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偲び方がわからない|アナウンサーコラム

「コロナ死の数よむアナの無表情」

お前はどうかと問われた気がした。毎日新聞朝刊に毎日掲載されている、仲畑流万能川柳の一句だ。福岡県のコロナ死の累計は303人(4日現在)に上る。一人一人の顔があり、人生がある。それなのに現実は無常だ。病院で看取ることができなかったり、火葬に立ち会えなかったりするのだ。行き場のない遺族の心中は想像を絶する。

また、近親者でなくても、葬儀が以前のように執り行えない状況では、悼む思いは行き場を失う。私自身、葬儀に参列できない別れが、この1年間に何度もあった。そのつど、コロナ禍に故人をどう偲べばよいのか分からなくなるのだ。思い出を辿ってみる。写真を探してみる。それでも、ざわめく心を持て余したままだ。

この年齢になると参列してきた回数も増え、平静を保って儀式的に処すこともある。だが、祭壇の前に立った時、平静だと思っていた心に惜別の情がこみ上げることもある。胸の奥深くに確かにその人が存在していたことが不意に出現し、逝く人ともうこの世で会えない断絶を噛みしめるのだ。その時、別れの儀式の意味を知った。

世界中で、行き場のない哀悼の思いがあふれている。数ではなく、その何倍もの心の痛みを忘れたくない。

3月6日(土)毎日新聞掲載



Be colorful. rkb 70th 70年間、放送局をつづけてきて、やっと気づいた。カラー放送をしてるだけじゃ、この世界の色は伝わらない。もっと、豊かな視点で。もっと、やわらかい心で。あなたの、あの人の、あらたしい当たり前を感じる。そんな私たちになりたい。さぁ、カラー放送から、カラフル放送へ。

坂田 周大 RKBアナウンサー。長崎県長崎市出身。
担当番組:タダイマ! 志、情熱企業 など。

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