「もう半分以上がやめた」生産者がいなくなる日 繰り返す災害、ボランティアは住宅優先で畑は手つかず
7月の記録的大雨から2か月。住宅の復旧が進む一方で田畑や果樹園など農地は、いまだ手つかずの現状があります。このままでは、日本の食卓を支えてきた「生産者がいなくなる」 被災地の農家の訴えは、果たして杞憂でしょうか。
キュウリ畑 「もう復旧できない」
福岡県を代表する特産品・八女茶の一大産地として知られる八女市上陽町。今年7月の記録的大雨はこの町にも大きな被害をもたらしました。
40年以上お茶やキュウリを栽培している農家の中村善徳さん(61)は、大雨はまさに収穫のピークを迎えようとする矢先のことだったと肩を落とします。
農家 中村善徳さん(61)
「10日間ちぎって、『今から』という時に災害に遭ったので、一番がっくりしているところです」
収穫の最盛期だったキュウリ畑は、7月10日に発生した土砂崩れによって壊滅的な被害を受けました。建設機械を入れることが難しいため、畑を埋め尽くす土砂や流木は2か月経った今も手つかずのままで、復旧のめどは立っていません。
農家 中村善徳さん(61)
「ここはもう修復のしようがない畑になっています。多分、そばにあるこの小屋を壊して、重機でも入れない限り復旧できないと思います」
特産品の茶畑も
被害はキュウリだけではありません。八女茶の畑にも大量の土砂が流れ込んだのです。お茶の木自体への被害は少なかったものの、土砂によって1か月ほど、木の手入れができなくなりました。木の手入れに必要な農機を入れるためのスペースだけは何とか手作業で確保しました。しかし本格的な復旧は難しい現状があります。なぜでしょうか。
農道も復旧せず重機が入れられない
ひとつは、地域のあちこちで崩れた農道の修復が追いついていないためです。本格復旧に不可欠な建設機械は、いまだ畑に入れることができていません。
復旧費用の捻出
農作物だけで約1000万円の被害を受けた中村さん。崩れた畑の復旧にかかる費用は国から受けられる補助の上限を超えているため、復旧費用の捻出にも頭を悩ませています。
茶畑の横の崩れた斜面の修復には、市の試算で500~600万かかると言われました。
農家 中村善徳さん(61)
「こういう場所が何か所もあるんで、費用の面で、復旧はしたいけど、やると費用がかかる。なかなか踏ん切りがつかないんです」
ボランティアは「家屋の復旧」が優先
頼りになるボランティアも、まず家屋の復旧を優先して派遣されるため、農地にはまだほとんど入っていません。復旧が進まない理由はここにもあります。
繰り返す災害で農家が廃業
上陽町は2012年と2021年8月の大雨でも被災しました。中村さんは、今回の大雨はそれ以上の被害をもたらしたと振り返ります。 危惧しているのは、繰り返す災害で地元の農家が廃業し、生産者がいなくなることです。
農家 中村善徳さん(61)
「100年に1回とかいいますけど、5年に1回くらいきてるんですよね。そう何回も災害を受けてはやってられない状況の地区もあります。ここから上にも農地があるんですけども、もう半分以上が後継者不足と災害等でやめました。しっかり道路とか水道とかを管理していくことが、いま自分たちにできることじゃないでしょうか」
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この記事を書いたひと
町田有平
2010年RKB入社。報道記者、情報番組ディレクター、ラジオプロデューサーなどを担当。2女の父で趣味はキャンプと筋トレ。