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宮崎県都城市の『自治体経営』を支える「ふるさと納税」が日本一になった秘訣とは?

自治体の経営が厳しい状況にある中、ふるさと納税制度を「政策推進のきっかけ」として ユニークな自治体経営を続ける宮崎県都城市。その取り組みを、同市の池田宜永市長の考えに触れながら探った。


池田宜永 都城市長

ふるさと納税は戦略的なPRツール

2022年度、都城市のふるさと納税寄附受入額は約196億円となり、日本一(※1)となった。2014年10月の大幅リニューアル後、9年連続でトップ10入り、直近8年で4度の日本一の寄附受入額となっており、全国自治体の注目度は特に高い。


2008年にふるさと納税制度が始まってから5年間の寄附金額は、年間500万円ほどだった。しかし2012年に池田宜永市長が就任すると一変。ふるさと納税を市の知名度向上につなげるためのPRツールとして活用する方針を明確にし、2014年に事業の大幅リニューアルを図った。


池田市長は、その理由を「当選間もない頃に東京で挨拶回りをしていた時、霞ヶ関のある役所の受付で、『ミヤギ県トジョウ市』と言われたのが本当に悔しかった」と打ち明ける。


※1 2023年8月1日総務省発表

成功の鍵は「都城=肉と焼酎」に特化しファンを増やしたこと

リニューアルでは、返礼品を「肉と焼酎」に特化した。 

公平性が求められる行政において、特定の特産品のみを取り扱う大胆な決断は異例であったが、ここに戦略的PRの狙いがあった。


都城市は、肉用牛・豚・鶏の合計畜産産出額が日本一(※2)を誇る畜産のまちであり、焼酎売上高日本一(※3)の酒造メーカー・霧島酒造がある。自治体内にある二つの日本一に目を付けた。


「返礼品を日本一の肉と焼酎に特化することで、都城がどんな町であるかを発信することに注力しました」


その結果、寄附額は右肩上がりに伸びていき、2015年度は42億円、2016年度は73億円で、2年連続日本一となった。2016年度以降は、寄附者ニーズに対応し、他の地場産品も返礼品メニューに加え、9年連続寄附額トップ10以内にランクインしている。


次に、寄附者に都城のファンになってもらう体制づくりに尽力した。

例えば現在、返礼品の提供事業者全151社が参加する「都城市ふるさと納税振興協議会」とともに、ふるさと納税の推進に資するPR事業やCS向上事業に取り組んでいる。また、市主催の全事業者向け研修会を定期的に開催し、返礼品やサービスに対する寄附者のニーズやレビュー評価、クレーム事例などを共有。その情報を基に、事業者は製品改良や開発に力を入れ、返礼品全体の品質が向上。この好循環がリピーターの増加やファン獲得につながった。


「寄附者は都城という町に関心を寄せてくれた人ですから、質が良い返礼品を体験してもらうことが大切です。そのために市も産業の高度化を支援する。地場の事業者が全国で戦える知識や仕組みを獲得できてこそ、ふるさと納税制度の趣旨に応えられたと胸を張れます」


2018年度末には、市が公式オンラインショップを開設した。規模の小さい事業者でもeコマースなどのデジタル化の流れに乗れるようにするためだ。


※2 2023年3月17日農林水産省発表

※3 2023年8月30日発表 帝国データバンク調査結果

子育て「3つの完全無料化」を実現

同市にふるさと納税をする際、寄附者は8つの目的に応じた使い道を指定。市はいったん基金に積み立て、翌年度事業の財源として活用する。2023年度より、同市は人口減少対策として子育てに関する「3つの完全無料化」(第1子からの保育料・中学生以下の医療費・妊産婦の検診費用の完全無料化)や大胆な移住支援(移住応援給付金の創設など)をスタートした。


「寄附金は財源として本当にありがたい。喫緊の課題である人口減少対策をはじめ、しかるべき分野への投資が可能となります。特に子育てでは、第1子からの保育料・中学生以下の医療費・妊産婦の検診費用の完全無料化を実現することができました」


      都城市中心部にある「まちなか広場」は子育て世代でにぎわう

政策推進が見えれば職員の意識が変わる

ふるさと納税に携わった職員を中心に、市役所職員たちの意識にも変化が表れた。


「役所は『数字』が出るような仕事は少ないが、ふるさと納税は結果が数字に表れます。 目に見えて数字が増えると職員にもやりがいが生まれます」


楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーで4年連続ふるさと納税大賞を

受賞した池田市長とふるさと納税担当職員たち


池田市長によると、ふるさと納税は『一石四鳥』の効果がある、すなわち、①対外的PR、②地域経済の活性化、③市の収入増、④職員の意識改革に効果があるという。重要なのは、ふるさと納税への取り組みによる成功体験を踏まえて、市役所職員の意識改革が進み、政策推進の重要さを意識するようになったことである。


象徴的なエピソードが、都城のマイナンバーカード保有率の高さだ。2023年8月末時点の保有率は 88%で、全国トップクラスの保有率の高さを誇る。

「面倒な申請作業の多くを、役所で内製化することで市民の負担を減らし、また役所に申請に来てもらうのではなく、職員が出向いてサポートしています」

タブレット端末で職員が市民の顔写真を撮影後、申請が簡単に終わる仕組みを発案し、企業や各種イベント会場に出張申請受付所を設置するようにした。

「自治体のデジタル化は必至ですが、市民を置き去りにしないための、高齢者などに配慮した工夫や取り組みと、関係部門が自然に連携していく仕組みが大事だと考えています」


現在(2023年9月)まで、ふるさと納税の寄附総件数は506万件にも上る。それは都城を知る人が全国に増えたことの証左である。日本一の肉と焼酎を味わい、その魅力を体感できる「ミートツーリズム」の参加者が、6年間で2017年の53人から2022年の37,800人と700倍超に増え、例えば、「住み続けたい街ランキング」(大東建託㈱)での県内1位や、移住関連雑誌「田舎暮らしの本」(㈱宝島社)の「住みたい田舎ベストランキング」での総合部門県内1位にもつながった。

都城市は、ふるさと納税に関する取り組みを端緒として好循環を生み出した、『自治体経営をベースとした地方創生』の好事例である。




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この記事を書いたひと

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