倒産企業4割増加 コロナ融資の返済が大きな負担に 今後さらに増えるおそれも
新型コロナウイルスの分類が5類に移行して行動制限もなくなり、街の賑わいも戻ってきました。一方で、コロナ禍の間に借りたいわゆる「コロナ融資」の返済が本格化していて、飲食店など中小企業にとっては重荷になっています。
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コロナ禍で約200人が退会したスイミングスクール
6月、福岡信用金庫の担当者が福岡市早良区のスイミングスクールを訪れました。
こちらのスイミングスクールは、コロナ禍で200人近くの会員が退会し年間の売り上げは最大でおよそ3000万円減りました。老朽化した施設の建て替えも控えるなかで経営を支えたのが、いわゆる「コロナ融資」でした。
サワラスイミングスクール山住耕太社長「売り上げは単月でずっと赤字が続いていてというところで、手元の資金は取り崩しながらやっていました。金融機関のバックアップが不可欠で非常に助かりました」
「助けられた」コロナ融資が今は負担に
「コロナ融資」の制度は資金繰りに苦しむ中小企業や個人事業主を支援するため、2020年に設けられました。売り上げが減少するなどの条件を満たせば金融機関から融資を受けられ、3年間は利子に相当する金額を国や都道府県が補填します。制度のスタートから3年が経ったいま、多くの企業が返済時期を迎えていて、こちらのスクールでも3000万円の融資を受け、月に30万円を返済しています。しかし、売り上げがコロナ前には戻っていないなか、返済は大きな負担となっています。
サワラスイミングスクール山住耕太社長「現状いまのところふんばっているというのが正直なところです。この先コロナがどういうふうに流行していくのか、5類になってどのような影響を及ぼすのかまったく見えないので、安堵するにはまだ早いのかなというところはあります」
返済できず倒産する企業が増加
民間の信用調査会社は業績が回復しない企業の中で返済の原資を確保できず、事業の継続を諦めるケースが増えてきていると分析しています。
東京商工リサーチ福岡支社情報部 高岩悟郎リーダー「世間一般的にはコロナが収束してある程度、経済が回復軌道に乗ったというイメージがありますが、企業側としてはまだまだコロナの後遺症を引きずっていて、そういう企業で倒産がどんどん出てきている状況です」
福岡県内で今年5月に倒産した企業はあわせて30件で前の年の同じ時期に比べると4割近く増加しました。このうちおよそ7割がコロナの影響で減少した売り上げが回復していないことが理由でした。今後、コロナ融資の返済がさらなる負担となり、倒産する企業が増えるおそれがあります。
東京商工リサーチ福岡支社情報部 高岩悟郎リーダー「コロナ融資の返済以外でも、原材料の高騰や人手不足が足かせになって複合的な要因で倒産に至るケースがいま増えています。コロナ禍以降で3年ぶりに倒産件数が増勢傾向に入ったという状況ですので、これからまだ増えるのではないかとみています」
売り上げが戻らないケーキ店
40年以上の歴史を持つ福岡市のケーキ店では、コロナ禍で結婚式の中止が相次ぎウエディングケーキなどの売り上げが激減。年間5000万円ほどあったブライダル関係の売り上げはほぼゼロになり、今もコロナ前には戻っていません。
藤井英信 社長「昔は夜11時半ごろまで営業していましたが、今は午後8時、9時からもうお客さんが入りません」
コロナ融資で運転資金をやりくりしましたが、今年5月から始まった返済が経営の重荷となりました。「このままでは経営が立ち行かなくなる」そんな思いからコロナ禍で人気が高まったアイスケーキの販売強化に乗り出しました。
経済のしくみ変わった だから挑戦する
藤井英信 社長「経済の仕組みがちょっと変わってしまったので、以前の仕組みの延長では多分やっていけないと思います」
その拠点として来月、新たな店舗兼工場を福岡市にオープン。アイスケーキの種類をいまの3倍近くまで増やし、オンラインでも積極的に販売していく方針です。
藤井英信 社長「『今さらこの年でなんでそこまでお金をかけてやるんだ』と散々言われますが絶対に軌道にのせます」
事業を継続するために、必要だったコロナ融資。その返済を迫られる中で、生き残りをかけた企業の模索が続いています。
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この記事を書いたひと
野島裕輝
1990年生まれ 北海道出身。NHK仙台放送局などで約7年間記者として事件・事故や行政、東日本大震災などの取材を担当。その後、家族の事情で福岡に移住し、福岡県庁に転職。今年2月からRKBに入社。