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「日本全体を“バックアップ”したい」巨大地震リスクの首都圏から本社機能を北九州市に誘致へ

北九州市が2023年度予算案に盛り込んだ「バックアップ首都構想」。巨大地震などの災害時に事業を継続しようとする企業の本社機能などを、北九州市に誘致しようとするものです。


◆北九州市に「日本をしっかりと支えていく使命」
北九州市 武内和久市長「北九州市の果たすべき役割、なすべきことはやはり、日本全体の“バックアップシティ“としての機能をしっかりと持っていく」

2023年度の予算案に「バックアップ首都構想」の調査費を盛り込んだ、北九州市の武内和久市長。官僚時代に首都機能の移転に携わった経験もあり、自然災害が比較的少なく、巨大地震などで首都圏や大阪・名古屋と同時に被災しない北九州市に、企業の本社機能などを誘致することを目指しています。

北九州市 武内和久市長「北九州市が、災害に対峙する日本をしっかりと支えていく、そういう使命を北九州市が持っている」


◆北九州市は「非常に災害に強い」
名古屋や大阪をはじめ、関東から九州の太平洋側にかけて、広く被災する南海トラフ巨大地震。さらに、首都直下地震の発生も迫っています。こうした災害に備え、2008年北九州市にデータセンターを開設し、全国有数の規模にまで拡張してきたのが、ソフトバンクグループのIDCフロンティアです。

IDCフロンティア データセンターサービス本部 菅野晋輔さん「歴史的に見た際にも、官営八幡製鉄所が昔置かれていた、国が選んだ場所である。お客様にも提案させていただき、『非常に災害に強いエリアである』ことを理由に選んでいただくケースがとても多いです」


◆福岡市は「都市機能がコンパクトに充実」
首都圏などと電力会社も別で、災害に強い場所として選ばれた北九州市。強力なライバルとなるのが、同じ地理的なメリットがある福岡市です。いち早く「本社機能」の誘致を掲げ、企業誘致は9年連続で50社以上。2021年度は7社が本社機能を移しました。

福岡市企業誘致課 楠本賢司係長「福岡市の大きな強みは、人口が増えている状況、若者が多いという状況も含めて、都市機能がコンパクトに充実している点も大きな魅力ではないかなと考えています」


◆「東京の本社業務は、すべて福岡で可能」
東日本大震災をきっかけに、9年前に福岡本社を立ち上げた生命保険会社です。

ニッセイ・ウェルス生命 井本満社長「業務自体は、全部門が福岡からもやれる」

約150人規模まで拡大した福岡本社は、東京本社と同じ業務ができる体制を取っていて、福岡市の強みを実感しています。

ニッセイ・ウェルス生命 井本満社長「アクセスが非常にいいこと、住みやすいこと、若手への採用がしやすいこと。それから地方自治体、福岡市とか福岡県からのサポートが他の地域よりも非常に強かったことがあったかと思います」


◆北九州市の強みは「低コスト」
人口増加が続き、若者層の割合も高い福岡市。以前は大企業の移転が可能な物件が不足していましたが、天神ビッグバンなどの再開発で物件が充実していくことで、さらなる誘致を目指しています。その福岡市に対し、北九州市の武内市長は、「差別化」と「連携」の両面でやっていきたいと強調しました。

北九州市 武内和久市長「福岡市に欠けているピースもあるんじゃないかと思いますし、お互いに補完し合って、共同で戦っていく」

北九州市が強みの一つとして掲げているのが、「低コストで進出が可能」という点です。土地代や賃料が東京のみならず福岡市よりも安いことをアピールしています。2018年から北九州市にオフィスを構えているIT企業、GMOインターネットグループが進出を決めた理由の一つも、オフィスの賃料でした。

GMOインターネットグループ インフラ・運用本部 牧田哲本部長「近隣の大都市からのアクセスもいい大都市で、オフィス賃料も極めて安かったので、立ち上げました」


◆「暮らしやすい環境」移転で生まれる雇用
Uターンを希望した人などを積極的に雇用しています。

従業員「実家が山口なので、近場でUターンしてきました」「家賃もほど良くてすごく暮らしやすい環境の中で、あまり喧騒に疲れない」

巨大地震の発生が現実味を帯びるなか、災害時の事業継続を目指す企業の受け皿になっていけるのか? 武内市長は、データセンターなどから企業の本社機能、そして政府機関と、段階を踏んで誘致を進めていく方針です。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。