの器の作家20名ほどの作品を扱うギャラリーとなっています。
「オープンして2年経った頃に作家の展覧会をしてみたところ、自分のやりたいことはこれだと気づきました。その後、作家の人となりを含めて作品の全体像を紹介できる展覧会を中心にしています」。すべての作家のもとへ直接会いに行き、交流を深めているという羽田さんらしいスタンスを感じます。「工房を見るのが好きなんです。道具がきっちりと整理されていたり、影響を受けたものが飾られていたり、白い器を作る人は真っ白のアトリエだったりすることも。バックグラウンドが見えることで自分のなかでの理解も深まります」。現在は月に1度は展覧会を行っているそうです。
食卓周りのものに絞った理由を尋ねると「器って誰かを家に招かない限りは人に見せないですよね。他者の眼差しに関係なくものを選び、どういう風に心地よく暮らしていくかということに重きを置く、そんな思いに寄り添う器を紹介していきたいと思いました」との答えが。以前は洋服が大好きだったという羽田さん自身、30歳以降になって外からどう見えるかではなく、内面を深めることに目が向くようになったそうです。
羽田さんが選ぶのは「素朴で簡素」なもの。「その器を使うことによって、平常心を保ち、自分に正直でいようと思えるものです。言わば“自分のそばにいてくれる味方”のようなものですね。特別な時ではなく、毎日つい手が伸びるものを選んでいます」。店内には、その言葉がしっくりとくる普段使いの器が並んでいます。
そのなかから、気になった作品をピックアップしました。4月2日(日)まで「LIFE IN THE GOODS.」で個展を開催中の埼玉県・飯高幸作さんの器。飯高さんはがオープン間もない頃から扱っている作家さんで、毎年個展を開催しているそう。今回は500点もの作品が紹介されています。卵の殻の質感を表現したというオーバル皿(4,950円)や、蓋つきのポット(4,620円)、お碗(2,970円)など、土のぬくもりと洗練されたフォルムが共存する佇まいに惹かれます。
兵庫県「ふじい製作所」のスープボウル(左・13,200円)、高台椀(11,000円)。「スープやお味噌汁など、毎日使うものだからこそ漆器を使ってみて欲しい。独特のとろみのある口当たりは漆ならではです」と羽田さん。シンプルな形状と現代の食卓に溶け込みそうな形は気負わずに使えそうですね。
大阪府「翁再生硝子工房」の「重なっちゃうコップ」(左・3,300円)、ボウル(4,620円)。お酒や調味料などのガラス瓶を再生させて作られるガラスの器は、独特のゆらぎや色味が魅力です。左のグラスは食堂などで使われるグラスをモチーフにするなど、着眼点もユニークですね。5月には「LIFE IN THE GOODS.」で個展を開催予定です。
お店を営む楽しさを聞いたところ「自分が選んだものに共感して使ってくれる人がいることがうれしい」と笑顔がこぼれた羽田さん。そのシンプルな言葉に、ものを選ぶまっすぐな気持ちを感じました。もうすぐ10周年、これからの「LIFE IN THE GOODS.」も楽しみです。
ジャンル:物販店
住所:福岡県福岡市中央区大手門1丁目8-11 サンフルノ2F
電話番号:092-791-1140
営業時間:12:00~18:00
定休日:金曜
URL:https://www.instagram.com/lifeinthegoods/
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう