久留米の大雨から1か月 被災地・田主丸の状況を専門家が分析
2023年7月9日から10日にかけて、九州北部を襲った大雨。福岡県内では久留米市を中心に大きな被害を受けました。その豪雨災害から約1か月が過ぎた8月13日深夜、RKBラジオ『日曜 mo R。~明るいラ族計画~』では、「ローカる!特別編」として、特に被害が大きかった久留米市にあるドリームスエフエムの内藤圭祐さん、久留米市に隣接している八女市で災害情報を発信し続けたFM八女の高木祥平さんとともに、「防災とラジオ」について考えました。
コミュニティFM13局と「災害情報パートナーシップ」
(左上:FM八女の高木祥平さん、右上:RKBラジオの荒木風花、下半分:ドリームスFMの内藤圭祐さん)
RKBラジオと九州北部・山口のコミュニティFM13局は「災害情報パートナーシップ」を2016年から結んでいます。このパートナーシップは、地震や豪雨、台風などの災害時に、RKBが行政やライフライン企業からの情報を整理し、ニュース原稿としてコミュニティFM局に提供する一方、被災地エリアのコミュニティFM局から、現地の状況をRKBの番組でリポートすることで、お互いのリスナーにできるだけたくさんの情報を発信するという目的があります。
また、毎週日曜午前11時から放送している、RKBラジオ『ローカる!』では各局とコラボして、それぞれの放送エリアの街の魅力を伝えるなど、日ごろからの連携も続けています。
防災の専門家に土砂災害の原因を聞く
(塚原健一さん)
今回の7月豪雨で甚大な被害を受けた田主丸地区で調査・分析をしている九州大学工学研究院 附属アジア防災研究センター教授の塚原健一さんに話を聞きました。
(塚原さん)
耳納山の雨の観測所で、24時間雨量は約400ミリです。気象庁によると、今まで降った雨で最大、いわゆる史上最大の雨とされています。今回は耳納山の砂防渓流の水があふれてその土砂によって人が亡くなってしまいました。今までの、平地で巨瀬川が氾濫して水害に遭うというのとは違うかと思います。ただ、地形的に見ると被害があった竹野地区は「土砂災害警戒区域」に指定されており、土砂災害が起こりうる渓流は耳納山のふもとにたくさんあります。100年、200年の単位でいうと、定期的に土砂災害がおこっていて、いわゆる山裾の扇状地です。全国的に扇状地には果樹園があるため、水はけがよく、土も畑作に適しています。つまり、果樹が盛んなところは土石流や土砂の堆積によって扇状地ができているので、定期的に土砂災害が起こっています。
(耳納山の様子)
山裾から平地に広がってくる地形の場所は、大雨が降れば土石流はいつ発生してもおかしくありません。福岡市内だと油山のふもと、篠栗町の若杉山、太宰府市の宝満山ですね。北九州市もそのような場所はとても多く、平成30年の西日本豪雨の際は門司区で亡くなった方もいらっしゃいます。八幡西区、東区は以前、北九州工業団地として栄えていた時代に山裾を開発して建てられた団地がものすごく多く、土砂災害の危険があります。ただ福岡に限らず、今回のような過去起きたことがないような雨が降れば、日本全国の山裾で土砂災害が起こりやすくなっています。
お住いの地域のハザードマップを見ていただくと、山裾は土砂災害警戒区域に指定されていることが分かります。今回、過去最大の雨がたまたま竹野地区のさわに強く降った、もしくは竹野地区のさわが他よりも弱かったため、土砂災害が起こったと考えられます。すぐ隣の澤でも小規模な氾濫は起きており、多くの家が被害に遭っていました。
一つのキーワードとして覚えていてほしいのは「過去最大の雨」です。最近は気候沸騰と言われており、これからも雨の量が増えていくと考えます。ということは、土砂災害警戒区域に指定されている場所ではいつ土砂災害が起こってもおかしくないという認識を持っていただきたいです。命を守るために、気象警報がでていたら明るいうちに避難すること、家の中にある大事なものは高い場所に移動しておくことを心掛けてください。
雨が降った時に「逃げるか」の判断なのですが、土石流は起こる数十分前から山の予兆があります。山からビリビリと音が鳴る、土の匂いがします。これは山の上の方で、土砂が崩れて、土に水がしみ込んでいるということです。そうすると地下水が上がってきて、「なんか臭いがする」という前兆現象につながります。もうその段階で逃げるのははっきり言って遅く、危ない状況です。避難所に着く前に土石流に巻き込まれて命を落とす可能性があると思って下さい。家の中で二階に避難することも大事ですが、家ごと流されてしまうことを覚悟した方がいいかと思います。なので、そうならないうちに避難することが重要です。
ただ、土砂災害警戒区域に指定されていない地域でも、このような土砂災害は起こりうる可能性が多いにありますので、早めの避難を考えてください。
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