博多を駆け抜ける“太陽の女神” 山笠の歴史で初めて 女性人形師が「舁き山笠」制作
782年の歴史があるとされる博多祇園山笠で、初めて女性の人形師が「舁(か)き山笠」を手がけました。制作したのは、太陽の女神・アマテラスです。
目次
60年以上のキャリア 総理大臣賞も5回
博多人形師の川崎幸子さん。自宅兼作業場の近くにある川沿いで花の手入れをするのが日課です。
川崎幸子さん「修学旅行の時にはお小遣いを残して、すぐお花を買いに行ったりした思い出があります。この時が一番楽しい時かな」
人形師として60年以上のキャリアを持つ川崎さん。内閣総理大臣賞を5回受賞するなど、人形製作の腕前を高く評価されています。こちらの作品は万葉集を題材に作られました。美しい手の形は日常生活からヒントを得たと言います。
川崎幸子さん「満員電車の中で座っている女性の手が、ものすごく美しかったんですね、スマホを操作している指が。あんな手を作れたらいいな、と」
姉は「アマテラス」、弟が「スサノオ」を担当
川崎さんは今回、六番山笠・千代流から舁き山笠の制作を依頼されました。これまでに弟の修一さんの制作を手伝ったことはありましたが、本格的に女性の人形師が起用されるのは782年の歴史の中で初めてとなります。
川崎幸子さん「弟に山笠の話が来ているかと思ったら、私にもしないかと。びっくりしました。大変です、やっぱり責任があるし」
今回は川崎さんが「表」、弟の修一さんが「見送り」を担当します。表の標題は、太陽の女神である「アマテラス」を表現した「日輪幸慶博多照(にちりんこうけい はかたをてらす)」。見送りは、その弟とされる「スサノオ」をモチーフにした「俊豪誓約清明証(しゅんごううけい せいめいのあかし)」です。
スマホの写真を見せる川崎幸子さん「最初は、眉毛をこう描いていたんですけど、弱いから……こういう眉毛とお化粧に濃くしていって。アイシャドウをどう入れたら目立つか、青を入れたり黄色を入れたり。テレビに出ている人を見て『こんなつけ方もある』と思って、さっと作業場に戻ってまた足したり付けたり」
依頼した千代流「すごい!」と絶句
千代流の関係者に人形を引き渡す日がやってきました。衣装の着付けなどは修一さんの手を借りながら、何とか間に合いました。
川崎幸子さん「さっきまで作業していました。疲れたというより、大変でした。こんなに大変とは思わなかった」
「おお…」「すごい!」
美しい女神の人形に歓声が上がります。川崎さんの表情も緩みます。
姉弟で作った「古代神話の姉弟」
迎えた人形の飾り付けの日。時折、激しい雨が降る中での作業となりました。
川崎幸子さん「音がしている、と思ったら雨が降っていた」
Q.難しい?
川崎幸子さん「ですね、でもちゃんとみな慣れているから心強い」
そして、ついにアマテラスが山笠の台に上がりました。
涙を拭う川崎幸子さん「いや、ほっとしました。うれしいです。感動です」
弟の修一さんと二人三脚で、見事な舁き山を作り上げました。
川崎修一さん「姉弟だからできる。他人だったらやれないと思います、おそらく。女性のこだわりは入っていると思います。細かいところまで、女性ならでは、というところがあったと思います」
「時代とともに、山笠も変化していかないと」
千代流総務 川口俊二さん「山笠も、時代とともに変化していかないといけない、悪しきはやめて、いいものをどんどん取り入れて。姉弟愛を通じて、世界でいろいろ紛争があっていますけど、1日でも早く平和であってほしいという願いを込めて」
大役を終えた川崎さん。ほっと一息つきたいところですが、すでに次の仕事で頭がいっぱいのようです。
川崎幸子さん「ホッとしてますけど、切り替えですね、普段の生活にどうやって戻るか。(人形を)約束している期限もあるから」
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