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「ばれると笑われる」「うそを重ねて生きていた」福岡市に住む男性カップルの“まさひろ”さんと“こうすけ”さんは心をすり減らしてきた。しかし、偏見や差別に満ちた時代は少しずつ変わり、社会は性的指向の多様性を受け入れ始めている。「そういうのもあるんじゃないのって見方が増えてきている(本人)」。2人は披露宴を開き関係を対外的に公表。周囲からもパートナーと認識されることで「気を張らず生活していけるようになった」という。その一方で“変わっていない”のは国の制度だ。国内で同性カップルが法的に家族になることは許されず、ローンの共同名義や各種税制などの男女のカップルであれば得られる経済的なメリットも享受できない。2人は訴える「家族の形は国が決めるものじゃない」と。全国で5件が進行中の国に同性婚を求める訴訟は、「合憲」「違憲」「違憲状態」と各裁判所の判断がわかれている。福岡地裁は8日、地裁レベルでは最後の判決を言い渡す―。
法的には“他人”、年末調整では家族「なし」
こうすけさんとまさひろさんの2人は「同性婚」が認められない事による制約をこう語る。
まさひろさん・こうすけさん「住宅を購入する時のローン。今も共同の名義にすることもできてないですし」「収入を合算してローンを組むこともできませんでしたので、自分の選べるものが狭まる」「年末調整の時もパートナーがおりますけども、そこにはいないと提出しなければなりません。こうして2人で生活をしていますけど、社会上の立場が他人ということであるので職場でも“いない”と申請しなければならない、それは心が痛む」
友人の紹介で知り合った2人は2017年に交際を始め同居。おととしには「事実婚」の披露宴をあげた。披露宴では満面の笑みを浮かべたが、それぞれが苦難の道のりを歩んできた。
まさひろさん・こうすけさん「オカマ、ホモとかってネタにされていた。笑っていい存在だって社会全体でそういう雰囲気を出していた時代でこのことは墓場まで持っていくと感じていた」「嘲笑の対象だった。ばれると自分も笑われる対象、仲間はずれにもなるし、家族にも受け入れられなかったら、自分の居場所、家庭もなくなってしまうって思っていたので、うまくうそを重ねて生きていたなと思います」
周囲や大切な親にも「うそ」しんどい→提訴し「顔出し会見」
小学校低学年の頃から恋愛の対象が男性であると気がついたという2人。そのことを家族や周囲に隠し続ける生活は次第に2人の心をすり減らしてきた。
まさひろさん・こうすけさん「自分の親にうそをつく、大事な大切な好きな親にうそをつき続けるのがしんどくなってきて」
同性同士の結婚が認められないのは婚姻の自由や法の下の平等を保障する憲法に違反するとして2人が国を相手に訴えたのは、2019年7月。公開の法廷や会見で顔を出すことにもためらいがあった。
こうすけさん「本当に怖かったです。記者会見に臨んだ日の夜、あしたからどんな対応、反応されるんだろうって寝られなくて。会見みたよって、応援しているからと温かい声をいただいてよかったです」「怖い部分もあったんですけど、こうすけと一緒にいるんだったら大抵のことは乗り切れるかな」
「そういうのもあるんじゃないという見方」感じる社会の変化
記者会見を経て「気を張らず生活していけるようになった」という2人。個人の性的指向に対する社会の受け止め方の変化を肌で感じている。
まさひろさん・こうすけさん「ぼくたちはカップルですと関わっていくようになって、みんな周りの人たちは僕たちのことをパトーナー同士、カップルだ、夫婦だと認識してくれているので、今はすごく気を張らなくていい。自然体で、ありのままの状態で生きていけてる」「小さい時だったらおそろいのを着ていたらヒソヒソみたいな。ちょっとあの2人何って思われることもあったと思いますが、最近は世間の目も嘲笑的な見方とか、あざける見方というよりは、そういうのもあるんじゃないのって見方が増えてきていると思います」
「家族の形」は国が決める?福岡地裁の判断に注目
全国5つの地裁で提訴された「同性婚訴訟」では、すでに札幌地裁、名古屋地裁が「違憲」東京地裁が「違憲状態」大阪地裁が「合憲」の判決を出し判断が分かれている。国側が「同性同士の結婚は憲法で想定されていない」などと主張する中、5件の「同性婚訴訟」で最後となる福岡地裁がどのような判決を言い渡すのか。まさひろさんとこうすけさんは8日の判決を前に訴える。
まさひろさん、こうすけさん「国が同性同士の婚姻は不適法で認められませんよって、国の法律が私たちのことを差別している」「福岡地裁でも違憲判決を出してもらって、政治が早く法制度を整備するよう動くように背中を押してほしい。家族の形は国が決めるものじゃない。一人一人が尊重されるような社会になってほしい」
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