この春、娘が小学校を卒業した。卒業証書を受け取る皆の堂々とした姿に月日の流れを感じ、胸が熱くなった。6年前、真新しい大きなランドセルを背負って登校し始めたころは、まるでカタツムリのようだったのに。いつの間にか大きな背中になった。式には、子どもたちが安全に登校できるよう、雨の日も風の日も、通学路で見守ってくださる地域の方々も参加された。時折ハンカチで涙を抑えながら、優しい眼差しで卒業生を見送ってくださった皆さん。改めて、地域全体に守られて小学校生活が送れたことに感謝した。
式の後、担任から最後の言葉が贈られた。―人の「好き」を否定しない人になってほしい―。人には夢や趣味、自分が「好き」だと思うものがある。それは絶対に他人から傷つけられたくない、一番大切にしているものだろう。だからこそ人の「好き」を尊重し、簡単に否定してはいけない。この言葉を、子どもたちは先生の目をまっすぐ見つめて聞いていた。私の胸にも響いた。子どもたちは、これから多くの人と出会い、多くの価値観に触れるだろう。どんな時でも、自分を、周囲を大切に、他人の「好き」をはじめ、あらゆる考えを尊重しながら、自分の道を歩んでほしい。
娘よ、母はいつも見守っているよ。卒業おめでとう。そしてかけがえのない日々をありがとう。
3月29日(土)毎日新聞掲載
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