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「“本来の意味”を果たさないオリンピックは中止を」玉木正之が主張

オリンピックの開催が目前に控える中、東京では再び感染者が1000人に迫る勢いだ。政府は4度目の緊急事態宣言を決断せざるを得ない状況に追い込まれた。7月8日(木)RKBラジオの朝の情報番組『櫻井浩二インサイト』に出演した、スポーツ文化評論家・玉木正之さんは、改めて五輪中止を主張した。
 
「やはり東京オリンピック・パラリンピックは中止すべきでしょう。かつて「1人の人間の命は地球よりも重い」と発言した首相がいました。1977年、ダッカでハイジャック事件が起こった時のことです。ハイジャック犯たちは、仲間の釈放を要求し、従わなければ数百人いる飛行機の乗客を殺害すると迫りました。これに対し、当時の福田赳夫首相は、犯人たちの要求を受け入れ、人質の命を救いました。この決断に批判もありましたが、私は素晴らしい判断だと思うのです」
 
「翻って、感染者がまた増えてきている中で、オリンピックをやるということは無責任ではないでしょうか。「緊急事態宣言下でも開催できる」と発言したIOC理事たちに聞きたい。オーストラリアやドイツ、あなたたちの自国だったら開催できますか、と。確かに、いま中止にするとIOCにも損害が出ます。主に放映権料で800億円ぐらいの問題です。でも考えてみてください。日本は「GoToキャンペーン」に2兆円ぐらいの予算を組んでいます。800億円のうち「日本が一部を負担しましょう」と言っても、日本人の命を守るためならば、私は安いものではないかと思います。オリンピックを開くことで感染者数が増えたり、デルタ株がまん延している状況を考えたりすると、ここで思い切った「英断」を下すべきです」
 
「アスリートがかわいそうだという意見もありますし、彼らは“スポーツの力”を与えることができるから今こそやりたいでしょう。しかし、それはオリンピックに限られた機会ではありません。世界選手権やワールドカップなど、ほかの国際大会を援助して『国の力でスポーツを発展させていくから、ここは我慢してくれ』という政府の姿勢があってもいいと思います。オリンピックだけがスポーツではない。これはアスリートだけでなく、お金儲けをしている人にも言えることです」
 
「IOCが提唱しているオリンピックの“本来の意味”は『世界平和』なんです。多くの人が集まって『世界平和っていいな』と体で感じて、初めて意義があります。無観客ではほとんど意味がないですよね。選手村でも、各国の選手が交流して初めて、オリンピックと呼べるんです。“本来の意味”がなくなっているオリンピック大会を、お金儲けのためや、金メダルの数を競うためにやるだけというのは、ほとんど意味がないと思います」

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