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極薄の磁器“卵殻手”を再び

その厚みわずか1ミリ!磁器にも関わらず、光を当てると絵が透けて見える。?長崎の伝統工芸、三川内焼の技法のひとつで“卵殻手”と呼ばれている。

三川内焼は江戸時代、平戸藩の御用窯として朝廷や将軍家への献上品を作り 栄えた。その藩の殿様から「箸より軽い茶碗を作れ」との命を受け、 誕生したと言われているのが“卵殻手”だ。三川内焼の中でも最高峰の技術を必要とし、 当時出島に出入りしていた外国人から人気が高く盛んに輸出された。

しかし三川内焼の技法は一子相伝・門外不出だったこともあり、 技術の伝承はいつしか途絶え作られなくなっていた。五光窯・藤本岳英さん(58)はその技法を丹念に調べ上げ、 4年がかりの試行錯誤の末よみがえらせた陶工だ。
ろくろで成形し乾燥させた生地を回転させ、光にかざしながら少しずつ削っていく。
2ミリを切るとまるで土星のような模様が浮かび上がる。薄手の磁器は焼く時に歪みやすいが、 藤本さんは江戸時代に使われていた土を見つけたことでその成功率をあげることができたという。

藤本さんが作った平成の“卵殻手”はこの夏NYへ渡った。驚きの薄さと軽さを持つ“卵殻手”の魅力と、 復活の秘話に迫る。
<取材先データ>
会社名:三川内焼 五光窯
担当者:藤本岳英(ふじもと・がくえい)さん
住所:長崎県佐世保市三川内町710
TEL :0956-30-8641
HP :http://www.gokougama.net/ その他 :卵殻手は湯飲みが2万円~、
コーヒーカップ&ソーサーが5万円~

番組内でご紹介した卵殻手のコーヒーカップがある
喫茶店「ひいらぎ」
福岡市中央区六本松3-16-33
tel:092-731-1938
店休日:月曜日(祝日の場合翌日)

取材後記

この企画を県外の方に説明する際、必ず最初に聞いていたことがあります。 「三川内焼という焼き物を知っていますか?」私の実家には唐子絵の小皿をはじめ白磁に青い絵付けの 三川内焼の食器がたくさんあり、子供のころから普段の食事に使うなど、なじみ深い焼き物でした。

そんな風に、地元長崎ではかなり名が知れた伝統工芸なのですが、 県外の方に尋ねると「知らない」という答えがほとんどで、驚きました。
しかも今回番組で取り上げたのは、10年ほど前に技法が復活したばかりの「卵殻手」。
ひとつひとつ手作りのため大量生産はできず、そのため値段も高価―。 江戸・明治期には人気があったとしても、現代ではよほどの通でない限りその存在を知りません。 それをいかに伝えるか―。

15分の番組の中で、卵殻手ができた背景となる三川内焼そのものの歴史、 技術の継承の難しさ、良質のものを作ること商売との間でもがく窯元のジレンマなど、 描ききれなかった部分もたくさんあります。
藤本岳英さんをはじめ三川内の窯元の方々は実直に、 誇りを持って、先人たちが紡いできた三川内焼の伝統を守ろうとしています。

そしてその良さをたくさんの人に知ってもらうため、不器用ながら国内外に向けてアピールを始めています。 みなさんも様々な場所で「三川内焼」という名がつく器を見つけたら、ぜひ手に取ってみてください。 きっとその品の良さ、技術の高さが伝わるはず。
地元・三川内で開催される春の「はまぜん祭り」と秋の「みかわち陶器市」もお勧めです。
担当:NBC長崎放送 城代 奈美

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