ジャーナリストが自治体の“情報”に接近しようとしたら、どういうわけか総務大臣の秘書とされる人物から電話がかかってきた―。公共工事をめぐるこんな不気味な“事件”が物議を醸している。誰が情報公開を請求したかが第三者に渡れば、市民は畏縮し、請求しにくくなるおそれがある。にも関わらず、全国で請求者名が議員などに漏れる事例が相次いでいる。件の“事件”は、かつて炭鉱で栄えた福岡県中央部の「田川地区」で起きた。地元の町長は、情報漏えいを強く否定。当時総務大臣だった武田良太氏は「一切関与しておりません」と話す。確かなことは一つだけある。町役場か請求者、いずれかが漏らさなければ“知り得ない”情報を第三者が掴んでいたということだ。
情報公開の翌日に“電話”「ビビりますよ。全部出さないといけないんですか?」
渦中にいるのは福岡県大任町の永原町長だ。先月25日、「情報公開条例を改正し透明化を図っていきたいのか?」と記者から問われると「なんでそんな愚問を言うんですか」と憮然とした。大任町は先月、情報公開請求できる条件を「1年以上住む住民」としていた制限を撤廃した。全国的に見ても異例だった制限を始めたのは2年前の9月のことだった。実はその3か月前に情報公開請求の内容が外部に漏えいした疑いのある事態が起きていた―。
武田良太氏の秘書とされる人物「うちの選挙区の大任町とかに情報開示請求しています?田川も大任も大体もううちの応援をしていただいる関係もあるんで」
これは、2021年6月に地元福岡11区の武田良太衆議院議員の秘書とされる男性の電話番号からニュースサイト「ハンター」の記者にかかってきた電話の内容だ。この記者が大任町と田川市に情報公開請求をした翌日にかかってきたものだという。当時、武田良太氏は地方自治を担当する総務省の大臣を務めていた。
武田良太氏の秘書とされる人物「それはビビリますよ。こんな情報開示請求きたら。(Q別に大臣が気にしているわけじゃないんでしょ?)気にしていますよ。道の駅はいわゆるその業者選定がわかる文書および本件工事の施工体系図、この辺は全部しっかりとその内容、情報を請求する情報の内容を全部ピンポイントで出さないといけないんですか」
秘書とされる人物は、町長選挙の収支報告書など請求した本人と請求先の大任町の関係者しか知らないはずの具体的な内容を把握していた。
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この記事を書いたひと
今林隆史
1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。