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「何ら落ち度のない者に悪意を向けた」厳しく糾弾した裁判長
そして冒頭の一幕だ。傍聴席にいる人をよく見ていたのは被害者が来ているかもしれないということだったのだろう。判決の日も相変わらず無表情だった。
裁判長「自分も振り袖を着飾りたいとの思いがあったが実現せず、振り袖を着用している女性を見て悔しさの気持ちから犯行に及んだというが、何ら落ち度のない者に悪意を向けた、筋違いで身勝手な犯行。被害弁償はなされておらず、晴れの日に衣装を台無しにされた女性らが被った精神的苦痛も軽視できない」
心も体も女性になりたいけれど、今の自分はそうではない。その悔しさがあったからといって、成人式に参加している若い女性の衣装を台無しにしていいわけがない。裁判長は平井被告のこれまでの「嫉妬」や「悔しさ」などの言い分を文字通り一蹴した。言い渡されたのは、懲役1年2か月の実刑判決だった(求刑は懲役2年)。
被害者は一生に一度の機会を奪われた。それは着物の損害額を弁済されたからといって到底、穴埋めできるものではない。結局、ジェンダーの問題とはまったく別の次元で糾弾されるべき犯行であることは明らかだ。一方で、平井被告が“振り袖”に10年以上もコンプレックスを抱き続け、今に至るまで解消できなかったのも事実だ。その心の中の葛藤もまた社会は無視することはできない。
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