“教育虐待”で「父に恨み」「仕返しを支えに生きていた」元九大生の長男(19)に懲役24年の判決、両親を殺害したとして起訴(求刑は懲役28年)
実家に帰省した際に両親をナイフで殺害したとして起訴された元九大生の長男(19)に佐賀地裁は15日、「無抵抗の被害者を強い殺意の上刺して2人の命が失われるという取り返しのつかない結果が生じた」などとして懲役24年の判決を言い渡した。裁判員裁判として9月1日から約2週間にわたり審理が続いていた。長男側は“成績”をめぐる叱責や暴力などの虐待により「恨みがあった」として父親を殺害したことを認めていた。一方で「母親は殺すつもりはなかった」などと主張し、起訴内容に争いがあった。検察側は「2人の命が奪われた結果は極めて深刻」として懲役28年を求刑。弁護側は少年院に送るなどの保護処分を求めていた。
背景に教育虐待の“報復”、起訴内容に争いも
起訴状によると、九州大学工学部に通っていた長男(19)は今年3月9日、佐賀県鳥栖市にある実家で、両親をナイフで刺して殺害したとされる。これまでの審理で、長男は幼少期から学業などに対する説教や暴力を受けた“報復”として、父親を殺害したことを認めた。母親については、仲裁に入ったのを「排除するため刺した」などと述べ、殺意を否定した。このため、裁判の主な争点は▽母親への殺意の有無、▽刑罰を科すべきかだった。
争点の“母親への殺意”7か所刺され、4か所が致命傷
検察側は、母親が7か所も刺され、うち4か所が致命傷だったことなどから「殺意が認められる」と主張。その上で「2人の命が奪われた結果は極めて深刻。反社会性と反倫理性は著しく、保護処分を社会的に認めることはできない」として、懲役28年を求刑した。弁護側は父親から受けてきた“虐待”が事件の原因だと訴えた。そして、遺族が処罰を望んでいないことなどを踏まえ、少年院送致などの保護処分か刑罰であっても懲役5年が相当と主張していた。
判決で、佐賀地裁は検察側の主張を取り入れた上で「母親への殺意」があったと認定した。
(要旨)
・高い殺傷能力のナイフで人体の枢要部を複数回、手加減することなく短時間で刺している
・相当に強い力で突き刺したといえる
・死亡する危険性が高い行為だとわかっていなかったとは考えにくい
・父親を確実に殺すためには邪魔をする母親はどうなってもいいと考えていたとしか思われない
「いつか仕返し、高校生になってから殺してやると考えた」「それでも後悔」
2週間にわたる審理の中で、長男は「父親にいつか仕返ししてやると思うようになり、高校生になって殺してやると考えました」「仕返しをすることをずっと支えに生きてきて、それを放棄すれば、これまで生きてきた意味がなくなるので、放棄はできませんでした」と父親の殺害につながった経緯を説明した。法廷では「殺害してしまったことは、ほかの道を見つけられなかったのですが、それでも後悔しています」「どうすることが償いになるのかわかりませんが、必死に考えることで償いの一部になると考え、どうにか償いの道を考えていきます」と後悔と償いの気持ちを述べる一幕もあった。
15日午後3時から開かれた判決公判で佐賀地裁は量刑の理由を次のように説明して懲役24年の判決を言い渡した。
(要旨)
・特定少年である被告人を少年院に収容した場合、収容期間は最長で3年となるところ、更生を図るためには十分ではないと考えられる
・虐待の影響や家庭内の事件であることを考慮しても、保護処分を許容できる特段の事情があるとも認めがたい
・ほぼ無抵抗の被害者らに一方的に攻撃を加えたもので、計画性も認められる
・犯行結果は極めて重大
・幼少期から父親から心理的、身体的な虐待を受けるなどしたことが、殺害の決意に大きく影響
・父親の虐待がなければ被告人が本件犯行に及ぶことはなかったといえる
・自分で叱責を受ける機会をつくるなど、犯行を誘発した側面があることは否めない
・父親を殺害することに集中するあまり、母親を巻き添えにしてまった
・母親が制止しようとする事態は当然、予測できたはず
・動機や経緯は身勝手で自己中心的と言わざるを得ない
岡崎忠之裁判長は判決の宣告後に「この期間はあなたにとって決して短い期間とは言えないかもしれません。罪の重さに改めて向き合い、深く考える期間にしてください。裁判であなたは残りの人生は消化試合みたいなものと言いました。しかし、妹や親族、そして父や母も望まれていないはずです。いつか目標を持って生きてもらいたい」と説諭した。
“教育虐待”で「父に恨み」両親を殺害したとして起訴された元九大生
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