塩分濃度2倍の「濃縮海水」 水不足に悩まされた都市にしかない副産物で「発電」 日本初
長年水不足に悩まされてきた福岡市には海水を淡水に変える施設があります。海水から真水を作る時に生じる「濃縮海水」をこれまで長年捨ててきました。これを捨てずに活用して発電する日本で初めての試みが始まることになりました。
塩分濃度の差で「浸透圧発電」
福岡市 高島宗一郎市長
「これまで捨てていた排水というものを資源にしてここでエネルギーを生み出すことができる」
福岡都市圏に水を供給する福岡地区水道企業団が6日発表した「浸透圧発電」。日本で初めて、世界でも2例目です。
福岡地区水道企業団 中村貴久企業長
「塩分濃度の差を使って発電します」
「浸透圧発電」は、淡水化センターで真水を取り出す際に生じる「濃縮海水」と下水処理水の塩分濃度の差を利用します。浸透膜を水だけが海水側に通過し圧力の高い水が増え水車がよく回って発電するというものです。
渇水に苦しんだ福岡につくられた淡水化施設
大きな水源がなく度々渇水に苦しんできた福岡都市圏。2005年から海水から真水を取り出す海水淡水化センター「まみずピア」を稼働させています。
福岡地区水道企業団 小野皓一郎 運転管理係長
「海水に強い圧力をかけることによって海水から淡水を取り出すという仕組みです」
海水に圧力をかけ特殊な膜を活用して平均で毎日2万トンの真水を供給する際、生じるのが「濃縮海水」です。
塩分濃度約8%の「濃縮海水」
RKB今林隆史記者
「この蛇口から出ているのが濃縮海水です。濃縮というだけあって舐めてみるとかなり普通の海水より塩辛いです」
塩分濃度が通常の海水の倍にあたる約8%ある「濃縮海水」。これまで下水処理水で薄めて海に放流されてきました。
福岡地区水道企業団 中村貴久企業長
「単に混ぜ合わせてポイじゃなくて、浸透圧発電に使えたら、まさに今まで使っていない未利用資源、これが活用できるんじゃないか」
発電施設は2025年稼働予定
発電施設は水処理のプラントメーカー・協和機電工業が7億円をかけて建設。水道企業団が用地と濃縮海水を提供し2025年4月の稼働を予定しています。
年間の発電量は一般家庭300戸分=約88万キロワットアワーで、サッカーコート2面分の太陽光パネルの発電量に相当。天気に左右されない安定した電源になります。
海水から発電する夢の技術 確立へ
さらに、濃縮海水で得られた経験をもとに将来的には通常の海水で発電する技術の確立を目指します。
福岡市 高島宗一郎市長
「エネルギーの変換効率が高まってくれば、本当にいまの脱炭素、もしくはエネルギーへのチャレンジという中で、大きく育っていくことを見据えた上でのチャレンジだ」
実現すれば無尽蔵にある海水から発電できるようになる「夢の技術」です。水資源に乏しい福岡だからこそコストをかけて運用されている海水淡水化センター。その経験を生かし、世界を変える技術に飛躍させることができるのか注目されます。
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この記事を書いたひと
今林隆史
1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。