子供の健康を守る理想は10月下旬~11月上旬だけど…運動会・体育祭の時期を動かせない“事情”
練習中に熱中症の症状で子供が倒れ、病院に運ばれた―。こんな事例が後を絶たない運動会や体育祭。いつ実施すべきなのか議論がつきません。専門家は10月下旬から11月上旬を提案するものの、年間を通じて多数の教育イベントを抱えている学校側は難しい対応を迫られています。
9月下旬になっても30度を超える日が続いた
福岡市南区の筑紫丘小学校では11日、今月21日に開催される運動会本番に向けて、練習が行われていました。
女の子「最初の1時間は涼しいけれど、だんだん暑くなってくるから水分補給をしています」
学校は“暑さ指数”を確認しながら、「厳重警戒」に達した時は、練習を取りやめて教室で過ごすことにしています。厳重警戒は暑さ指数28~31の範囲で、「運動に関する指針」においては「熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。暑さに弱い人は運動を軽減または中止」することが推奨されています。
この学校が屋外の練習を始めたのは本番約1か月前の9月下旬のことでした。
男の子「9月はめっちゃ暑くて、とにかく早く教室に帰りたかったです」
今年の9月は平均気温が観測史上最も高く、下旬になっても30度を超える日が続きました。滋賀県では、運動会の練習に参加していた小学校の児童30人が熱中症で病院に運ばれています。あまりの暑さに筑紫丘小学校では屋外での練習を見合わせたり、時間を短縮したりしました。
11月開催の小学校は6%の「少数派」
大嶋体育主任は、練習の時期を来年は10月からに遅らせることを検討しています。運動会や体育祭に最も適した時期はいつなのか、専門家は10月下旬から11月上旬を提案しています。
九州大学応用力学研究所・竹村俊彦教授「基本的に春はお勧めしない。5月中下旬から梅雨前までに運動会を設定している学校が多いと思うんですけども、明らかに気温が高くなってしまっていて、今年のように真夏日が増えてくる。運動会の練習と当日を総合的にみても10月下旬から11月上旬ぐらいがちょうど良いのではないか」
理想は秋も深まる10月下旬から11月上旬。しかし、福岡市教育委員会によると今年は小学校145校のうち83校(57%)が5月・6月に、53校(37%)が9月~10月に運動会を開催、11月開催は6%にとどまりました。
10月~11月は日程の奪い合い、組み替えが難しい“事情”
中秋貴雄学校長「このまま暑い日が続くということになれば、時期を遅らせることを各校検討していくと思います。地域の行事やPTAの行事は外せません。地域、保護者に少しずつ話をしながらご了解をいただく。子供たちの体力の負担を考慮して計画しています」
学校がスケジュール調整をする起点となるのが「卒業アルバム」です。12月に始まるため、「思い出」を掲載するには1~3月に大きな行事は向きません。
▽4月はクラス替えの直後で新しい友人に慣れることが優先。
▽5月上旬から中旬は大型連休と重なるため難しい。
▽5月下旬から9月は真夏日も多く屋外での活動には適していません。
つまり、屋外での催事に適しているのは実質10月と11月だけなのです。
ゆえに、修学旅行や自然学習、地域の祭り、PTAのバザーなどの多くの催しがこの短い期間に集中し、日程の奪い合いが起きます。取材した筑紫丘小学校は、学習発表会を6月に移すことで、来年は運動会を11月に実施することにしました。一方でどうしても移せない行事のある学校もあります。子供たちの安全は妥協できないため、難しい調整が続いています。
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この記事を書いたひと
土橋奏太
2000年生まれ 長崎県出身